ネットアイビーニュース

NET-IB NEWSネットアイビーニュース

サイト内検索


カテゴリで選ぶ
コンテンツで選ぶ
会社情報

特別取材

適正なアプローチで国土強靭化を(前)~京都大学教授・藤井聡氏
特別取材
2013年2月19日 13:00

 安倍内閣で防災、減災ニューディールの担当として内閣官房参与を務め、事前防災を重視した国土強靭化計画を提唱する京都大学工学部の藤井聡教授。耐震補強、津波を防ぐ堤防建設などの公共事業を含めた国家プロジェクト。防災、減災の大規模対策を進め、経済成長を見据えながら、日本列島全体を強くしなやかにすることを目指す。公共政策の専門家として、巨大地震に備え、首都圏への過度の一極集中から地方への分散を図る「都市機能の分散化」も提言。アベノミクスの一翼を担う大規模な国土強靭化計画を支えるブレーン、「政府としての検討は、まさにこれから、まだ何も決まっていませんが」と前置きする藤井聡氏に、これまで「専門家として発言してきた内容」について聞いた。

(聞き手:IB事業部部長・緒方 克美)

<ポイントは都市機能の分散化>
 ――「10年で200兆円規模の公共投資」という格好で、藤井教授がこれまで提唱してこられた国土強靭化計画のなかでは、防災、減災の対策を進め、国土全体を災害に強くするとともに、都市機能を地方に分散することも重要なポイントとなっています。

fujii_1.jpg 藤井 国土強靭化計画のなかでも、「都市機能の分散化」というのは、重要な政策目標の1つになっています。首都圏には、日本全体のGDPの約30%、南海トラフ地震の想定被災地に入っている東京(首都圏)、大阪、名古屋の3大都市には、日本のGDP約70%が集中しています。
 今、日本は、科学的な予想に裏付けられて、首都直下型地震、南海トラフ地震が起こるだろうという「危機」にあります。起きてしまえば、日本の都市機能、経済の心臓部分が甚大な被害を受けてしまいます。無策で終わってしまうと、国家が立ち直れないほどの被害になる恐れがある。そうなると、日本は一流国からの陥落も決してあり得ない話ではないかもしれません。
 だからこそ今、国土全体を強靭化し、防災、減災の対策を進める必要があるのです。公共事業への投資を行ない、それでも起こってしまった場合、すべては防ぎきれないでしょうから、九州、北海道・東北、北陸・信越などの地の利を活かしながら都市機能を分散させるというのが、国土強靭化を進めるうえで大事ではないか、という事を、拙著の中などでは申し上げて参りました。

<公共事業推進には批判も>
 ――公共事業を推進する政策には、バラまきになるのではという批判もあります。財政出動について「土建国家への回帰」など否定的な見方も少なくありません。

 藤井 公共事業の推進に対しては、さまざまな観点から批判がありますが、まず認識してほしいのは、「危機」があるということ。科学的にはかなりの確率で地震が起きると言われていますので、国土強靭化計画そのものを根底から否定することは、危機を放置するということと論理的には一致することになります。地震が起こらなければそれでいいのですが、かなりの可能性で危機があるということをまず理解してもらって議論をしていきたい。同じ批判をするにも、もっと効果的なやり方があるとか、同じ額の投資でさらに効果的な防災の方法があるとか、そういう活発な議論をできれば、ありがたいと思います。無限の対策法があると思いますので、危機の認識を共有したうえで、どのように防災し、減災するのか、公共事業に否定的な意見を持つ方々とも話し合っていきたいと思います。
 多様な意見を喚起するための批判は、たくさんいただきたいと思っています。

 ――橋やトンネルなどの老朽化に対して、まだ一般的な理解が得られていないのが現状です。建設業界が、維持補修について発言すると、どうしても「仕事を増やすためだろう」などと憶測されることがあります。安全、安心にコストがかかるという国民的な意識が足りません。マスコミが続けてきた「公共事業は無駄」というイメージ付けの責任もあります。

 藤井 今、トンネルや橋、道路などが老朽化しているのは明白です。科学的な分析をすると、そこに「危機」があるのはデータとしてわかっています。ただ、「危機」というのはまだ起こっていないので、見えません。"一寸先は闇"と言いますが、一寸行くと、大怪我してしまうこともあります。ちょっとした科学的な分析、データを見てみると、危ないということがわかります。
 データとして知っている人と、情報を知らされていない人の間には、巨大な溝があります。自分も大学で研究をしてきましたので、データとして老朽化が進んでいることがわかっています。学者として、「どこかの橋が危ない」などの情報を国民にお伝えしたいと思っています。
 ところが、情報を知らされていない人々のなかに、行政に携わったり、政策に関わったりする方もいらっしゃいます。学者が「危ないですよ」と声を出しても、届かないことがあるのです。
 政策的に放置される状況が続いてしまっていました。危機に対しての無知の構造があったのはたしかで、笹子トンネルで崩落事故が起こりましたが、背景には、そういう老朽化への対策が政策的に放置されてきたという事情もあります。
 公共事業に関しては歴史的に否定的な意見が多く存在し、老朽化への対策が必要なのに進んでいなかった――そういう"空気"が存在します。否定論があるのは良いことですが、それと同じぐらい中立論、肯定論もあるべき。それが健全なあり方だと思います。これまで否定論が支配的でしたが、それでは、適正な公共事業のあり方を論ずることができないと思っています。

(つづく)
【文・構成:岩下 昌弘】

| (中) ≫

<プロフィール>
fujii_pr.jpg藤井 聡(ふじい・さとし)
1968年奈良県生まれ。2012年12月に発足した第2次安倍政権で内閣官房参与(防災・減災ニューディール政策担当)に就任。京都大学大学院工学研究科教授。11年より京都大学レジリエンス研究ユニット長。専門は「公共政策に関わる実践的人文社会科学全般」。表現者(発言者)塾出身。公益社団法人国家基本問題研究所客員研究員も務める。産経新聞社『正論』欄執筆メンバーの一人。実践的社会科学研究について03年土木学会論受賞、07年日本行動計量学会林知己夫賞、村上春樹文芸評論について06年「表現者」奨励賞、07年文部科学大臣表彰・若手科学者賞、09年日本学術振興会賞、進化心理学研究について09年日本社会心理学会奨励論文賞等、受賞多数。著書に『社会的ジレンマの処方箋:都市・交通・環境問題のための心理学』『土木計画学』『なぜ正直者は得をするのか』『公共事業は日本を救う』『救国のレジリエンス』『維新・改革の正体』などがある。


※記事へのご意見はこちら

特別取材一覧
NET-IB NEWS メールマガジン 登録・解除
純広告用レクタングル

2012年流通特集号
純広告VT
純広告VT
純広告VT

IMPACT用レクタングル


MicroAdT用レクタングル