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製造業メーカーの心得(前)~VTCグループ・是松孝典社長
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2012年10月17日 11:15

 モノづくりの復活が、今後の日本再生のカギを握る――。"製造業の連合体"ともいえるVTCマニュファクチャリングホールディングスを率いる是松孝典社長の胸の内にある、"製造業メーカーの心得"とは何か。是松社長は、こだわりすぎて失敗したシャープなどのメーカーの体質について言及する。「技術の追求も大事だが、消費者目線を持つことを忘れてはいけない。グローバル戦略では、職人の育つ国として東南アジア、とくにタイを推奨。その後の動向を見守るべき国として、シェールガスの開発で成功しているアメリカの復活がある」と語った。

<モノづくりを支える>
sora_6.jpg ファイナンス、財務関連のキャリア、知識を活用し、是松孝典社長は、企業再生のコンサルティングから国内製造業企業を買収することでVTCグループを連結で1,200億円を超えるグループに築き上げてきた。企業再生の先駆けとして創業したベンチャー・テクノ・キャピタルが、明興双葉に出資したのをきっかけに製造業の次なる高みを見据えて、製造業メーカーが縦横にうまく連携するVTCマニュファクチャリングホールディングスを結成。電気導体製造からモーター製造販売まで、日本のモノづくりを幅広く支えている。

 是松社長は「作る技術は、やはり日本に持っておかなければならない。日本にできることは"人材の教育"でしょう」と話す。
 積極的に海外への進出を図るVTCグループだが、技術を育て、人材を鍛える基軸は、日本に持っている。

<日本のモノづくり復活はあるのか?>
 20世紀には、技術立国で成功し、世界随一の技術力を誇った日本のモノづくり。しかし、今は、韓国、中国、台湾などに押され気味。グローバル化のなかで、国際競争が激化。円高、東日本大震災の影響もあり、ソニー、パナソニック、シャープなどが11年以降、停滞。かつて日本を引っ張った大企業が沈んでいる。

 「メイドインジャパン」を世界一流にまで押し上げた企業だからこその問題点があった。ソニー、パナソニック、シャープなどの日本企業は、これまで技術レベルを革新させることに成功してきた。しかし、サムソン電子など韓国、台湾企業の追い上げが激しく、技術だけで売れる時代は終わった。しかし、日本の企業は技術至上主義的のままで、消費者目線が欠如していた。そのことが経営を徐々に苦しくした。

 海外では、日本の技術力のある高品質できれいな画面を求める消費者はまだ少なく、安さを求める消費者のほうが多い。技術の高さ、技術者の求めるハードルの高さゆえに、逆に消費者の存在を忘れてしまうことになってしまった。現時点でのアジアでは、技術にこだわりすぎたことが逆に敗因となってしまった。「東芝やシャープは今のところ負けでしょうが、大いに反省している。合併、分社化する動きが出てくるのではないか」と、是松社長は、事業のシンプル化、人材、コスト面での無駄の削減が進めば、復活はあると分析する。

 韓国では、サムソン電子、LGエレクトロニクスなど韓国企業が躍進。日本企業もかつてはそうであったかもしれないが、研究開発に力を注いで来なかった分、早く成長することができたが、この後の10年ではどうなるか。

 「韓国企業は、日本や欧米のメーカーの開発したものをコピーして伸びた。3年ぐらい経てば、ボロが出るのではないかと思っている。韓国の金融はぜい弱な面があるので、ウォンが下がると、中国が出てきて、韓国の企業を買うということが起こり得る。中国や韓国からは、先端の技術は生まれてこないように思っている」と、長期的な視点では、サムソン電子などのさらなる伸びを疑問視。ここ半世紀で研究開発の蓄積をしてきた日本企業の出番があると見ている。

<徹底した現地化戦略>
 時代の変化に合わせ、グローバル化を図ってきたVTCグループ。現地では、モノづくりの技術とともに、人材育成に力を注いできた。中国、東南アジアを中心に生産の拠点を海外に展開。グループ全体の約70%の生産を海外で手がけている。

 中国にも重きを置いてきたが、9月には反日デモの嵐が吹き荒れ、中国に存在したカントリーリスクが顕在化した。史上最大規模で起こった今回の反日デモでは、VTCグループの工場に被害はほとんどなかった。デモは起こったが、1時間程度で沈静化。「現地化がかなり進んでいて、スタッフの多くは、中国人を使っている。現地の人を鍛え上げることを心がけ、さらに、そのなかの有能な社員には日本人と同等の給料を出してモチベーションを高めている。工場長にでもなって、日本人並みの給料なら、現地では裕福な暮らしができるのでやる気を出してくれる」と、現地人を採用し、教育を徹底することで、チャイナリスクに対応した。

 しかし、中国で製造業に欠かせない職人を育てることには壁を感じている。「中国で製造業の職人を育てようと思ったら難しい。2年経つと、ベテランのような顔をする。アジア、東南アジアで職人が育つ国というのは限られている。タイ、台湾、インドネシア、マレーシア、それぐらいか。製造業は、職人がいないと難しい」と、職人の育つ国として東南アジアの国を挙げた。長く技術を育てるために、まず人材育成に力点を置いている。

<カントリーリスクへの対応>
 今回の中国での大規模な反日デモを見て、是松社長は、次に打つ手を冷静に分析。「今回の反日デモは、短期的には日本の負けだっただろう。ただ、長期的に見たら、中国の負け。なぜなら、チャイナリスクが世界中に喧伝されたから」と語る。
 反日デモにより青島のジャスコなどが暴徒化した民衆により破壊されただけでなく、日本製品のボイコット運動も広がり、日本企業の中国での企業活動は停滞。中国政府は、日本からの輸入品に対する税関での検査を強化し、日本の出版物を販売させないようにするなど、短期的には日本側の被害が大きい。

 しかし、今回の暴動を見るにつけ、世界は中国をどう見たか――。中国への進出を考え直したり、撤退を決めた日本の企業も少なくない。「中国は、民衆の横への空気の伝播が速い国だと思った。共産党が天井から乗っかっていて上から抑えつけるので、横への広がりが速かった。中国では、まだモノの価値が低いのでしょう。人の価値が低いからモノを壊したりする」と分析。日本企業だけでなく、欧米など海外の企業も中国への投資、進出を考え直し、リスクのある国だと再認識した。長期的視点に立つと、中国にとって、大きなマイナスだった。

(つづく)
【岩下 昌弘】

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