Net-IB九州企業特報 企業情報、倒産情報
 
 
前へ戻る

シリーズ「官は守ってくれない!」 ~行政テロの脅威~ 行政に頼る時代ではなくなった

[特別取材]

 サンコービルドは、もともと公共工事に対する依存度の低い企業だが、公共工事への依存度が高い企業にとっては、現在の建設業界の置かれた環境はあまりに厳しい。その要因の一つとして、昨年6月に施行された改正建築基準法の影響があることは周知の通りだ。

 2007年度の建設投資は、対前年度比で▲5.5%の49兆4,300億円となる見通しである。当初予測では52.3兆円と、10年ぶりに増加した前年度に続いて増加となる予測だったが、改正建築基準法施行の影響が出たことで50兆円を割り込む結果となった。政府建設投資、いわゆる公共投資は9年連続のマイナスとなる▲3.7%、改正建築基準法の影響をもっとも受けた民間住宅投資が▲12.6%、民間非住宅建設投資は民間土木投資がプラス4.2%となったことでプラス1.6%となる見通しである。

 2008年度の建設投資は対前年度比2.3%増の50兆5,700億円が予想されている。民間住宅投資は前年度に落ち込んだ住宅建設が回復する見通しであり、改正建築基準法施行によりずれ込んだ分もあるため、プラス9.4%の大きな伸びが予想されている。民間非住宅建設投資は民間土木が3.1%の増加となり、全体ではプラス2.2%の伸びの予想だ。ただし政府建設投資は引き続き前年度比マイナスの▲4.3%の見通しとなっており、依然として公共工事の縮小には歯止めが掛かっていない。

 公共工事が縮小していく中で、改正建築基準法は建設業界に大きなダメージを与えた。施行後は建設現場を混乱に陥れ、建設業者のみならず、設計会社、デベロッパー、サブコン、材料業者などの建設関連企業は、進まない計画のために業績の低下を余儀なくされ、倒産の憂き目に遭う企業も出た。これらは今後、消費者の不利益となって個人に対して跳ね返ってくることになる。

 建設投資は、バブル経済崩壊直後の1992年にピークを迎え84兆円を記録した。その後も、バブル経済崩壊後の景気回復策として公共工事が発注されたことで、96年までは80兆円程度の水準を維持してきたが、その後は右肩下がりとなり、ついに2007年度に50兆円を割り込んだ。景気対策の公共工事発注には賛否両論あるものの、少なくとも建設業界には恩恵を与えるものだった。だが、改正建築基準法は建設業界の足を引っ張る以外の何者でもなく、ひいては日本経済の足を引っ張る格好になっている。

 構造計算書偽装問題が起きたことで、行政として何らかの手立てを講じなければならなかったことは理解できる。だが、その手法はあまりにもお粗末であり稚拙なものだ。許認可業種でもあり、行政主導で方針が作られてきた建設業界だが、もはや行政に頼ることはできない時代になった。自力で生き残っていく術を身につけなければ、その企業に未来はない。サンコービルドの新事業への取り組みは、民間工事での生き残りを模索していくという意思表示であり、行政に対する決別宣言とも言えるのではないか。


関連記事
関連する記事:4件
シリーズ「官は守ってくれない!」 ~行政テロの脅威~ 官製談合に関与 (株)大藪組(2008年05月08日 13時05分)
シリーズ「官は守ってくれない!」 ~行政テロの脅威~ 談合事件による大きな余波 大和建設(株)(2008年05月08日 13時04分)
シリーズ「官は守ってくれない!」 ~行政テロの脅威~ 大木町官製談合加担の6社は冤罪?(2008年05月08日 13時03分)
シリーズ「官は守ってくれない!」 ~行政テロの脅威~ 脱・公共工事へ向け、新たな事業展開を開始 (株)サンコービルド 取締役本部長 園村 剛二 氏(2008年05月08日 13時00分)


カテゴリー最新記事