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東日本大震災

最優秀賞受賞・佐藤俊郎氏『東日本復興計画私案』(2)~修正可能な未来へ
東日本大震災
2011年8月 3日 13:00

<もし、震災が起こらなかったら・・・>

 歴史のなかに「IF」は、存在しないが、もし、この東日本大震災が起こらなかったならば、私たちが「社会災害」と認識した事象が、時代とともに急速に顕在化してきたことは間違いない。ならば、この未曾有の自然災害は、縮退過程で起こるわが国の「社会災害」の問題を前倒しで加速化し、早回しのフィルムの様に、極めて冷酷な手段で提起しているのではないか。

 私は、昭和28年に水俣に生まれた。「苦海浄土」に表現された不知火には、温暖な「空気」、豊穣な「海」、肥沃な「土」、そこには、貧しさという経済尺度で計れない別の豊かさが確実にあった。

 地元の中学校を卒業した私の叔父は、将来を嘱望され、窒素水俣工場に就職した。家族の全員が食卓を囲んで「将来は約束された」と祝ったことを覚えている。原発危機の今、生存の根源である「空気」や「海」や「土」が汚染され、規模は異なるといえ、もたらされた結果と発生した社会構造は同じであり、すべてが、どこかで聞いた顛末ではないのか。水俣は、その後、「金銭」という補償問題でも住民が分断された。今回の震災でも、多くの裁判が起こされ、金額や配分で住民感情が揺さぶられ、住民同士の心が分断されていくであろう。震災後の被災者が避難先で、プライバシーが無い窮屈で過酷な生活を強いられる。これも、何度も、何度も映像で見聞きし、繰り返されてきた。

<「想定外」とは>

前例がない、だれも経験した事がない... 前例がない、だれも経験した事がない社会といった表現は、震災以前から、様々な場面で使われてきた常套句である。しかし、本当にそうであるのか。実は、多くの先見的指摘がなされ、先駆的研究が行なわれ、別の豊かさをもった近未来は、確実に選択できたはずである。が、その選択を行なわなかった結果を「前例がない」と言っているに過ぎない。つまり、想定外ではなく、すべては想定内でのことで、その選択肢を選んでこなかった、そんな社会を作り上げて来た、それだけではないだろうか。

 ならば、この「想定外」の震災復興の姿は、3・11の前にすでに存在した、これまでとまったく異なる、合理だけではなく非合理、進歩よりも永遠の循環(内山節)、組織より共同体の「価値観」や「生き様」、そして自然と共にある「技術」などの選択にあると考えても間違いではあるまい。

 若干の創造力をたくましくして、2020年の東日本の復興、あるいは途上の姿からバックキャステイングして、今何を選択し、どの道筋を選ぶかを定めることが可能なはずである。決して復興された姿は想定外の「想像の産物」ではないはずだ。「懐かしい未来」という表現が意味するもの、そして周回遅れの1等賞が、「新たな豊かさの指標」になり得ることも、私たちはすでに気がついている。

 本来、「サステイナブル」という言葉は、今決める事ができないものは今の世代が決定しない、つまり次世代に決定の余地を残す、現世代が未来を先食いしない、という意味も含まれている。あくまで、この「地球」は世代の借り物であり、2020年を思い描くとは、計画の延長に描かれ未来像ではなく、修正可能な未来であるべきだ。

 ここで述べるのは、このような背景をもった「私案」である。

(つづく)

【佐藤 俊郎】

※一部表記の変更を除き、原文のまま。

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<プロフィール>
佐藤 俊郎 氏佐藤 俊郎 (さとう としろう)
 1953年、熊本県水俣市生まれ。九州芸術工科大学、UCLA(カリフォルニア大学)修士課程修了。アメリカで12年の建築・都市計画の実務を経て、92年に帰国。「株式会社環境デザイン機構」を設立し、現在に至る。「NPO FUKUOKAデザインリーグ」理事、「福岡デザイン専門学校」理事なども務める。2010年2月の糸島市長選挙に出馬し善戦するも、7,233票差で落選。11年7月、朝日新聞社「ニッポン前へ委員会」が募集した提言論文で応募作1,745のなかから、最優秀賞に選ばれた。

「佐藤俊郎氏・最優秀作品賞受賞の祝賀会を開催します!」

 8月12日(金)午後6時30分から、ホテルオークラ福岡(福岡市博多区)で、佐藤俊郎氏の功績を讃える祝賀会を開催します。当日は、佐藤氏が受賞論文に関する講演を行なうほか、カルテットによる演奏、一流シェフ自慢の料理などをご用意しております。参加費は、ひとり1万円。先着申し込みとなっていますので、佐藤氏と親睦を深めたい方、最優秀作品賞に選ばれた論文の内容に深く触れたい方は、この機会に!

申し込み・お問い合せは、弊社(TEL:092-262-3388、担当:山下康、楢崎)まで。

■佐藤俊郎氏 朝日新聞社「ニッポン前へ委員会」提言論文 最優秀賞 受賞 祝賀会
<日 時>
8月12日(金) 18:30~(受付18:00~)

<場 所>
ホテルオークラ福岡3階 メイフェア
福岡市博多区下川端3-2
TEL:092-262-1111

<会 費>
1万円

<申し込み・お問い合せ>
(株)データ・マックス(担当:山下康、楢崎)
TEL:092-262-3388
FAX:092-262-3389

申し込み用紙(FAX)はコチラ(PDF)


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