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REBIRTH 民事再生600日間の苦闘(10)~砂を噛む日々の始まり(中)
経済小説
2012年5月 9日 07:00

 売上成長を追求すると、どうしても銀行借入が先行して増加して利払いが増加する。このため、売上成長を続けるためには、粗利益率も少し改善しないと、いつまでも自己資本が増加しないこともわかった。
 だから、粗利益率も漸次に改善することにした。これらの結果、DKホールディングスは、弱点だった自己資本比率も少しずつ改善した。

 しかし、2007年に欧州で始まった金融危機は、半年をかけて極東の我が国にも津波となって襲ってきた。こうして、当社も新興デベロッパーの苦難に直面させられたのである。

bi_4.jpg 08年3月期は、先に述べたような状況で、1棟を売り逃したものの、他の物件はすべて予定通り売却できた。これは、買手も金融危機が波及する以前に資金の手当を済ませていたからである。ところが、07年暮れには、不動産ファンドが新たに投資用の資金を銀行借入にて調達することは困難な状況となっていた。

 なかでも天神南部、国体通り沿いの今泉の物件は、 あるメガバンクからの強いプッシュにより06年に仕入れたものだった。資金も当該メガバンクから32億円を借り入れていた。

 もともと1階はテナントで印刷会社が入居しており、2階から上は立体駐車場だったが、このテナントを立ち退かせたうえで商業ビルに建て替えることを意図していた。ところが、営業担当の伊崎常務がこの立退を担当者に任せたままで時間を空費していた。
 そうしているうちに当初の借入予定期間を経過してしまった。このため、やむを得ず07年以降、3カ月ごとの借換を図ってきたのだが、07年12月の切替は相当に苦労し、融資承認が出たのは返済期限の前日だった。

 この12月の借換を前に11月の取締役会でこれを諮った際、私はこう述べた。
 「この今泉の32億円は当初の期限を過ぎてから3カ月ごとの借換ができていますが、もう2回目です。営業部からは、いまだ明確なスケジュールの提示を受けておりません。しかし、銀行もこうも予定外に期間がかかることはそう簡単には受け入れませんので、本プロジェクトに対する方針は早々に決定していただきたい」
 
 これに対して伊崎常務は以下のように答弁した。
 「我々はこの物件の商品価値を上げるために努力しているんですよ。そこをなぜ銀行は見てくれないんですか」と。
 これに対し私はいら立ちを隠せなかった。
 「そんなことはきちんと見ていますよ。ただ、どんなに商品価値が高くでも、それが所定の期間内に売れて、資金を返済できなかったらどうにもなりませんよ」

 12月に入り、ある米系投資銀行の不動産投資部の責任者が黒田社長と伊崎常務を訪ねてきた。伊崎常務は、今泉の物件を開発後、この投資銀行に売ることを予定して事を進めていた。ファンドとの取引ということで、売買を担保する文書などがあったわけではないが、この頃のファンドへの1棟売は皆そういうやり方だった。そうしていたところ、この投資銀行は、12月の末になり、今泉物件の売買を前提としてこれまでしてきた交渉経緯を反故にして価格を値切ってきたのである。

 こうして、当社もファンドバブル崩壊の端緒を感じたのである。
 これを異変と感じた黒田社長は、即刻当該投資銀行との商談を打ち切り、欧州勢など、別のファンドへの売却を目指すよう営業に指示した。

(つづく)
【石川 健一】

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<プロフィール>
石川 健一 (いしかわ けんいち)
東京出身、1967年生まれ。有名私大経済学卒。大卒後、大手スーパーに入社し、福岡の関連法人にてレジャー関連企業の立ち上げに携わる。その後、上場不動産会社に転職し、経営企画室長から管理担当常務まで務めるがリーマンショックの余波を受け民事再生に直面。倒産処理を終えた今は、前オーナー経営者が新たに設立した不動産会社で再チャレンジに取り組みつつ、原稿執筆活動を行なう。職業上の得意分野は経営計画、組織マネジメント、広報・IR、事業立ち上げ。執筆面での関心分野は、企業再生、組織マネジメント、流通・サービス業、航空・鉄道、近代戦史。


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