福岡県太宰府市に建設中の医療施設で、太陽光発電とLEDに関する電源や配電関係をすべて請け負い、大手医療機器設備会社に発注し、順調に作業を進めるファブスコ（株）（FaBSCo）。エネルギー分野でのスペシャリストを目指す同社代表取締役社長の江藤邦彦氏は、これを機に専門性が高い医療系技術を学ぶことができると考えている。一方、新しい情報を得る努力も並行して行なっている。

＜ネットワークの巧みさを強みとして活かす＞
　福岡に拠点を置きながらも、常に全国を飛び回る江藤社長。その先々で得る情報や刺激を吸収し、糧にしている。

　「先日は東京で、とある自動車製造企業の関連企業の方と話をする機会がありました。その企業は、車のエンジンの電子制御製品の製造事業を担っている会社です。自動車製造会社の方で電気自動車をつくっているのでEV充電スタンドもつくっていますが、車が売れないとスタンドの需要も伸びないが、車を売るにはインフラ整備が整っていないといけない、という『鶏が先か、卵が先か』といった産みの苦しみを抱えていました。
　しかし、悩みは転機でもありチャンスでもありますね。このままでは電気自動車が生産ラインに乗らない。となると、新しい解決策を求めて未知の領域へ本格的に取り組もうと考えます。電気自動車で実績が出ないなら、さらに効率良く安価なエネルギーの創出を目指すわけで、水素発電の実用化へとつながっていったようです。
　実際、自動車製造会社では近い将来、水素による燃料電池自動車の発売を目標にしています。自動車関連企業は今のうちから水素ステーションの建設を目指さなくてはなりません。水素の取り扱いによる爆発事故も起きていて、建設には建設費も含めてかなりのリスクを背負います。中小企業が手を出すのは難しいでしょう。しかし水素燃料電池自動車ができるという確信があれば、思い切った投資もできます」（江藤社長）。

　長期的に見れば必ず市場が広がっていくだろうと感じ、今後、水素関連の事業にも関わってみたいという意欲が湧いたという。
「エネルギー分野は常に新しい動きがあって、革新が行なわれているので、弊社のような後発隊も入りやすいですね」と、目を輝かせる。こうやって、"エネルギー後発企業"としてどこに攻め込んでいくかを、常に図っているようだ。中小企業は小回りが利く分、細やかなサービスを提供できるのではないかと睨んでいる。

　一般的に中小企業の経営者は、自社のある周辺地域の顧客を増やそうとするので、まずは足元の地域での営業を主に行なう。
規模が大きくなってから進出する、ということはあっても、設立間もない会社が方々を飛び回るという例は多くない。江藤社長の行動範囲の広さは独特だ。
ある関係者は「ネットワーク形成の巧みさが、江藤社長の強み」と見ている。

　行動範囲を広げ、人脈を拡げていくことによって、新事業への参画を狙うのは江藤社長の得意技のようだが、意外と本人にはその自覚はない。
「私の場合、単に移動するのが苦にならない、むしろ好き、というだけですよ」と笑う。先述の関係者は「以前、ヤナセの営業に携わっていたためか、経営の組み立てに商社的な視点を感じる」と言う。

　広範囲を行動するのは、何にでも手を広げたいと考えているためではない。「私としては、川のように、上から下に流れる１本の筋をきちんと通したビジネスをしたいと思います。私は地方の出身なのですが、市場として期待できない場にとどまっていては何の発展もないと思って福岡で事業を起こしたのです。ここでの取引は重要です」と江藤社長。

　福岡に来てみると、人が全国にいるのが見える。人がいるところに足を運んでいるうちに、結果として全国を飛び回っているように見えてしまっているのかもしれない。
　「でも動いていると地域や距離を感じずにすみますよ。距離が遠いと先方が思うのであれば、こちらが動いて距離感や時間を短縮してみせればいい、という考えが私のなかにはあるのです」。そうやって全国が自分の守備範囲だと考えていくのも１つの方法なのかもしれない。このような、スケールが大きな考え方に基づいて行動するからこそ、行動範囲が広い経営戦略になっていくのだろう。

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＜COMPANY INFORMATION＞
代　表：江藤　邦彦
所在地：福岡市博多区博多駅前2-12-15
資本金：2,000万円
ＴＥＬ：092-432-2323
ＵＲＬ：http://fabsco.co.jp/

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