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「維新銀行 第三部 クーデター」~第2章 クーデター当日(53)
経済小説
2013年5月21日 07:00

<取締役会議(14)>
 堀部が発言を終わると議長の栗野は、
「経営会議に出席されていなかった4人の取締役のご意見を伺いましたが、他にご意見などありましたらお願い致します」
 と述べると、専務の石野が挙手し、
「取締役同士の意見が今こうして割れることは、非常に残念なことです。今一度冷静に考えなければならないと思います。トップが経営責任を取って辞めるということは、それまでの経営の判断や実績でもって判断すべきであり、当行の歴史のなかでも1期2年でトップが交代した例はありません。また頭取に就任してわずか2年で退任となれば、世間から見ても何があったのかと不審に思われ、当行の信用失墜に繋がると思います。確かに動議に賛成の方も当行の将来を考え、それぞれの思いで発言されているとは思いますが、その主張にはトップが交代しなければならない大義名分がないと思います。人間には長所も短所もあり、そこはお互いに修正すべきは修正していくことが大事ではないでしょうか。また頭取の経営の仕方に問題があれば、取締役会などで問題提起することが取締役としての忠実義務だと思いますが、今までその様な問題の提起もせずに、ある日突然人事権有する代表取締役頭取に対して集団で闇討ちにするような行為は、男らしくないのではないかと考えます」
と語った。

 石野の発言に続いて挙手したのは、頭取の谷野だった。

「私自身は辞めるつもりはありませんが、この取締役会議で否認されれば、決議に従って辞めることになります。ただ先ほど松木取締役が私の再任反対の理由に『採用やパートタイマーの件』を上げておられましたが、その件は私が独断で決めたことではなく、経営会議で協議され取締役会で決議されたものです。今頃になってそれを持ち出して私の退任理由として発言されたことは、自分に唾をかけるようなものであり、今少し次元の高い所で議論をしてほしいと思います。もし経営責任を取って2年で辞めるということであれば、自身が株主、取引先行員に対して何か大きな迷惑をかけたということになり、その経営責任を追及され、議論の結果、頭取として不適格であると判断されたのであれば、潔く辞めるつもりです」
 と述べた。

 月日は流れ、奇しくも9年前(2004年5月21日)の今日は、『谷野頭取罷免』の取締役会議が開催された日であった。

(つづく)
【北山 譲】

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※この作品はフィクションであり、登場する企業、団体、人物設定等については特定したものでありません。


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