福岡市と北九州市の中間に位置し、豊かな自然、歴史、文化に恵まれた福岡県宗像市。これまで両政令指定都市のベッドタウン的な都市として発展を遂げてきた同市は、今後、どのような方向に進んでいくのか。これまで2期8年間にわたって市長を務め、今年4月20日に3選を果たした宗像市長の谷井博美氏に、話を聞いた。
<「市民力」を活かし、住んでみたいまちに>
――さて改めてお尋ねしますが、ここ宗像市やこのエリアにおける"売り"とはどういったところでしょうか。
谷井 それについては、3年前のデータ・マックスさんのインタビューの際にもお話しさせていただきましたが、やはりここは「歴史」「文化」「自然」そして「食」があります。そして私はさらに、そこに「市民力」というものを付け加えています。この「市民力」とは、地域の課題解決やまちづくりに積極的に取り組んでいく市民1人ひとりの力を指すもので、まちづくりの基盤となるものです。ここ宗像市では、市民の「自分たちのまちは自分たちでつくろう」という意識が非常に強く、1つの例としては、コミュニティ制度が全国的に見ても進んでいると思います。小学校区単位で12のコミュニティを整備していますが、権限と財源を移譲し、それぞれが地域分権というかたちで、自分たちでプランをつくり、まちづくりを行なっています。行政としても、この市民力が最大限に活かされるように、取り組んでいきたいと考えています。
――宗像市はこれまで、両政令市の中間に位置するベッドタウン的なまちとして成長を遂げてこられましたが、これからの成長に関しては、どのように考えておられますか。
谷井 やはり私の信条として、「元気な市民と、元気なまちづくり」があります。そしてまちの将来像として、「元気で成長し続けるまち」を掲げています。
ご存知のように、宗像市は福岡市と北九州市という政令市のあいだで、住宅都市として発展し、福岡市、北九州市の方に通勤・通学されています。ですから、住環境としてはとても良いということが言えます。政令市と同じようなことをやっても仕方がありませんから、宗像市としてはやはり独自に持っている資源を使ったまちおこしというのが一番の道じゃないかと思います。
宗像市は、「非常に住みやすいまち」ですが、我々としてはそれプラス「住んでみたいまち」にしていきたいと思います。ターゲットは、やはり子育て世代ですね。この世代の方々に宗像市に住んでもらって、この住環境を活かしたなかで、教育にも力を入れていきたいと思います。
――子育て世代というと、若い夫婦とか、そういった方々を対象にした政策もされていくのでしょうか。
谷井 今後、考えなければならないものは、子育て教育のなかで、まず安心して子どもを育てられる環境です。これは、たとえば保育所の待機児童なし、あるいは学童保育については6年生までやっているなど。医療費については小学生までは無料。さらに今回、中学生の入院費用までは無料にする、という政策を出しています。そういう環境整備をやっていきます。
もう1つは、習う方の環境です。今からはグローバル化に対応できる子どもを育てるべきだという視点を持っています。たとえば、全国では高校生の次世代のリーダー養成塾というものをやっていますが、その宗像版として「グローバル人材育成推進計画(仮称)」を策定し、グローバル人材の育成事業や国際交流事業などに組織的に取り組みます。また、「宗像国際育成プログラム」として、小中一貫教育による義務教育9年間を通じた英語教育の充実を図っていきます。まずは子どもたちに対して大人の責任として、世界がグローバル化するなかで日本が取り残されてしまわないように、世界に羽ばたくようなリーダーを養成する、ということを考えています。
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⇒宗像市公式ホームページ
<プロフィール>
谷井 博美(たにい・ひろみ)
1940年生まれ。63年、熊本大学法文学部卒業後、福岡県庁に入庁。92年に福岡県農政部副理事兼農政課長、97年に福岡県企画振興部長と、県の要職を歴任。99年に福岡県庁を退職し、空港周辺整備機構福岡空港事業本部理事に就任。2001年に宗像市助役に就任後、03年からは新「宗像市」助役を務める。06年に宗像市長に就任。その後、10年、14年と市長選に当選し、現在3期目を務める。
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