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東日本大震災

新しい「絆」へ 岩手の経営者を訪ねて(3)~福岡リーダーズ倶楽部
東日本大震災
2012年9月26日 16:41

 若者の就職、という言葉で思い出したことがある。
 大船渡市に来る前に滞在した盛岡で参加した"岩手ネットワークシステム(以下INS)30周年記念総会懇親会"(9月7日)でのことだ。ちょうど、若者の就職支援にとりくんでいる方にお会いしたのだ。

◇  ◇  ◇

 INSとは、岩手県内の科学技術および研究開発に関わる産学官の人々の交流の場だ。科学技術および研究開発に関する知識の修得と普及をめざし、岩手大学の先生を中心に、現在39の研究会 を組織して専門的な活動を続けている。
 ただ、研究者だけで閉じてしまうのではなく、外部団体との交流を盛んに行なっている開放的な会だ。「INSとは、いつも飲んでさわぐ会?」というキャッチフレーズもあるぐらい、飲み会を通した親しみやすい雰囲気のなかでネットワークづくりが行なわれる。
 「たぶん、飲んで交流することが、岩手県人の気質に合っているのだと思います」
 と、隣に座った方が笑って話してくれた。同じような話を何人かから聞いた。

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 県外の団体との交流も盛んだ。春、夏と秋に講演会と交流会を行ない、人のネットワーク作りを行なっている。北海道、山形、関西圏、茨城、山梨、鳥取、山口、高知などの同様の趣旨の団体との交流会を行っており、ちょうどこのときはINS30周年記念の総会が開かれたということで、全国各地から多くの関係団体の人たち200人以上が集まった。

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 福岡リーダーズ倶楽部は、事務局の1人、岩手大学教授の清水健司氏を介してINSとつながっている。

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 清水教授は非常に行動的で人脈も広い。福岡リーダーズ倶楽部が被災地支援を考えたときも、清水教授に随分とお世話になった。INSが柔軟にネットワークを広げていけるのも、清水教授の力によるところが多いとも聞く。
 行政関係者、大学関係者、経営者、それぞれの立場の方から聞いたのだが、INSが経営者をまとめる会として輪を広げていけたのは、大学関係者がキーマンとなって産学官を動かしてくれているからだ、という意見は多かった。
 言い換えれば、行政や産業界との風通しがよくなるようなシステムを持つ学術機関の存在が大きいということなのだと思う。

 これについては、清水教授が2005年に「イーハトーブ、岩手での集まり-INS(岩手ネットワークシステム)の活動を中心に-」という記事のなかでこう記している。

 「岩手県では全国でもユニークな"産官学民"の活動がされていると思う。沖縄から北海道まで、各地に招待されたり、さまざまな団体や研究機関の方々が調査に岩手を訪れる。過年、文部科学省の産学連携手法のモデル事業として『21世紀に向けたINSの新たな展開に関する研究』を実施し、また中小企業事業団の『コーディネート活動支援事業』も行なった。一昨年は、産学連携推進功労者として経済産業大臣賞もいただいた。今後も、地域に密着した産業振興に役立つことができればと願っている。(中略)成果が問われる、慌しい昨今であるが、INSを中心とした岩手での産学官民の連携は、広く多くの人の輪と、そこからの創造を生み出す。さらに今はINSの"次の世代"が運営している。これらこそが、大きな成果と言えるものと、最近では確信を持ち始めた。」

 始まりについてはこう述べている。

 「始まりは、"学"と"官"を中心とする数人の若い"生意気な"人たちの飲み会であった。"自由な雰囲気"があったように思う。次第に仲間(飲み友達)が増え、産学官の講演会を始めました。交流会もその都度行ない、よく飲み、語り合った。7、8年続いた。そして、平成4年、正式に会として発足した。人とのつながりを主目的として、総会をはじめ、夏と秋には公開講座や公開講演会を行なった。」

 このように、岩手のネットワークづくりは、全国に先駆けて評価されていた実績がある。産学官の活動に"民"がつながっているという意識を、事務局側が強く持っているところも特徴的だ。

 大いに賑わう懇親会場を思い出すと、ふとこんな思いが胸中をよぎる。
 「大震災や津波に負けない、人と人とのつながりが、ここには築かれていたのだな」と。
 大震災後、盛んに使われるようになった"絆"は、被災によって生まれたのではない。もともとあったものが、被災することによって、より大切なものとして機能したということなのだと。

 福岡リーダーズ倶楽部の塾頭、綾戸一由氏が倶楽部を発足したときも、INSのイメージが頭にあったのではないか。

◇ ◇ ◇

 懇親会で出会った、若者の就職支援団体の方も、絆づくりに熱心に取り組んでいた。若者とのつながりを作るという点では、新しい絆づくりと称してもいいかもしれない。

(つづく)
【黒岩 理恵子】

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