<結束力の強い組織とは>
組織で戦うスポーツにおいて、個の強さで勝てないのであれば、チームワークで相手を上回ることは、勝つために必要不可欠な要素だろう。結束力が強い組織とは、どんなものなのか。そのキーワードを挙げていくと、「連帯感」、「自分を捨ててでもチームのために尽くせる」、「密にコミュニケーションが取れている」、「お互いが、お互いをよく知っていること」、「活気がある」、「リーダーへの信頼感、メンバーへの信頼感があること」などが挙げられる。
佐々木監督は、「自分がやるのは大まかな方向を決めるだけで、選手たちの自主性に任せている。選手たちだけのミーティングも多くやっている」と話している。
オリンピック優勝という組織の大目標を定め、一人ひとりにそれを遂行するための課題を与えた。選手たちが自律的に、戦術的なアイディア、チャンスの時のイメージ、ピンチになった時の対策を、自ら考えたことで発想力のあるチームに育った。組織の課題、個人の課題を自分たちで探し出し、一つずつ段階的にクリアしていった。
チーム強化のためには、「若手にも出場機会がある」、「目標遂行のために、上(先輩、ベテラン)から下(後輩、若手)にアドバイスがし合える」、かつ、「下から上へのプレッシャーがある」という状況が好ましい。それに加えて、「組織内で、適切な競争が起こっている」ことも欠かせない。ワールドカップ以降のなでしこジャパンは、その条件のいずれにも当てはまる。
<チームとしての成長力>
昨年のワールドカップで優勝し、各国から研究され、マークが厳しくなった。世界の強豪の研究やマークに対して、それを上回る進化をしなければ、勝ち切ることはできない。
なでしこジャパンが組織力を磨き続けた過程は、PDCA(plan-do-check-action)のサイクルにも似ている。持ち前のパスサッカーを研究されながらも、目標を立て、実行し、プレッシャーをはねのけ、自分たちのサッカーを点検し、再構築し、改善するというプロセスを踏み、チームとして成長。目標としていた五輪決勝の舞台に立った。そのことは、決勝でもゴールを奪ったFWの大儀見の成長に特に顕著に見られた。昨年のワールドカップ時点では、1得点と決定力に物足りなさを残していたが、今回のオリンピックでは、肉体的強さ、決定力も格段に上がり、準々決勝からの3試合連続ゴールやポストプレーで強烈な存在感を示していた。ワールドカップ以降も、全員が目標を共有し、心血を注ぎ、世界レベルで勝てる力を身に付けてきた結果が、銀メダルだったのではないか。
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