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チャイナビジネス最前線

中国カントリーリスクシリーズ(19)~政熱経冷状態にある日中ビジネスをいかに再構築するか(前)
チャイナビジネス最前線
2012年11月19日 15:24

 「日中国交正常化以来最悪の関係です――」尖閣諸島の国有化をめぐり日中関係は1972年の正常化以来の深刻な冷え込みを見せている。この40年日中間には様々な懸案が浮上してきたが、小泉首相による靖国神社参拝が問題視されても民間交流は継続されていた。ところが今回、記念すべき日中友好40周年の式典すら中止になる状況にある。対中ビジネスを手掛けてきた企業の中には問題の長期化を憂う声は少なくない。中国を専門に扱う専業旅行社である(株)西日本日中旅行社の代表取締役、治田敏氏が尖閣諸島問題発生後の日中関係の在り方について語った。

<中国人は面子を重んじる国民性>
 そもそもの問題の発端はさかのぼること、半年前、日本時間で4月17日にアメリカワシントンにある保守系シンクタンク「ヘリテージ財団」で石原東京都知事(当時)が講演したことである。「東京都は尖閣諸島を買うことにした。東京が尖閣を守ります」

 この発言に民主党政権下での外交や内政に不満を持つ日本国内の保守層は拍手喝采となったが、当然ながら中国側の反発は高まった。尖閣諸島が日本固有の領土であることは疑うべくもないが、鄧小平氏が1978年、「後の世代の知恵に任せよう」と棚上げ論を主張してきた経緯もある。2004年には中国海軍所属の潜水艦が周辺水域を航行するなど領有権を行動で示す動きを活発化させ、紛争の火種となってきていた。ここにきて石原氏が国民有志の寄付を募り、地権者から買い取る方針を打ち出す展開にあわてた政府が日中関係の悪化を恐れたこともあり国有化に踏み切ったのである。

 しかし、そのことによって火に油を注ぐ結果となってしまった。日本の尖閣諸島国有化に反発して中国各地で反日デモが発生。NET‐IBでも報じたようにデモの域を超えた暴行や略奪行為も行われた。この最中、9月27日に北京の人民大会堂で、中国共産党政治局常務委員を務める賈慶林全国政治協商会議主席と、訪中した日本国際貿易促進協会会長の河野洋平前衆院議長や日本経団連の米倉弘昌会長などとの会談が行なわれたが、この席上で賈氏は日本の対応を厳しく非難する一方で「日本各界が大局から出発し、中国とともに努力して中日関係を健全な発展の道に戻すことを希望する」と関係修復を望んでいるとも表明している。

hatta_1.jpg こうした状況について治田氏は「日本と中国の認識の違い」があると指摘する。前提として踏まえておきたいのは、中国人は面子を重んじる国民性であるということである。日本にも「体面を守る」、「目上の顔を立てる」、「世間体を失う」といった言葉も概念もある。面子という言葉はもともと中国から伝わった言葉である。しかし、「中国人には、日本人のそれを遥かに超えるものがある」という。

 中国語に「他譲我没有面子」という言葉がある。これは「彼は私の面子を潰した」という意味だが、中国側にとってみれば今回の石原氏の行動とそれを受けての日本政府の対応はまさに"他譲我没有面子"、【中国の面子を潰した】ということになるのである。

 中国人にとって面子は序列や地位と深くかかわり、法や規則より重んじられる。命よりも大事にする価値観だということについて日本側の理解は隣国として長くつきあってきたにもかかわらずあまりにも浅い。日本人には広く共有されている「今までの経緯は水に流して」や「心機一転」という考え方は中国では通用しないのである。
 外交政策以前に、面子を潰されたという思いが中国側の対日姿勢を硬化させたことは明らかだろう。

 同時に中国側も日本国内おける領土意識の高まりを深く認識していなかったという面はあると思われる。長らく日中友好のムードで接してきた(と認識している)日本人にしてみれば、自分たちの先祖が祀られる靖国神社への参拝に対する度重なる干渉や軍事力増強、反日デモの高まりなどを見て、どんなに過去の反省の弁を述べ、友好路線で向き合っても居丈高に踏み込まれるばかりだとの反発が広がっている。外務省をはじめ日本政府の立場は、民主党政権下でも前の自民党政権下でも、穏便に済ませたいというのが本音だった。近年、そのことに不満を持つ国内世論が急速に高まってきた。とくに若い世代の対中感情は好意的ではなくなりつつある。その原因は、治田氏はツイッターなどインターネットの普及にあると見ている。ネットが両国のナショナリズムを煽るツールとなっているのだ。もはや、日本にとっても中国にとっても国内世論を背景に、お互い引くに引けないところまで達しているのである。

(つづく)
【近藤 将勝】

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