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神々の宿る島・壱岐「響きあう魂たち」(1)
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2012年9月10日 07:00

 時として、「まるで奇跡だ」と思うような事実に出会うことがある。現実が、人が守りたがる固定観念を超えたところで生じることもあるというのなら、実現不可能だと評されることにも望みを託す価値はある。ただ、奇跡への道は分け入り難く、1人で成すのは難しい。その歩み難き道程に目を向け寄り添えあえる人々の心のなかに、"人間力"とは芽吹くものなのかもしれない。

iki.jpg 長崎県の壱岐島は、玄界灘に浮かぶのどかな島だ。南北約17km、東西約15kmで上空から見ると丸く見える。とくに標高の高い山はなく、最高峰、岳ノ辻でも213mだ。しかし、そこからは島の多くを見渡すことができる。広々とした田園風景や畑、海女や海士が素潜り漁に精を出す東と西の入り江、そして肉眼では見えないが、緑に覆われた丘のそこかしこには、古代の息吹を伝える神社や古墳がある。
 「壱岐には172の神社があります。小さな島にこれだけの神社があるところは、ほかにはそうないのではないでしょうか」と地元住民は言う。
 そう、壱岐は、豊かな穀物と海産物、そして古代を今に伝える遺跡の宝庫だ。長崎県下で2番目に広い深江田原平野では、米や麦が豊かに採れる。その麦や米麹、そして井戸水を原料にして造られる麦焼酎は、名産品の1つだ。漁業においては県下一の水揚げ高を誇る。島の玄関口の1つである勝本港には、近海、そして遠洋へと漁に繰り出す船舶が穏やかな海面に泊まっている。

 もともとは、火山島だ。稜線には、玄武岩からなる黒白のコントラストが美しい地層が連なる。島全体が壱岐対馬国定公園として指定されているというのもうなずける。海岸線を離れて内地をめぐれば、日本創世記以来の遺跡が、ごく自然に現れる。古事記には、日本創世の際に生まれた大八島国の1つ"アメノヒトツハシラ"として登場し、魏志倭人伝には、一支國として交易の跡が記されている。壱岐とはそんな島だ。

iki_2.jpg そこでふと気がつく。ここには、ほかの有名な観光地と違い、為政者が残した豪奢な建立物がない。神話の世界だからこそ、海の、丘の、平野の、ありのままの姿が際立つのだろう。そこに生きる人々は、ごく自然に海や大地の恵みとともに暮らしている。
 しかし壱岐は、日本という国土を背負って、外からの干渉に耐えてきた場所でもある。ときには戦場として、波乱万丈の歴史を刻み続けた島だ。離島ゆえの厳しい生活を強いられることもある。そのたびに、島民は、自分たちの美しいふるさとを守ろうと、寄り添いあいながら乗り越えてきた。

 壱岐の観光名所、猿岩の近くには、東洋一の規模と言われながらも、実際に使われることがなかった大砲の跡地がある。坂を上ると"不発の砲弾"の砲台があった場所が大きな穴となって大地をえぐっていたが、その火山口にも似た穴を覗いてみると、奥底から、まるで住民たちの心を示すかのように、瑞々しい若葉を称えた樹木が立ち上がっているのが見えた。

(つづく)
【黒岩 理恵子】

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<COMPANY INFORMATION>
■(株)平山旅館
所在地:長崎県壱岐市勝本町立石西触77番地
TEL:0920-43-0016
URL:http://www.iki.co.jp/


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