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SIDSとALTEの闇(5)~KC中の事故は親の責任? 大阪地裁判決(3)
社会
2013年9月25日 12:30

<保温の方法に間違い>
 寒い分娩室(24℃~26℃)で、寒冷刺激(胎内と胎外の環境温度差)を受けた新生児は、生後1時間以内に約2℃~3℃の体温下降を強いられる。分娩時の寒冷刺激が強すぎると、新生児を低体温症に陥らせる。また脳発達に最も危険な肺高血圧症(チアノーゼ)・低血糖症・重症黄疸などの合併症を引き起こす。
 「そこで現代の助産師は低体温症を防ぐために、温められたタオル・毛布などで赤ちゃんの全身を被い、放熱を防いで低体温症を防ごうとする。しかし、毛布などで児を被う体温管理法は赤ちゃんの全身状態を見えなくするため、危険だ」と久保田医師は指摘する。また、日本の寒い分娩室では、タオル・毛布だけでは保温効果に乏しく、出生時からの急激な体温下降を防ぐことはできないと指摘する。

 「本件でも、被告病院側は、保温のためといい、赤ちゃんをバスタオルで包み、さらに布団をかけた。その状況の記録から、赤ちゃんの状態は、傍にいた父親はもちろんのこと、医療関係者でも容易に観察することができない。さらに、30分おきの助産師による観察だけでは、赤ちゃんの全身状態、すなわち呼吸状態・全身色・筋肉の緊張度などがまったく見えない。そのために、胎内から胎外生活への適応過程が異常なく正常に進んでいるかどうかの判断もつかない。厚労省は出生直後の新生児の呼吸循環動態は生理的に不安定と報告したが、その呼吸状態の正常・異常が観察できない早期母子接触(正常に産まれた児へのカンガルーケア、以下、STS)は赤ちゃんにとって危険極まりない保育法である」(久保田医師)

 原告の女児の異常に気付いた時は、すでに児は心肺停止の状態であった。新生児の管理を親まかせにすることは、医療の責任を放棄したのも同然と言えるのではないだろうか。「厚労省が推進するSTSは、昔の産婆さんの保育管理法より危険なやり方だ。理由は、昔の産婆は、産湯を沸かし部屋の温度を上げ、産湯に入れ、低体温症を防いでいた。ところが、現代の助産師には低体温症の危険性・体温管理の重要性の教育がなされていない」「昔の産婆さんの体温管理が、より安全で、より科学的」と話す。(久保田医師)

hospital2.jpg 久保田医師は新生児管理の基本である体温管理(保温)の重要性を無視した助産師教育のあり方にも問題があると指摘する。
 厚労省の「授乳と離乳の支援ガイド」が2007年に発表されて以来、出生直後のSTSが普及し、昔の産湯が日本から消えた。久保田医師は、「出生直後の体温管理(保温)の重要性が忘れられたこと、赤ちゃんを『うつ伏せ寝』の状態で母乳を吸わせている医療行為そのものが、出生直後のSTS中の心肺停止事故の原因」と断言する。そして、「出生直後の新生児管理に重要なことは、赤ちゃんを『あお向け寝』で管理すること、母乳を吸わせる時は、母親が仰向けに寝た状態ではなく、座った状態で赤ちゃんを抱っこして飲ませるべきである。これだけで窒息事故は100%防げる」という。

 久保田産婦人科麻酔科医院では、出生直後の新生児を温められた保育器(34℃⇒30℃)に2時間収容する。もちろん保育器内の赤ちゃんは裸であるため児の全身状態の観察が一目瞭然だ。全身色(チアノーゼの有無)・呼吸数はもちろん呼吸状態(努力呼吸、陥没呼吸、多呼吸、呻吟、無呼吸)の観察が容易にできる。
 しかも、新生児の体温は約38℃から37℃に緩やかに1℃低下するだけで、熱産生に要するエネルギー(糖分)消費が少なく、低血糖症を防ぐこともできるという。
 さらに、出生直後の赤ちゃんを温かい保育器内に入れると、足底部の体温が34℃以下に低下しない。つまり、下肢の冷え性(持続的な末梢血管収縮)を防ぐことによって、下肢から心臓に戻る静脈還流が促進され、全身臓器への血液の循環が良くなり、初期嘔吐などの適応障害を防ぐことができる。
 久保田医師は、『麻酔医の立場』から、正常に産まれた新生児にも未熟児と同様の体温管理をすべきと強調する。「術後患者と同じ様に、出生直後の赤ちゃんにもリカバリールームで体温管理をすべきだ。生後2時間の保育器が、赤ちゃんのリカバリールームである」と話す。

(つづく)
【山下 康太】

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