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経済小説

「維新銀行 第二部 払暁」~第1章 谷野頭取交代劇への序曲(3)
経済小説
2012年9月24日 07:00

<二頭体制崩壊の背景(3)>
bn_1.jpg 栗野和男会長、谷野銀次郎頭取の二頭体制が2002年6月スタートした。当初はお互いに情報交換の場を持ち何でも相談する体制を取っていたが、それぞれの業務に専念するようになると、直接会って情報交換する機会は次第に少なくなっていった。
 維新銀行の新頭取となった谷野は就任当初は知名度が低かったが、全国紙や地元紙或いはNHKや地元民放などとの対談やインタビューを通じて、谷野新頭取の経営方針が報道されるにともなって、維新銀行の顔として谷野が大きくクローズアップされるようになっていった。

 維新銀行の内部においても当初二頭体制に戸惑いが見られたが、時が経過するにつれて営業現場を指揮監督するのは谷野頭取であることが行員に浸透し、行員も次第に谷野の方に顔を向けるようになっていった。
 一方栗野は谷野と同じ代表取締役であったが、栗野は頭取を経ずに会長となったため、長い間頭取を経験し会長になった絹田や植木とは違って、その権力基盤は脆弱であった。
 谷野頭取が行内外で知名度を増し実権を掌握するにつれて、会長の栗野は次第に孤立感を深めるようになっていった。

 谷本はバブル崩壊後に頭取になったが、頭取在任中に抜本的な不良債権処理に手をつけなかったばかりか、退任を機に不良債権を処理して後継者に引き継ぐということもしなかった。
 谷野は頭取に就任したわずか3カ月後に9月の中間決算を迎えることになった。不良債権処理が維新銀行にとって喫緊の課題であった。谷本が頭取であった前期02年3月期の決算での最終利益は20億円をわずかに超える金額であった。資本金100億円の維新銀行は年8%の配当を続けており、単純に計算しても繰越利益は12億円にしか出ない状況であった。貸倒引当金や20億円の最終利益を確保するための原資を捻出するために、保有する株式売却益で決算を取り繕っていた。

 新頭取となった谷野は、9月の中間決算で不良債権処理のため大幅な貸倒引当金を積み赤字決算とすることを決断した。谷野が赤字決算に踏み切った大きな理由は、九州の有力地銀である福岡銀行が1年前の2001年3月決算で、思い切った不良債権処理を実施し、02年3月期決算で業績を急回復させたことであった。
 バブル崩壊から10年を経過し、金融機関は、東京三菱銀行などの都市銀行を始め、横浜銀行や千葉銀行などの有力地銀も、不良債権処理により急激に業績を回復させ、攻めの経営戦略に転換する時期を迎えていた。

(つづく)
【北山 譲】

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※この作品はフィクションであり、登場する企業、団体、人物設定等については特定したものでありません。


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