<リーダーへの絶大な信頼>
決勝戦直前の会見で、キャプテンを務めた宮間は、「監督についてきてよかった」と言い、FWの大儀見は「監督はわたしたちを成長させてくれ、進化させてくれる存在」と、話した。選手たちは、佐々木監督に絶大の信頼を寄せている。
佐々木監督が、組織の目標達成のために、「すべてを注いできた」ということを、組織のみんなが知っているからだろう。さらには、佐々木監督とともに組織を作ってきたことで、選手たちみんなが、自分たちが世界と戦えるようになったという実感を持っており、ワールドカップで優勝という実績を挙げた。成功体験を共有したことも、なでしこジャパンの結束力の底にある。
<人柄によるリーダーシップ>
2012年の元旦のテレビ番組でのインタビューに答えた佐々木監督は、「謹賀新年だけに、金が信念!」と、だじゃれを言うなど、ユーモアにあふれることでも知られている。
近代組織論の祖、チェスター・バーナードは、その著書「経営者の役割」のなかで、リーダーに関して、要約すると、「リーダーに求められるのは、プロセスを説明する力。リーダーシップとは、信念を創造することによって、人々の協力的な意思決定を鼓舞する力」と、定義している。さらにリーダーに必要な要素として「勇気」を挙げており、粘り強さ、短期的に組織が悪化しても信念を曲げないことが重要だと述べている。
ワールドカップ優勝後、各国からのマークが厳しくなり、周囲からのプレッシャーも強くなったが、佐々木監督は「金が信念!」を曲げず、メンバーにその目標に向かって努力し完遂することを課した。結果的には、その下の銀メダルだったが、それまでの過程を勝ち切り、決勝の舞台に立ち、連携する強さを世界で披露した。
五輪後に契約が完了する佐々木監督は、代表監督を勇退することを表明。支柱が退いた後で、どのように強さを継続していくかが、新しいなでしこの課題だ。
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