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宇宙に憧れ、時を経て最新小型衛星を開発(後)~学校法人福岡工業大学
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2012年12月 5日 07:00

<遊び心がFITSAT-1誕生の鍵だった>
 このような高精度の小型衛星を短期間でつくることができたのには、理由がある。田中教授は小さい頃からアマチュア無線に親しみ、通信と回路の道に精通していたのだ。知識は豊富だったし、何より得意分野だった。どの周波数電波が、どれぐらいのパワーでどこまで届くのかということが長年の経験上でわかったので、遊び心を持って研究に従事できた。それが研究には非常に大切なことだった。
 また、JAXAに応募する前に九大の衛星開発をサポートしており、研究会に参加しながら「これは福工大の自分の研究室でもできる」と確信を掴んだという点も大きい。実際、科学技術振興機構の補助金を得て小型通信モジュールを開発できた。そこで、宇宙での高速通信の実証実験をしたい、という企画意図をJAXAの審査委員会で説明した。その結果、思いが通じ、最終的には応募8件のうちから採択された。胸躍らせながら夢を語る田中教授に、JAXA側も熱いものを感じたからだろう。

tanaka.jpg 実は、田中教授は知能情報学、つまりAI研究が専門だ。以前は国立国語研究所に勤めていた。言葉がわかるロボットをつくりたかったのだ。音声認知ではなく、言葉の意味そのものを理解できる「ドラえもん」のようなロボットをつくりたくて、11年間従事していた。昔、自分が子どもの頃、「鉄腕アトム」があり、青春期には「2001年宇宙の旅」という映画があって、賢いコンピュータやロボットがSF映画に出てきた。
 当時、宇宙開発の舞台で競争できたのはアメリカとソ連のみ。日本は今よりずっと立ち遅れていた。本当は宇宙のことをやりたいが、とても手が届きそうにないと思っていたところ、大学院に入った頃から日本でコンピュータが市販されるようになり、これなら自分の夢に肉薄できると感じ、以来、知能情報工学をテーマに研究に専念してきた。しかし、定年を間近に控えて、遣り残したことはなかっただろうか、と振り返ってみたとき、長年胸のうちに秘めていた青年期の夢がむくむくと頭をもたげてきた。「あ、まだ宇宙のことをやっていなかった」。そんなとき、JAXAの公募を知った。
 宇宙に憧れながらも、一度はその夢を手放すという経験がなければ、FITSAT-1誕生につながる夢と言う名の苗床も育まれていなかったかもしれない。

<次の目標はクリスマス・イブのビッグイベント>
 夢とロマンに溢れる田中教授の次なる目標は、FITSAT-1の2つ目のミッション、世界初の試みとなるLEDを点滅させて、遊び心満載の試みに挑むことだ。実はHPを通じて世界中からリクエストが届いたので、それに応えてクリスマス・イブに赤と緑の光を世界中で点滅させようと思っている。
 すでに3W電球が50個ついていて、コマンド操作によって光らせることができる。11月終わり頃から実験を始め、5等星から7等星ぐらいの明るさになる予定。双眼鏡があれば地上から見ることができるだろう。1日に地球を16周するので、日本でも観測は可能だ。

 キリスト誕生時に空に現れたベツレヘムの星を思い浮かべながら、空を見上げてもらいたいという田中教授。次なる研究にはどんなものを、と問いかけると、「まず、FITSAT-1の機能を100%動作させることです。高速画像送信は成功したので、次はクリスマス・イブのイベントを成功させることですよ」と笑った。

(了)

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<UNIVERSITY INFORMATION>
■学校法人 福岡工業大学
学 長:下村 輝夫
所在地:福岡市東区和白東3-30-1
TEL:092-606-0607(広報課)
URL:http://www.fit.ac.jp/

<Profile>
tanaka_pr.jpg田中 卓史(たなか・たくじ)
 1944年福岡市生まれ。67年、九州大学工学部卒、72年、同工学研究科電子工学専攻博士後期課程修了。77年、国立国語研究所研究員、主任研究官。88年より、福岡工業大学情報工学部情報工学科教授。


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