東日本大震災から1年が過ぎた。被災地の復興は、いまだ全体的に遅れている。復興予算が適切な場所に使えず、被災地の本当の復興のために生かされていないなど、さまざまな問題が浮上している。宮城県第6区(栗原市、気仙沼市、南三陸町など)選出の自民党・小野寺五典衆議院議員が、被災地の現状を語った。
<適切に使われていない復興予算>
震災後1年経った今も、津波で大きな被害を受けた沿岸部の多くの地域が復旧に至っていない。宮城県気仙沼市では地盤沈下の解消ができず、地場産業の復興は、まだまだ応急処理の段階。すべてが足りていないという状況だ。漁業の再開はできているが、保存する冷凍施設、冷蔵施設の再建が進んでおらず、獲った魚を凍結させたり、加工したりする工場がまだ全然足りていない。道路、港など大規模なインフラの復旧に予算は使われているものの、漁業、水産加工とその流通など地場産業の復旧には予算が回っていない。
小野寺五典議員は「復興の予算を組んであるけど、金庫に入ったまま。査定、査定で、被災地にお金が下りていない。1年経っても気仙沼では地盤沈下した分のかさ上げができていないし、工場を作った後に出る補助金にはなっているけれども、工場や施設を再建する資金には使えない」と復興予算が適切なところに使われていない現状を危惧する。
復興予算がスムーズに地元に流れないのは、各自治体の税収面からも深刻な問題だ。阪神淡路大震災の時と大きく違うのは、神戸市などの大都市圏と違い、自治体の税収が上がっていないということ。今回津波で被害を受けた自治体の税収は固定資産税がその多くを占める。その固定資産税も津波の被害で今は、免除になっている。国に頼らざるをえない。小野寺議員は「予算をもっと地元のためになるように使わせてほしい。そこがスタート。現状のままで行けば、数年経っても予算を使いきれない。財務省は、見せ金だけを積み上げているのではないか、そんな気さえしている」と吐露する。復興を進めるために組んだ予算も、国庫の懐に入ったまま、無駄な予算になってしまう可能性すらある。
2月10日に、復興政策の司令塔として復興庁が発足した。復興のために設置されたはずが、復興予算の振り分けを厳しく査定するだけで、復興第一となるには至っていない。公共事業の執行権限は国交省、農水省などの各省庁が握ったままという構造上の問題もある。岩手県の予算採択率が約94%だったのに対し、宮城県への配分が要望額の約57%に留まっているのもどこかおかしい。村井嘉浩宮城県知事が「復興庁ではなく、査定庁だ」と怒りを露わにするなど、国が地元の切実さを理解しきれていない面があるのも事実だ。いかに、被災地のためになるお金の使い方をするかどうか。適切なかじ取りを急がなければならない。
一方で、漁業には光明もある。震災をきっかけに、漁業者同士で手を取り合い、漁獲から生産、加工、流通、販売までを一貫して行う石巻市の漁業会社「OH ガッツ」など、先駆的な団体も出てきている。宮城県産の養殖カキやわかめが生産者から直接消費者に届くなど、流通経路にも変化が起きている。
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