ティムズ販売のハイブリッド製品は、ネジ山にスリットを入れることにより、『ゆるみ』や『もどり』を防止するネジとして考案された結合部材である。世界初となる「緩み止めネジ」は、日本、アメリカ、中国、韓国で特許を取得。また、納入実績には、中小企業のみならず、YKKAPやLIXIL、石川島播磨重工業、ブリヂストンなど業種を問わずそうそうたる企業が名を連ねている。
東京都江東区に本社を構える株式会社ティムズ販売が、「ハイブリッドボルト」などの世界初となる商品を世に出し、躍進した影には実に痛快なエピソードがあった。会社設立と成功までの道のり、そして今回唐津に工場を新設するに至った経緯を、女性経営者である溝部五月社長に話を聞いた。
――内装工事からハイブリッドボルトに移行したわけですが、スムーズに行きましたか。
溝部社長(以下、溝部) いえ、全くダメでした(笑)。最初の6年間は利益などありません。ひたすらサンプルを送り続ける日々を送っていました。
――6年間もサンプルを送り続ける日々ですか!失礼ですが、よく会社の体力が持ちましたね。
溝部 私が女社長だからこそ、持ち堪えたのではないかなと思います。街に行けば美人がたくさん歩いていますが、その全員が女優になっているわけではありません。つまり、売り方次第なのだから、ジタバタせずにしていればきっと事態は好転すると信じていました。不安やストレスを解消するために豪遊や散財をせず、ひたすら我慢の日々でしたが、それができたのは私が女だからこそだと思います。もちろん、従業員のみんなもよくついてきてくれたと感謝しています。
――長く苦しい時期だったと思いますが、そこから脱却したきっかけは何だったのでしょうか。
溝部 ホームページです。当時はまだ、企業でもホームページを作っているところはごくわずかでした。けれど、うちの社員に作成するスキルがある者がいて、かなり早い時期から運営していました。それをたまたま見つけてくださったのが、竹中工務店さんです。いきなり4,000万円規模の発注をいただき、大変ありがたかったです。
――それはまさに大逆転ですね。しかし、いきなりの大きな受注にも関わらずよく生産が追いつきましたね。
溝部 生産は台湾でお願いしました。台湾に限った話ではないのですが、海外に行くと日本人は「どうせ妥協するだろう」と甘く見られがちです。しかし、私は何事も白黒ハッキリするタイプですし、外国人が相手でも妥協はしなかったので、それが良かったと思います。
――その後、右肩上がりの成長を続けられ、今年の春には唐津に工場を新設されるそうですが、どのような経緯で決定されたのですか。
溝部 以前から自治体を含めて工場誘致のラブコールはいただいておりました。それで、あるとき九州に社員旅行で訪れたのです。ついでに唐津の候補地を視察したのですが、そのうちのひとつの物件が、国道沿いにあって社員からも賛成の声があがりました。それから、昨年の東日本大震災の影響もあります。特許商品を扱っているので、万が一会社が被災し、運営できない状態になれば、生産もストップしてしまいます。そうなっては、得意先企業に申し訳が立たなくなると考え、供給義務を全うするためにも東京以外に拠点を置こうということになったのです。
――唐津に展開されたあとはどのようなビジョンを描かれていますか。
溝部 当初は東京本社の下請け業務が中心となりますが、早い段階で独自の販路を確立できればと考えています。工務店さんを中心にアプローチしていきたいと思いますが、ニーズに応えて臨機応変に図面を引き、設計することができるので、幅広く対応していきたいと思います。
一念発起で上京して以来、実に破天荒かつドラマチックな人生を歩んできた溝部社長。しかし、その経歴の裏には卓越したビジネスセンスと勝負勘があったに違いない。記者はインタビューを通じて、そう強く感じた。「女は度胸」と言わんばかりの思い切りの良さと、辛いときにじっと耐え忍ぶ強さを持つ"ハイブリッド"な溝部社長が、地元九州でも旋風を巻き起こすだろう。
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<プロフィール>
溝部五月 5月31日生まれ
血液型:A型 趣味:裁縫 好きな言葉:「ベストを選ぶ」
■株式会社ティムズ販売
所在地:東京本社 〒136-0072 東京都江東区大島7丁目41番8号 東宝ビル1F
TEL:03-5836-3251
FAX:03-5836-3253
URL: http://www.tim-s.co.jp/outline.html
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