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製造業メーカーの心得(後)~VTCグループ・是松孝典社長
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2012年10月18日 07:00

<政治的なチャイナリスク>
 中国には、反日という日本企業にとってのリスクだけでなく、共産党一党支配という政治的リスクもつきまとう。
 是松社長は、「中国共産党の利権防衛のために、最終的には力で解決しようとさえしてくる。憲法のような共産党がある」と、中国でビジネスを展開するにあたっての政治的な難しさも口にする。経済的な法制度の未整備、省や地方によって、ころころと変わる政策や法律の不統一性などがリスクとして存在する。さらには、是松社長の言うような共産党に有利になるような法律の不透明さも中国が抱えるクリアすべき課題だろう。

 「日本が、中国とうまく付き合おうと考えるなら、経済合理性だけではだめ。合理性だけを考えていると、どこかでぶつかる」と是松社長。
 戦後(1945~50年代)~中国国交の正常化(1972年)~日本の高度経済成長を経験した世代は、経済合理性だけで物事を考えて決定していってはいけないという思いを、日本人も中国人もどこかで共有していた。だが、世代が代わり、新しい世代が国や企業の指揮をするようになったら、その共有意識は崩れてしまった。「インド、ブータン、ベトナム、フィリピンとも領土問題を起こしている。今後は、そういうリスクの少ない東南アジアに目を向けるべきでは。さらにはアメリカの動きを見ておくべき」と語った。

<アメリカの再びの台頭がある>
bi_2.jpg IT、金融だけだと、雇用を支え切れない。日本の高度経済成長期がそうであったように、製造業が中間層の拡大を支える。イギリスなどは金融で持っているが、全世界的な中間層の拡大のために製造業の復活が待たれる。是松社長が期待するのは、アメリカの復活だ。アメリカでは、新型天然ガスとも言われるシェールガスの発掘、開発が進み、天然ガスの価格はみるみるうちに下がっている。このシェールガスが安価で全米に供給されることで発電にかかるコストも下がっている。

 「アメリカが、エネルギーの輸出国になると、製造業の復活がある」と、アメリカから新エネルギー革命が起ころうとしている。このところ、中国などアジア勢に比べると、勢いのなかったアメリカ。再び世界経済をけん引する勢いを持つ可能性も十分考えられる。

 是松社長は、「この10年は、中国以外の東南アジアの動向を見ながら、いつ、アメリカに再進出するか。そのチャンスを狙う時機だと思います。選択肢として、カナダも入ってくる」と、中長期的に東南アジアを見据え、アメリカの復活のチャンスをうかがうというスタンスに立つ。「海外に出て行ってもいいという人材を日本で育てること。それから、東南アジアからアメリカへの再進出を図るというかたち」と、今後の10年を見据えた。

<企業は人なり>
 是松社長は「職人が育つ国に進出したい。タイはやはり魅力的。タイの第2工場を拡充していく方向で考えている」と、製造業における職人が育つ国として、東南アジア、とくにタイの魅力を挙げた。昨年、バンコク郊外のアユタヤ県での大洪水で日系企業の多くが被害を受けたが、復旧と対策は進んでいる。

 VTCグループでは、中国に6工場(雇用約8,000人)、タイに第2工場を含め、2工場、ベトナムに2工場を抱えている。日本での生産が3割、海外での生産が7割と、海外での生産の割合が高くなっている。日本では、これまで培ってきたノウハウを活用し、主に、R&D(研究開発)と人材育成を手がける。

 「日本の役割は、試作対応や人材育成のための教育工場になってくる。やはり、"企業は人なり"だと思う。今後の日本をどう支えていくかを考える時も、やはり"人"。それとスピードも重要。時間は有限であるということを口を酸っぱくして言って、期日を守らせる」と、人材育成とスピードの重要性を語った。

<"人材力"こそが組織の強さ>
 企業は人。VTCグループでは、どのようにして人材を集め、育てるのか。
 「いい人材はどこにいるのかを常に考えていく。営業はどういうスキルが必要か、製造にはどういうスキルが求められるか。売る、買う、作る。品質管理の準備段階、受注、設計、調達にどういう人材が必要か。現在のうちの会社には、そういう人材がいるのかどうか。いないなら、どこにいるのか探す。企業として戦っていくために必要な戦力のマトリックスを作って、人材を育てる。うちの場合は、経営の苦しい会社を任せるとノウハウを覚える」と是松社長。

 企業を再生させ、そこからさらなる成長に向けて、人的な補完を図る。組織を人材、財務でつなげる。是松社長が、企業再生のコンサルティングで培ってきたノウハウ。足りない人材をスカウトし、能力のある人を育て、能力を発揮できる部署に付け、適材適所を図っていく。長期的な戦略を遂行するための戦力を育て、不足を埋めていき、"人材力の鎖"で、企業をつなぐ。
 この人材力を十分に発揮させるノウハウは、日本を組織として立て直す"日本再生"にもつながる部分があるのではないか。

(了)
【岩下 昌弘】

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