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コダマの核心

「丸源ビル」の川本源司郎容疑者の逮捕が突きつけた「脱税と節税は紙一重」(後)
コダマの核心
2013年3月 9日 07:00

<銀座の不動産王>
 川本源司郎氏は1932年、福岡県小倉市(現北九州市)の呉服屋「丸源」に生まれた。慶應大学を1年で中退して家業を継いだ。木造の貸家を8階建てのビルに改築したことが貸しビル業に踏み出すきっかけ。呉服屋をたたみ、1960年、飲食ビル賃貸業に転じた。飲食店に家具付きで貸し出す手法が受けて、事業は順調に伸び、福岡・中洲に進出した。

 スナックやクラブが入居するビルには番号が付いている。「丸源1ビル」は北九州市小倉北区京町にあったが、小倉駅前再開発にともない解体された。中洲には「丸源36ビル」「丸源37ビル」などがある。
1972年に東京進出。2年後の1974年に、まだ飲食ビルが少なかった銀座の目抜き通りに10階建てのビルを建てた。80年までに銀座に8棟のビルを所有するまでになった。丸の中に「源」という赤いネオンは、夜の銀座の象徴になった。バブル期には、銀座、六本木や赤坂、福岡・中洲などに約60棟あり、約5,900のテナントが入居していた。丸源は夜の盛り場を制覇したといわれた。

 バブル期には、総資産は1,000億円を優に超えると評価され、資産家として雑誌に度々登場した。映画『地平線』(新藤兼人監督)に8億円をキャッシュで出したエピソードは、今でも語り継がれているほどだ。
1988年には、ハワイの不動産王といわれたヘンリー・カイザー氏の旧邸宅を、4,250万ドル(当時の為替レートで約47億円)という米国の個人住宅としては当時最高額を支払って購入した。この邸宅は、ジャクリーヌ・ケネディー大統領夫人などの賓客が訪れ、華やかな社交舞台としての歴史をもつ。川本氏は毎年100万ドル(約1億1,000万円)の地代の支払いをめぐり、地主と軋轢が生じ、1994年に建物所有権を返却している。

<全財産を美術品につぎ込む>
 バブル崩壊で同業の不動産長者が続々と表舞台から去ったが、川本氏は乗り切った。その理由について、米経済誌『フォーブス』(1999年9月号)で、こう語っている。「金融機関の誘いに乗って採算の合わない割高な土地に手を出さなかったこと」。バブルに浮かれなかったというわけだ。

 現在、六本木や赤坂、新宿のビルはすべて売却。丸源ビルは20数棟、テナント数は800店に減った。飲食ビル事業から撤退し、自らのコレクションを飾る美術館、美術品展示場をやると宣言していた。家族もいないから、全財産を美術品として遺すつもりなのだろう。
 ビルの売却で有り余るほどの潤沢な現金を持っている。それなのに、会社の清算を繰り返す不可解な工作をして、なぜ、国家を敵に回してまで脱税する必要があったのか、今ひとつ、わからない。「節税はゲーム」という感覚は、高いものについたようだ。

【児玉 直】

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