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増え続ける原発ビジネスのリスクと日本の対応(3)
未来トレンド分析シリーズ
2011年8月31日 07:00
総務政務官 浜田 和幸

中国の高速鉄道の衝突脱線事故 とはいえ、最近発生した高速鉄道の衝突脱線事故を見るにつけても、中国の安全管理にはどうしても不安がつきまとう。これまでも中国の原子力発電所ではさまざまな事故が発生したと言われているが、報道管制が厳しく、その実態はほとんど明らかにされてこなかった。それどころか、開示した場合でも、"単なる小規模な火災にすぎない"といった類の説明を毎回繰り返している。

 数少ない原子力発電に関する事故の報道を見ると、08年に中国江蘇省田湾原子力発電所で変圧器が爆発して火災が発生する事故があり、また10年には、広東省の大亜湾原発で放射能漏れの事故があったとされる。この大亜湾原発は1994年に運転を開始した中国初の商業用原子力発電所で、中国市場が対外的に開放されてから最も早く稼働した最大規模の合弁事業である。年間の発電量は140億kW/hで、うち70%は香港に供給されてきた。

 香港市民の間では、本土初の原発の運営管理に対する不安の声が、幅広く聞かれていた。香港立法院の議員の間でも「知る権利」が保障されていないとの声が出ており、昨年発生したとされる放射能漏れの事故に関しても、情報開示が不十分だとの批判の声が高まっている。その流れを受け、今回の福島第一原発の事故がきっかけとなり、中国国内の原発周辺地域の人々の間でも安全性の確認を求める動きが、日増しに高まっていると言われる。

 たとえば、理論物理学の権威で中国科学院アカデミーの何教授曰く、「福島原発の事故は我々に大きな教訓を与えてくれた。スイスでは原発廃止に向けての決定が下された。スイスには地震や津波の危険がほとんどないのに、なぜ脱原発を決定したのか。それは原発が潜在的な核爆弾であるからだ。核爆発の恐ろしさは、研究者である私たちが一番よくわかっている。テロ対策に力を入れている中国が次々と原発をつくるのは、問題だと思う。中国の原発の耐震基準は公開されていないが、おそらくM6.5~7だろう。ただ、明らかなことは、地震や津波対策にコストをかけると採算が合わないということだ。日本のようにM9を超える地震が起きた場合どうするのか。中国にはそうした対策が、まったくといっていいほど講じられていない」。

 こうした声が表に出るほど、今の中国では政府の説明とは裏腹に、原発の安全性に対する危惧の念が高まりつつある。去る7月末には、遼寧省の大連に近い原潜基地で放射能漏れの事故が発生したとの報道もあった。とくに黄海を挟んで目と鼻の先にある韓国とすれば、福島第一原発の事故の影響もあり、衝撃が走った。韓国政府の問い合わせに対し、中国政府からは何ら誠意ある説明がなかったという。

 日本とすれば今回の事故の教訓をふまえ、中国、韓国との間で原発危機対応のマニュアルづくりと実際の緊急対策シミュレーションを、ただちに進める必要があるだろう。それが、未曽有の災害を経験した国の、国際社会に対する責任だと思われる。原発事故に国境はないことは、論をまたない。

(つづく)

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<プロフィール>
浜田和幸氏浜田 和幸(はまだ かずゆき)
参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務政務官に就任。震災復興に尽力している。

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