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アベノミクスの効用と限界(前)~政治経済学者・植草一秀氏
政治
2013年6月 6日 15:32

<絶賛されたアベノミクスに明白な翳り>
 安倍政権が発足して5カ月が経過した。金融市場が安倍政権誕生を予期したのは昨年11月14日の野田前首相と安倍自民党総裁の党首討論を契機としているから、金融市場における実質的な安倍政権誕生局面入りからは、すでに半年の時間が経過した。

 11月14日を起点に、日本経済のムードは一変した。日経平均株価は11月14日の8,661円から本年5月22日には15,627円まで急騰した。値幅にして6,963円、率にして80.4%の暴騰になった。円ドルレートは、11月13日の79.37円から5月22日の103.73円まで、値幅で24円、35%のドル高が生じた。

 株価の大幅上昇は、当然のことながら経済活動の改善を生み出す。株価上昇が生み出す資産効果によって、消費が刺激されるからである。また、安倍政権は政権が発足するとただちに、13兆円規模の補正予算を編成した。大型財政政策の発動も、経済活動を押し上げる効果を有する。
 安倍政権発足とともに出現した経済情勢の好転は、安倍首相が打ち出した経済政策の成功であるとの報道が繰り広げられてきた。安倍政権の経済政策は「アベノミクス」と表現され、日本中がアベノミクス礼賛報道に染め抜かれてきたと言って過言でない。
 しかし、「好事魔多し」である。5月22日を境に、アベノミクスに明白な翳りが見え始めている。株価は急反落し、6月5日終値では13,014円にまで戻ってしまった。円ドルレートも再び1ドル100円の大台を割り込んで、99円近辺に舞い戻っている。

 参院選は、7月21日に実施されるとの見通しが有力である。安倍首相は経済好転の勢いで参院選でも大勝を収め、盤石の政権基盤を確立する算段を固めていると思われるが、思惑通りに事態が進行するのか。風雲急を告げる情勢となり始めている。アベノミクスとは何者であるのか。その効用と限界を探ってみたい。

<アベノミクス礼賛報道の裏側>
b_5.jpg アベノミクスを構成する3つの柱は、金融政策、財政政策、成長政策である。マクロの経済政策の手段は、一般に財政金融政策と理解されている。他方、中長期の経済成長を実現させるための制度改革などが、成長政策と呼ばれるものだ。安倍政権が提示する、いわゆる「三つの矢」の政策提言は、取り立てて騒ぎ立てるようなものではない。ごく当たり前の、普通の経済政策である。
 それにも関わらず、安倍政権が絶賛の嵐を享受しているのは、ひとえに、この政権がマスメディアの利害と合致する存在であるからだと思われる。歴代の政権を見ると、マスメディアから絶賛される政権と、逆に激しい攻撃の対象にされる政権との落差が鮮烈である。小泉政権は絶賛の嵐を享受した政権であったが、鳩山由紀夫政権は、一貫して激しい攻撃を受け続けた。

 これは、政権の政策運営の実績とは無関係である。小泉政権の場合、2001年4月の政権発足直後の2年間に株価は半値に暴落し、金融危機が発生したにも関わらず、メディアは政権を攻撃しなかった。これに対して、鳩山政権は記録的な高支持率でスタートしたにも関わらず、メディアははなから激しく攻撃し続けた。
 詳述は避けるが、米国・官僚機構・大資本という既得権益の利益に適う政権は絶賛され、既得権益の利益を損なうと判断される政権は攻撃されるのだと思われる。一般に人々は、よほど強い猜疑心と深い洞察力を持たなければ、マスメディアの情報誘導に影響されてしまう。安倍政権はメディアに絶賛されており、この点を割り引いて現実を見なければ、ものごとの本質を見誤ってしまう。

 しかしながら、昨年11月から本年5月にかけて激しい金融変動が生じたこと、これにともなって経済のムードがにわかに好転したことは事実である。正当にアベノミクスを評価するには、事実は事実として正確に認識する必要がある。

(つづく)
【植草 一秀】

| (後) ≫


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