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東日本大震災

福島県民の静かな怒りを力に真の「復興」を目指す~福島原発告訴団団長 武藤 類子 氏(5)
東日本大震災
2012年8月 3日 07:00

 「私たちはいま、静かに怒りを燃やす"東北の鬼"です」―昨年9月16日に行なわれた「さようなら原発集会」で、6万人の聴衆に深い感動を与え、歴史的スピーチをした武藤類子氏。今年6月11日、武藤氏を団長とする「福島原発告訴団」が、1,324名の福島県民の悲痛な叫びを原発事故責任者33名の刑事告訴というかたちで世のなかに伝えた。山里の自然に囲まれ静かに暮らしていた1人の女性を、ここまで駆り立てた背景に迫った。

(緒方 克美、大根田 康介)

<元は核兵器の技術>
 近代文明というのが明治以降取り入れられてきてから、消費社会の価値観が自分の幸せの追求と並行で生まれてきました。経済というものが優先されたときに忘れ去られてしまったものがあるでしょう。資本主義は、誰かが儲ければ搾取される人が必ずいるという、誰かを犠牲にして発展する構造が前提にあるわけです。とくに原発に関してはそれが顕著に現れました。

0803_mutou.jpg 原発というのは、立地そのものからすごく差別的です。国が食品の海外からの輸入などで、農業や漁業などの第1次産業だけでは生活が難しくなる状況をつくっていく。そのなかで、大きなお金でもって原発が立地されていったというのは、日本全国の原発立地自治体のどこでも同じだと思います。

 原発で働く人は被曝労働を強いられます。その前の過程を見れば、ウランを採掘する海外の先住民たちがウランの危険性を知らされず、その残さを持ち帰って家をつくり、生活のなかで被曝し続け健康を害しているのです。そうやって精製したあとに発生する劣化ウランは兵器となり、イラク戦争などに使われました。それでまた中東の人たちが健康被害に遭いました。

 原発は、最終的には放射性廃棄物を生みだし、日本では青森県六ケ所村に溜められています。こうしたことだけでも、原発というのは誰かを犠牲にして成り立っていることがよくわかります。福島第1原発の場合、施設が古く小さな事故がたくさん起きていました。そうしたことがありながら、電力会社や政府はきちんとした対策をしてこなかった面もあります。原子力を人間が操れると、本当に原発関係者が思っていたのか疑問です。

 今年5月、私はアメリカのシカゴ大学に行きました。シカゴは、世界で最初に原子炉がつくられた場所です。すでにその原子炉は解体され林に埋められていました。京都大学の小出裕章さんとご一緒させていただきましたが、小出さんに何気なく「どれくらいの発電量だったのでしょうか」と聞いたところ、「武藤さん、これは発電するためでなく原子爆弾を製造するためにつくられた原子炉なのです」と聞かされました。

 たとえ平和利用で原子力が導入されたといっても、元は核兵器をつくるための技術だということを我々は決して忘れてはならないと思います。

(つづく)

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<プロフィール>
mutou_pl.jpg武藤 類子(むとう・るいこ)
1953年生まれ。版下職人、養護学校教員を経て03年、福島県田村市で里山喫茶「燦」を開く。チェルノブイリ事故以来、原発反対運動に携わり、11年は「ハイロアクション福島原発40年」として活動を予定していた。福島第一原発事故発生以来、住民や避難者の人権と健康を守るための活動に奔走している。


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