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REBIRTH 民事再生600日間の苦闘(76)~ゼロ成長経済のもとで
経済小説
2012年8月16日 07:00

<ゼロ成長経済のもとで>
sora_26.jpg 私のように勤務先の倒産に直面するケースは決して少なくない。90年代以降、上場会社や業界トップクラスの企業の倒産も多く聞かれるようになり、たとえ一流大学を卒業したビジネスマンといえども倒産と無縁でいられない。

 90年代初頭まで、大学を卒業したら一流企業に就職するのが当たり前だった。
そうすることによって、一生の安泰を得ることができた。少なくとも私が社会に出た1989年時点では、誰もがそう信じて疑わなかった。

 ところが、90年代半ばから、わが国経済それ自体の成長が止まった。経済成長が止まることで、静かな水面に波紋が広がるように、そこかしこに矛盾が生じてきた。

 最初の矛盾は、既存大企業の新卒採用に現れた。
 以前であれば新卒者100人を採用していた企業が、20人しか採用しなくなった。
私は、新卒として大手スーパーに入社したが、私の代の新卒社員は、大卒総合職だけで250人いた。その他、地域限定勤務の短大卒と高校卒を含めると毎年1,000人の新卒者が入社していたが、これが総合職100人程度に圧縮され、不足はパートタイマーで補うようになった。
 また、子会社の採用枠も、以前は気前よく本社で採用して子会社に出向させていたのが、当初より子会社で採用して人件費を落とすことが意図されるようになった。

 そうしたことにより就職氷河期といわれる時代が続いたのが95年以降である。
 こうして氷河期に直面し、正社員の職に就けなかった人たちは、アルバイトや派遣社員として働くようになった。
これらの人たちは最初は若い人たちだったので、当初は、ボーナスはないが時給は正社員より多い、というような人も多く、その問題はあまり目立たなかった。
 しかしゼロ成長が20年続き、今では40代のフリーターも当たり前になった。

 特に大企業の場合、既存の社員を解雇するのは困難である。このため、既存社員が企業内にとどまり、そのしわ寄せはいつも若い人に押し付けられる。

 このような変化の結果、企業の中の人員構成にも変化が現れてきた。
 一言でいえば、ピラミッド型のヒエラルキーだった組織が、情報システムの進化の結果、ごくわずかの幹部に数多くの一般社員がぶら下がるようなフラット型に変化してきたのだ。

 以前の年功序列の仕組みの中で大半の従業員にそこそこのポストを与えられたのは、売上が拡大し、それに合わせてピラミッド型の組織が拡大することで管理ポストが増えてきたからだ。
 しかし、企業の成長が止まれば、ポスト数も横ばいになる。そのうえ組織のフラット化が進めば、中間管理職のポストは大幅に減少する。M&Aも、特に後方管理部門のポストが減少する大きな要因だ。

 このように、売上成長が見込めいなかで組織が変化することで、ほんの一握りの社員は、30代で課長、40台で部長というように処遇されるが、他の7割は、最後まで課長未満の役職で過ごすことになる。そこには若手社員との猛烈な競争がある。
 その結果、年功的といわれていたサラリーマンの給料も、1990年代の10年間であっという間に、部長はいくら、課長はいくら、という役割給に変わった。この結果、部下を持たない資格上だけの管理職は、年齢に関係なく一定のところで担当者の年収で頭打ちとされるようになった。

(つづく)
【石川 健一】

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<プロフィール>
石川 健一 (いしかわ けんいち)
東京出身、1967年生まれ。有名私大経済学卒。大卒後、大手スーパーに入社し、福岡の関連法人にてレジャー関連企業の立ち上げに携わる。その後、上場不動産会社に転職し、経営企画室長から管理担当常務まで務めるがリーマンショックの余波を受け民事再生に直面。倒産処理を終えた今は、前オーナー経営者が新たに設立した不動産会社で再チャレンジに取り組みつつ、原稿執筆活動を行なう。職業上の得意分野は経営計画、組織マネジメント、広報・IR、事業立ち上げ。執筆面での関心分野は、企業再生、組織マネジメント、流通・サービス業、航空・鉄道、近代戦史。


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