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REBIRTH 民事再生600日間の苦闘(77)~残酷物語からの転換
経済小説
2012年8月17日 07:00

 私が1989年に新卒で入社した大手スーパーも同じ道を歩んだ。

b_10.jpg まだ若い企業であった当該スーパーでは、本社の管理職クラスは40歳前後で年収1,000万円くらいの高年収を謳歌しており、私自身も40歳までの昇格には何の疑念も抱いていなかった。
 が、10年経ってみると、私も周囲の同期生も10年経過しても、みな担当者のまま。新卒当時の上司だった40歳台の部長連中も、そのまま10年歳を取って役職はほとんどいっしょという様相になった。

 それでも、官庁や大企業など大組織を持つところはいい。あふれる中高年を天下りさせたり子会社に移籍することにより、本体の年齢構成の若さを維持できる。
 私が在籍した大手スーパーでは、90年までの成長がぱたりと止まったため、90年代半ばから大々的な関連会社への人材放出を実行した。この結果、50歳代で店長や管理職として脂の乗り切った人々が子会社に追いやられていった。
 地方のスーパーなど同業子会社に行けた者はまた幸運だったが、そうでない者は、外食や警備、消費者金融などの子会社にも送り出され、レストランや消費者金融の店長、各店に配置された警備会社の隊長などに充てられた。
 
 これだけでも残酷物語というに十分だが、社員を出向させる先のないところは、人員を振り落すしかなかった。良くて希望退職、悪ければ指名解雇や倒産という形で。

 いっぽうで2000年くらいから新規に上場した新興企業は、そこそこに伸びた。
 このため若手のホワイトカラー層は、こういう企業群にある程度吸収された。より現業的な仕事を求める層は、介護分野の需要の伸びによりある程度吸収された。
 旧来大企業が支配してきた業種でも、外資系企業が現れたり、技術革新とともにこれまでになかった業種も伸びた。金融・不動産や、IT関連の広範な業種がその典型である。いろいろな形で大企業から溢れたサラリーマンのうち条件の良かった層は、そういう会社に吸収されていった。

 ただ、統廃合された地銀から押し出された管理職が、みな外資系金融機関に転職できたわけではない。建設業などから溢れた層がすんなりとIT業界に転職できたわけではない。
 大まかにいえば、製造業や建設業の雇用が減少し、その分、介護現場等の雇用が増加した。介護現場といえば介護保険で報酬が賄われるものの人件費がきちきちの業界である。
 こうして、平均的なサラリーマンの給料はどんどん下がっていった。

(つづく)
【石川 健一】

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<プロフィール>
石川 健一 (いしかわ けんいち)
東京出身、1967年生まれ。有名私大経済学卒。大卒後、大手スーパーに入社し、福岡の関連法人にてレジャー関連企業の立ち上げに携わる。その後、上場不動産会社に転職し、経営企画室長から管理担当常務まで務めるがリーマンショックの余波を受け民事再生に直面。倒産処理を終えた今は、前オーナー経営者が新たに設立した不動産会社で再チャレンジに取り組みつつ、原稿執筆活動を行なう。職業上の得意分野は経営計画、組織マネジメント、広報・IR、事業立ち上げ。執筆面での関心分野は、企業再生、組織マネジメント、流通・サービス業、航空・鉄道、近代戦史。


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