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REBIRTH 民事再生600日間の苦闘(52)~すべてを水に流す
経済小説
2012年7月 9日 07:00

<すべてを水に流す>
 だが、その夜、家に帰って冷静に考えた。
 私の戦略目標は、こんな些末なことでX社とことを構えて争いに勝って溜飲を下げることではなかった。目標は、良心の呵責を感じずに再生に向けて働ける環境をつかむことにある。

 そのためには、X社とことを構えることに意味はなく、あくまでも退社は円満であるべきと考え、納得はゆかなかったが、この退職日繰上げの申入れを受けた。
 一方、私の業務スケジュールに「業務引継ぎ」とあるのを見て、心が通じていた何人かの人は、私の退職がとても残念である旨声をかけてくれたのはなぐさめになった。

 このようにX社は離職率の高い企業で、私もその例外とはなりえず短期退職で履歴書を汚すことになってしまった。

bgns_11.jpg ただ、弁護するようだが、このような企業でも現場の一般社員にとってはそれほど居心地の悪い会社ではなかった。
 配送部門には身の丈に合った仕事と割り切って善良に勤務する従業員が多数存在し、永年勤続している人もいる。女性の事務員も、補助職と割り切れば残業も少なく働きやすい職場だったようだ。
 配送部門や事務員の待遇は仕事相応のものだったが、この範囲の人たちに対しては、会社もきちんとした処遇をしていたように思う。

 営業や幹部は上記のような事情で採用しても次から次へと辞めていってしまい、結果として新卒者は5年でほとんどいなくなってしまう。しかし、そのなかにも例外的に「結果を出」して課長クラスくらいまで昇進している人はいたが、このような人たちは確かに有能だった。

 こういう人たちが少しでも増え、社長も旧弊を改め、権限委譲と部下の育成を進めることによって、いずれはX社の経営を担うような人材が輩出されることを念願してやまない。何しろ、X社は福岡では貴重な100億企業なのだから。

 それに、X社は私が、勤務時間外とはいえ、非常勤取締役としてのDKホールディングスの仕事を引きずっていることを、了解して雇用してくれた。これにより、私は生計を維持しながらDKホールディングスのことを全うすることができた。そのことだけでも感謝に値する。

 だから、X社で屍に鞭打たれるような仕打ちをされたことも、これっきり水に流すことにしよう。

(つづく)
【石川 健一】

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▼関連リンク
・REBIRTH 民事再生600日間の苦闘(1)~はじまり

<プロフィール>
石川 健一 (いしかわ けんいち)
東京出身、1967年生まれ。有名私大経済学卒。大卒後、大手スーパーに入社し、福岡の関連法人にてレジャー関連企業の立ち上げに携わる。その後、上場不動産会社に転職し、経営企画室長から管理担当常務まで務めるがリーマンショックの余波を受け民事再生に直面。倒産処理を終えた今は、前オーナー経営者が新たに設立した不動産会社で再チャレンジに取り組みつつ、原稿執筆活動を行なう。職業上の得意分野は経営計画、組織マネジメント、広報・IR、事業立ち上げ。執筆面での関心分野は、企業再生、組織マネジメント、流通・サービス業、航空・鉄道、近代戦史。


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