<打たれ強さと運!?>
準々決勝、準決勝では、驚異的な粘りの守備を見せた。フランスには、合計37本、ブラジルには、合計21本のシュートを打たれながら、許した失点は、フランスへの1点だけ。
決勝のアメリカ戦では2失点があったものの、準決勝では、親善試合で敗れたフランスの猛攻にさらされながらも致命的な失点を許さず、打たれ強く、勝ち切った。試合後、佐々木監督は「幸運もありましたけど...」とコメント。反則で与えたPKを相手が外すというラッキーがあった。打たれ強く、粘りのある組織には、運も味方するということか。
しかし、決勝では、逆に、宮間が蹴ったフリーキックが、ペナルティエリア内でアメリカのDFヒースの腕に当たったが、PKにはならず、そのまま試合が進むというアメリカにとっての幸運が...。ウォール・ストリート・ジャーナル(日本版)によると、この疑惑のハンドに関して、「日本のフリーキックをヒースが阻止した。しかし、米国にとって幸運なことに、ボールがヒースの腕に当たったのに審判が気づかず事なきを得た」と、"運"も勝敗を左右することに触れている。
<なでしこの危険察知力>
なでしこジャパンの組織力のすごみは、「危険察知能力」にもある。11人が連動して動き、失点の危険になりそうな兆しを察知し、その兆しをつぶしていく。
組織的な守備、攻撃で数的有利を作り、相手個人の特長、長所を消していく。攻撃が守備になり、守備が攻撃になるという細かい連動は、相手に力を発揮させず、かつ、自分たちの個の力をフルに発揮する。トップクラス同士の争いは「相手の長所の消し合い」でもある。アメリカ戦では、「ミドルシュートも強烈」という相手MFロイドの良さを消し切れなかった。そのことが2点目の失点につながってしまった。
ブラジル戦では、劣勢でありながらも、カウンターを浴びせ、粘り切ったら勝っていた。フランス戦では、猛攻を受けながら、しのぎにしのいだ。フランスからすれば、「なぜ勝てなかったのか」不思議なぐらいだろう。
選手たちからは、「全員」「みんなのゴール」「みんなが走り続けた結果」という言葉が口から出た。すべてのメンバーが、集中力を切らさず、足を止めずに走り続けた。なでしこの長所を出した結果だろう。猛攻を耐え切ったフランス戦は、組織に所属する多くの日本人が忘れかけている「何が何でも勝利をもぎ取る魂」とでもいおうか、泥臭い勝利だったのではないか。
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