大手旅行会社HIS創業者の澤田秀雄氏がハウステンボスの支援を決めてから、今年4月でまる3年が経過した。当時は誰もが再建は困難だと感じるムードが漂っていたが、さまざまなイベント実施や社内体制の見直しなどで、見事に黒字へ転換。ハウステンボスの新たな可能性を次々と再発掘してきた澤田社長に、3年間の振り返りと今後の見通しについて語ってもらった。
<創業時点では「間違い」>
――創業者の神近義邦さんという方が、強烈な信念でこのハウステンボスの基礎をつくられました。ただ、イベントや社内組織などがついてこず、結局は経営破綻してしまいました。3年間再建に携わられて、澤田社長はハウステンボスの成り立ちについてどのように感じていますか。
澤田秀雄氏(以下、澤田) この場所にこれだけの施設をつくられた創業者の働きは素晴らしいですが、この場所であるという点がそもそも間違いです。創業者の想いはさておき、もしテーマパークをするとなれば、商圏がいかに大きいかが重要になってきます。
ディズニーランドがなぜ2,750万人も集められるかといえば、それは関東圏だけで2,000万人もいるからです。ディズニーといえども、来場者の7割以上は関東圏の人たちなのです。もし仮に、この場所にディズニーをつくっても、1,000万人も来なかったでしょう。まず場所が間違いで、さらに根本的にアクセスも悪いです。飛行機の数が足らない、道路が狭い、駐車場が狭い。これでは2,000万人も集めることはできません。東京では、成田空港や羽田空港で長崎空港の10倍、20倍のフライトがありますし、海外からのフライトも数が違います。
また、ディズニーランドは昔からの世界的なブランド力があります。ところがハウステンボスは、初めてつくるブランドでしたから、最初は大変だったと思います。オランダ村くらいなら商圏はピッタリで良かったのでしょうが、この地にディズニー以上の規模のものをつくろうとしたのが経営面から見れば間違いです。
また、オランダのマネをしても本物は超えられません。昔はなかなか海外に行けない環境でしたから、ここにヨーロッパの街並みをつくろうというコンセプトは良かったのかもしれません。しかし、私が創業したエイチ・アイ・エスが海外旅行の値段を安くしたものですから、実際にオランダへ行く方を選ぶ人が多くなりました。やはり再現したものでは勝てず、オリジナリティが求められる時代になってきました。
――たしかに、日本にいながらにして海外を味わうという施設は、軒並み苦戦しています。
澤田 どうしても本物のヨーロッパなどには勝てませんから。ディズニーは映画に基づいたコンセプトだから差別化できているのです。
<COMPANY INFORMATION>
所在地:長崎県佐世保市ハウステンボス町1-1
設 立:1992年3月
資本金:15億円
売上高:(12/9)152億5,500万円
<プロフィール>
澤田 秀雄(さわだ・ひでお)
1951年、大阪出身。73年、旧西ドイツ・マインツ大学留学。帰国後の80年、(株)エイチ・アイ・エスの前身となる(株)インターナショナルツアーズ設立。96年、スカイマークエアラインズ(株)設立、同年、ウォーターマークホテルグループの会長に就任。その後、証券・銀行業などにも参入。03年、モンゴルAG銀行(現ハーンバンク)会長、07年、澤田ホールディングス(株)代表取締役社長に就任。10年、ハウステンボス(株)代表取締役社長、12年、公益財団法人東京交響楽団理事長、13年、公益財団法人松下政経塾評議員に就任。
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