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REBIRTH 民事再生600日間の苦闘(8)~決算の困難
経済小説
2012年5月 7日 07:00

<決算の困難>
bi.jpg 2008年3月期には、これまで期末にきれいに売り切っていた販売用不動産が1棟残ることになった。それに09年3月期用の物件の受注ピッチも鈍っていた。通常年度なら100億円は受注残を抱えて新年度に突入するが、今期分はまだ1棟50億円程度しか受注できていなかった。このような環境での08年3月期決算は、監査証明を得るまでにかなりの労苦があった。

 上場企業の決算は、会社がまとめた財務諸表に対して、監査法人による監査を受け、適正意見のついた監査証明をいただかなければならない。
 何らかの事情、たとえば粉飾が発覚した場合や、会社としての経理のチェック体制ができていない場合などで、監査法人の公認会計士が、会社がまとめた財務諸表が適正である、という心証を得られない場合は、監査法人は適正意見を出してくれない。
適正意見のついた決算を公表できない場合、会社は取引所で監理ポストに割り当てられ、そこから一定の猶予期間のうちにきちんとした決算ができない場合は上場廃止となってしまうのである。

 それでは、1棟を売り逃したものの、きちんとした決算をした当社がなぜ、監査証明を得ることに苦労したのか。それは、「継続的企業の前提(ゴーイング・コンサーン)に関する注記」が必要か否かについて問題となったからである。

 それでは、「継続的企業の前提に関する注記」とは何か。

 それは、上場会社が提出する決算短信や有価証券報告書などの財務諸表に記載する注記で、意味としては、「今、当社は事業継続が危ぶまれる状況にありますが、いちおう向こう1年の資金繰りは見通しが立っていますので、この財務諸表は、当社が今後も永続的に営業できる企業であることを前提に作っていますよ」ということである。

 もし、企業の継続性に問題がなければ会社の資産は、普通の方法で計上することになろう。棚卸資産であれば通常の仕入原価で計上するだろうし、賃貸用不動産は投資収益が上がっていれば、簿価で計上するだろう。

 ところが、企業の継続性に問題があるとなれば、その資産は、近々解散して換金することを前提として再評価しなければならない。不動産であれば売り急ぎ鑑定価格まで評価を下げる。什器備品などはほとんどスクラップ価格でしか換金できないため、ゼロ評価だろう。
 まあ、企業というのはすべからく存続していくことを前提としており、あえて倒産を希望する会社などない。このため、実際に倒産していない会社がそのような理由で資産の計上価額をゼロにすることはないだろう。
 だから、会社の資産計上は、継続的企業を前提として行なうのが当たり前なのだが、それを、「問題はありますが、あえて継続的企業を前提として普通のやり方をしていますよ」というのが、この「継続的企業の前提に関する注記」の意味である。
逆にいえば、DKホールディングスは08年3月期決算に関する監査法人の審査会で、すでに企業の存続に疑問を呈された、ということである。

(つづく)
【石川 健一】

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<プロフィール>
石川 健一 (いしかわ けんいち)
東京出身、1967年生まれ。有名私大経済学卒。大卒後、大手スーパーに入社し、福岡の関連法人にてレジャー関連企業の立ち上げに携わる。その後、上場不動産会社に転職し、経営企画室長から管理担当常務まで務めるがリーマンショックの余波を受け民事再生に直面。倒産処理を終えた今は、前オーナー経営者が新たに設立した不動産会社で再チャレンジに取り組みつつ、原稿執筆活動を行なう。職業上の得意分野は経営計画、組織マネジメント、広報・IR、事業立ち上げ。執筆面での関心分野は、企業再生、組織マネジメント、流通・サービス業、航空・鉄道、近代戦史。


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