19日に投開票(14日告示)が行なわれた任期満了に伴う那珂川町長選挙の投票率は、前回(08年8月執行)の44.54%から8.82ポイント下回る35.72%という結果になった。記録が残っている1968年以降で最低の投票率であり、本シリーズ第3回で指摘したお盆シーズンの14、15日を5日間の選挙期間に含んでいることの影響がうかがえる。
自然に恵まれた福岡地域のベッドタウンという特性を持つ同町の町長選挙は今回、地元出身の現職と町外からの転入者である新人の元町議の一騎打ちであった。結果は、現職・武末茂喜氏(59)が8,379票を獲得して再選。新人・森田俊文氏(48)は4,996票とおよばなかった。
今回、配布されていた両者の後援会討議資料などを見ると、森田氏はローカルマニフェスト「住民の皆様との約束 2012年8月」で、分野ごとの課題について新たな施策とその実施時期を具体的に明記していた。一方、武末氏は、行財政改革の推進・生活環境の向上・学校教育の充実・文化・スポーツの振興・子育て支援・高齢者支援など挙げているものの、その内容に具体的なプランが書かれていなかった。すでに1期を務め、町の課題や方針に関連するデータなどを知っているはずの現職としては意外なことである。政策論争を挑もうとした森田氏は肩透かしをくらったかたちだ。
今回、敗れた森田氏は、同町の将来像(ビジョン)についても多くの資料をネット上に公開していた。それは、しがらみを断ち切り、根本から町のしくみを変えていくという改革志向のものであった。
高齢化社会のなかでの地方交付税の減額、道州制による市町合併など。同町でも直面する新たな課題は少なくはない。早急なインフラ整備、人的資源の育成といったハード・ソフト、両面での整備を急ぐ必要があるとしていた。しかして、一方の武末氏は、資料を見る限り、町の将来像にさえ触れていない。
同町の人口は、7月31日現在で4万9,986人(19日の当日有権者数は3万7,836人)。残念ながら、そのうち約1万3,000人が選挙において意思表示をしていないという結果であった。これからの地方自治を考えるうえで、選挙期間の設定および投票率、選挙の内容など、1つの実例として同選挙の『現実』を参考にするべきと考える。
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