<NTTデータに見る成功の秘訣>
企業の活力にも従業員のワークライフバランスにも効果があるとされるテレワーク。導入した企業から成功の秘訣を見てみよう。(2月9日、福岡市で開催された「厚生労働省主催テレワークセミナー」から)。
2008年にテレワークを本格制度化したのが、株式会社NTTデータ(山下徹代表取締役社長、本社・東京都江東区)だ。日本電信電話公社データ通信本部がルーツ、従業員数は単独で1万人以上の巨大企業だ。
同社のテレワークは、グループビジョンの実現に向けた「新・行動改革WG」活動の中で、ボトムアップによって導入されたのが特徴だ。ちょうど同社内で自発的提案が落ち込んできた時期と重なり、そのことが従業員の士気にマイナスの影響を与えていることが社員満足度調査でも浮き彫りになっていた。
そこで、社員有志の自発的な提案を、経営幹部が承認し、2006年7月にトライアル(試行)開始、07年8月全従業員対象に拡大し、08年2月本格制度化した。もちろん、対象者には管理者や男性社員を含む。職種ごとの対応可能業務も洗い出し、月8日間の在宅勤務を導入した。
<万全なセキュリティ対策>
導入に当たっては、セキュリティ面に最大限の力を注いで、脅威を1つ残さずつぶしていった。
「ボトムアップだけで終わらせず、経営企画部や人事部などアドバイザリーメンバーを巻き込んだことが重要」
同社リージョナルビジネス事業本部課長代理の北村有紀さんは、セミナーでこう指摘した。
テレワーク勤務の実際は、前日までに上長の承認を受け、当日は前日までに確定済みの自己完結できる作業を自宅で行う。始業時刻に業務開始の報告をし、終業時刻に作業の進捗とあわせて終業連絡する(メール・電話等)。問い合わせ事項などが発生したら、メールや電話でオフィスの上長や同僚・部下とやり取りし個別対応、状況報告する。
在宅勤務を利用することによって、従来ならPTA活動などで半日年休を取得していたケースでも、2時間年休で済むようになった。PTA役員を引き受ける従業員も生まれた。
実施後の調査で、「通勤に関する負担が少ない」(98.7%)、「家族とのコミュニケーションがとりやすい」(66.2%)、「仕事の生産性・効率性が向上する」(66.2%)という効果が確認できた。
<スマートに働くツール>
北村氏は、生産性向上について、次のようなの利用者の声を紹介した。
・成果物をあげなければならないという良いプレッシャーから、日々、明確な目標を設定し効率的に仕事をしている。
・アウトプットについて上司との事前確認を入念に行なうようになり、手戻りが減った。
・仕事の見える化(作業項目の明確化、上司との共有)を意識したところ、段取りよく仕事ができるようになった。
北村氏は、コミュニケーション機会の増大やタイムマネジメント向上にもつながっていると話し、「スマートに働くツールとして活用してみては」と語る。
中小企業とは企業規模がまったく違うが、中小企業は「大企業よりも短期間でスムーズな導入を実現でき、効果や効用も短期間のうちに実現できる」(北村氏)という。
<労務管理上の留意点も>
もちろん、在宅勤務にも、労働時間や安全・健康、労働災害などの法令の適用があり、遵守義務等の把握が必要だ。また、給与や諸手当、人事評価、教育・研修など労務管理上の新たな対応も求められる。
テレワークセミナーでは、特定社会保険労務士の野口邦夫氏(社労士のぐちくにを事務所代表)が、テレワーク実施時の労務管理上の留意点を詳しく解説。また、導入に当たっての課題として、「労働者の自律、管理者の能力向上が重要」と強調した。
≪ (1) |
※記事へのご意見はこちら