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YOCASOL破綻で問われる救世主・ドーガンのちから(3)
特別取材
2013年2月22日 11:35

 「あそこが倒産してしまったら、地元の雇用に大きな影響がおよんでしまう。何とか再生させたい」――大牟田市に身を置く政治関係者のこうした想いは届かず、YOCASOL(株)は今年2月に民事再生手続を廃止。破産手続へ移行する見通しとなった。スポンサー候補の選定が難航したためという。その背景には何があったのだろうか。

<メディアに責任?疑われる能力>
 「スポンサー選定が難航しているのにはもっと別の理由があります。わかりやすく言えば、メディアの方に重い責任があるってことです」と自身のブログに託したドーガンの森大介社長。その意図はマスコミによってすっぱ抜かれた。ヤマダ電気スポンサー説がリーク記事と捉えられたと考えていると推測される。
 このような諸事情を勘案したとしても、責任をメディアだけになすりつけるのは正しい方法なのだろうか。「民事再生に至る前にもっと早く手を打てなかったのか」「そもそも、ドーガンにスポンサーを探す能力が不足していたのでは」―といった見解を持つ人もいるだろう。

 現代表取締役の森大介氏は同社の創業者でもある1967年熊本県で生まれ、東京都立戸山高校、中央大学法学部法律学科を卒業後、91~98年まで日本長期信用銀行調査役(吉祥寺支店・大阪営業第四部・金融市場営業部)に所属。98~04年までシティバンク、エヌ・エイ福岡出張所所長を務め、04年8月にドーガン・アドバイザーズの前身である(株)コア・コンピタンス九州を設立し、独立した。
 「九州随一のブティック型インベストメントバンク」を標榜し、同社は金融業界に身を置く九州出身の人材を結集。05年9月にファンド運営子会社(株)CCQプリンシパル・インベストメントを設立。06年10月にはコア・コンピタンス九州をドーガン・アドバイザーズに、CCQプリンシパル・インベストメントをドーガン・インベストメンツにそれぞれ商号変更した。

 地場経済の活性化を強い目標として、これまで(1)ベンチャー/第二創業支援を目的とした「チャレンジ九州・中小企業がんばれファンド」、(2)事業承継を目的とした「九州ブリッジファンド」、(3)事業再生/再編を目的とした「九州BOLEROファンド」、(4)農業関連の「アグリクラスターファンド」の4つのファンドを組成し、九州各地の企業を支援してきた。そのうちの1社は、「ドーガンさんには大変お世話になっています。とくに経営に口を出されることもありませんし、支援していただいた資金は有効に使わせていただいております」という。
 話は少しさかのぼるが、YOCASOLがリーマン・ショックの影響を受けていた頃の08年11月、福岡市のマンションデベロッパー(株)ディックスクロキが民事再生法を申請した。黒木透氏が創業し、かつては約268億円の売上高で地場経済を牽引していたが、世界不況の波には抗えなかった。
 そうしたなか、九州BOREROファンドが出資するかたちで新会社(株)DIX(現・(株)Good不動産)を設立。ディックスクロキの賃貸マンション管理事業を、約2億5,000万円でDIXに譲渡することが09年4月に報じられた。それから8カ月後の同12月、今度は九州BOREROファンドが有していたDIXの株式(管理物件約7,000戸)を、LPガス販売の(株)明治産業に約2億8,000万円で譲渡した。現在、Good不動産は明治産業の子会社である。

dix.jpg 「実は私が自ら引受先を探した」と、12年11月に新生(株)ディックスクロキを設立した黒木透氏は語る。「当時、森氏が引受先を見つけるのに難航していることは知っていた。彼とはシティバンクにいた頃から面識があり、ディックスクロキ時代も親交があったから、何とか協力しようと思っていた」。
 結果として、明治産業は黒木氏の尽力で決まったという。「あれで森氏はそれなりに利益を得ているはずだが、譲渡決定後は一言もお礼の連絡がなかった。あまりにも無礼だと感じたから『もう顔を見せるな』と伝えた」と、黒木氏は憤りを隠さない。そして、こうも付け加えた。「彼にスポンサー候補を見つける能力があるとは到底思えない」――。

 無論、この1件だけですべてを語ることはできないが、直接案件に関わっていた人物の評価がこのようであれば、ことスポンサー選定能力という面においては疑問符が付くとしても仕方ないだろう。
 ドーガンの残してきた実績は、地場企業の活性化や雇用確保という点では評価されるべきものがある。しかしその一方で、YOCASOLのように資金援助や多少のアドバイスだけではどうにもならない冷徹な現実があることも浮き彫りとなった。

 ファンドには、いわゆる転売目的のハゲタカや、組織内部に人材を送り込んで支援するハンズオン、ベンチャー企業への出資が中心のベンチャーキャピタルなどいくつかの形態がある。森氏は自身を「地方の企業の『参謀』」(今年1月5日付ブログ)と表現している。それだけ「地場企業にもっと活躍の場を与えたい。それを陰で支えたい」という想いが強烈なのだろう。
 それならば、ファンド案件は匿名性が必須なのは重々承知しているが、今回のYOCASOLの件や過去に失敗したと思われるような事例に関してはきちんと評価を示すことが必要なのではないか。さかえ屋の1件でも、株式の無償取得は西日本シティと結託した不自然な処理だという見解もある。地場経済への貢献と利ザヤ追求の狭間で揺れ動いているように見えるのは、筆者だけであろうか。

(了)
【大根田 康介】

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<COMPANY INFORMATION>
■YOCASOL(株)
代 表:市來 敏光
所在地:福岡県大牟田市四箇新町1-5
設 立:2007年7月
資本金:3億8,000万円

■(株)ドーガン・アドバイザーズ
代 表:森 大介
所在地:福岡市中央区大名2-4-22
設 立:2004年8月
資本金:3,300万円


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