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東日本大震災

【特別寄稿】震災がもたらした意識の変革終焉に向かう中央集権システム~佐藤俊郎氏
東日本大震災
2012年1月 5日 07:00
環境デザイナー 佐藤 俊郎 氏

 「おとうさん!またでんきつけっぱなし!」―と、4歳の娘に叱られる。たしかに私自身、心がけて、こまめに電気のスイッチを切っている。娘の手を引いて、家族で原発反対のデモ行進に参加し、久しぶりに車道を歩く爽快感を味わった。また別の場面で、皆さんと九電株主総会の会場を包囲した。明らかに意識は変わり、これは決して自分だけではなく、あらゆるところで同時進行している現象だと思える。

fukushima.jpg 3月11日の東日本大震災は、巨大地震と津波による自然災害であったが、同時に原発を含めて、明らかに社会災害でもあった。福島原発の崩壊以降、夏の電力需要のピークをどのように乗り越えるか―。まさに、湯水のごとく使用していた電力や電力業界のさまざまな問題が、白日の下に露呈した半年であった。

 福島で発電された電力が、送電されて首都圏の大需要をまかなっていた事実。この構図は決して電力だけの問題ではなく、全国の農水産品が生産地から首都圏に集められ、さらに地方へ発送される構図とまったく同じである。各地で自主上映されている「幸せの経済学」が訴えているグローバリゼーションが、ローカルの経済を破壊し、地方の地場生産にもとづく文化を破壊し、ライフスタイルを激変させた構図とも相通ずるものがある。そして、この構図そのものが破壊されたときに、いかに広範囲に甚大な経済的、社会的影響を与えるか―。これも今回の震災が示した教訓である。

 今回の震災は、今までさまざまな分野で言われてきた、現在社会を構築してきたシステムやそれを維持管理してきた既存の体系が、ことごとく"機能不全"であることを見事なまでに証明して見せた。都市計画の分野でも、「マスタープラン」あるいは総合計画のように俯瞰して「細部は全体に従う」という思考が、再生復興の場合にも、いかに足かせになっているかを、机上の警鐘から自然災害という非情な手段で見せつけた、とも言える。

 次世代の都市構造と電力インフラの救世主のごとく言われる「スマートグリッド」は、まさに単機能的な現在のインフラに代わり、多機能で地産地消の自然エネルギーを取り込むセミラチス構造のネットワークを構成するインフラである。ある意味で、もっともリスクを避けるシステムに思える。

 震災後視察した南三陸町で、壊滅的な打撃を受けた戸数40戸の漁村にある民宿のオーナーは、自らの土地を仮設住宅の敷地として使ってほしい、と行政に申し出ていた。もしそれが可能であったならば、離散する住民を留め、明日からでも漁業の再生に向かえると話してくれたが、行政は決断をしなかった。

sora_3.jpg 小さな美しい湾に囲まれた漁村は、そこだけで自立した共同体としての再生の道を選ぶべきである。それは、電力、上下水道、さまざまな生活インフラまで、可能な限りの自立した小さな単位の集合体が、最終的には被害を最小限に留める有効な手段であると震災が教えたのではないだろうか。

 三陸の海岸線は、震災後でも美しさを失っていないと思う。そして1つ湾を隔てただけでも、別の共同体が存在していたはずだ。ならば、なぜ、そこに自立し、自律した個別の解を求めようとしないのだろうか。中央がすべてを決定し、地方がそれに従うリスクの大きさを肌身で感じたはずである。そんな時代の終焉なのである。


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