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九州に宇宙をつくれ!ビッグバン直後の状態を再現するILC(前)
経済
2013年6月12日 07:00

 物質は原子からできている。原子は素粒子からできている。素粒子とは何だろう。その疑問に答えるには、人類の科学は万全ではないらしい。昨年、ヒッグス粒子らしきものが欧州原子核研究機構(CERN)で発見された。この存在は従前より予言されていたものだが、それでも実際にあった(可能性が高い)ということがわかったのは大きい。その粒子、実はほとんど何もわかっていないのである。その謎を解明する施設が、「ILC(国際リニアコライダー)」である。ヒッグス粒子は、既知の素粒子とはまったく性質を異にする。その性質を解明することは宇宙の構造、始まりの一端を知ることにつながる。知への探究の最先端―それがILCなのだ。

<ビッグバンをつくり出せ>
 物理の法則が、時間が、物質が生まれた瞬間。それこそが宇宙の誕生の瞬間だと考えられている。それをいわゆる「ビッグバン」と呼んでいるのだが、その瞬間に何が起こったのか、どういう要素を入れればどういうことになったのか、そういったことは、実は想像の域を超えていない。素粒子が物質となる前は、どういう状況だったのか。エネルギーと物質はどのように存在していたのか。それを知ることは、すなわち宇宙の始まりの一部を知ることにほかならない。その実験施設こそが「国際リニアコライダー(ILC、International Linear Colliderの略)」なのである。

 このILCは、国際宇宙ステーション(ISS)、国際熱核融合実験炉(ITER)と並ぶ、21世紀の3大科学プロジェクトの1つとされている。要は、それだけ重要な実験計画だということだ。
 何が重要なのか、宇宙の創生を再現するとはどういうことなのか、そんなことできるのか―。私たち一般人には「?」ばかりが並ぶが、どうやらできるらしいのである。
 ILCは直線30km(第一段階の設計予定。その後、拡張される可能性も十分にある)の地下トンネルを掘り、そこに素粒子を走らせるパイプを通す。片方の端から電子を、もう一方の端から陽電子を飛ばす。それぞれ15kmを進む間にほぼ光速にまで加速され、さらにエネルギーが加えられる。高いエネルギーを与えられた電子と陽電子はパイプの真ん中あたりで衝突をする。すると、電子と反物質である陽電子はお互いを打ち消し合い、対消滅(ついしょうめつ。粒子と反粒子が出会うと一度エネルギーになって、そのエネルギーがE=mc2に従って新しい粒子となる)が起こる。これは、宇宙創成のほんの少しだけ後の状態、エネルギーと素粒子が物質(または反物質)を形成していない状態と同じである。何もないところに高いエネルギーと素粒子がある状態、"ビッグバン"直後の宇宙そのものなのだ。それをつくり出して観測する装置が、ILCなのである。

 現在、スイスのジュネーブにあるCERN(欧州原子核研究機構。セルン、またはサーンと呼ばれる)の全長27kmの大型ハドロン衝突型加速器が最長、最高水準の加速器で、多くの新たな知見を得ることができた。その最たるものは、「ヒッグス粒子」の発見である。これは昨年、CERNの大きな成果として世界中を駆けめぐったが、実は詳細はわかっていない。というのが、CERNでは素粒子ではない陽子を用いて加速衝突させ実験するため、見たい反応だけではなく、余計な結果まで招くことになるのだという。それゆえ、像のぼやけた写真のような研究結果しか得られないことになる。

 それでも、CERNでヒッグス粒子であろうものが発見されたというのは、大変意義のある、宇宙の謎の一端を知る大きな一歩を記したことになる。だがCERNでは、ヒッグス粒子の詳細を知ることはできない。それを知るための施設が、ILCなのだ。

(つづく)
【柳 茂嘉】

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