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長崎県の行政指導を暴く(3)~長崎漁港がんばランドに営業妨害?
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2013年7月 9日 16:00

 「長崎漁港がんばランド」2期事業をめぐって、長崎県水産部は県内のあるスーパーと協議を重ねていたことがわかった。そのスーパーは、がんばランドにまったく関与していない「同業他社」である。関係があるとすれば、がんばランドとは直線距離にして約500メートルしか離れていないところに、店舗があることだ。

ganbaland.jpg がんばランドに参画する水産卸売会社の(有)マリン商会の浅沼信夫社長(長崎漁師村運営協議会副会長)は7月1日の記者会見で、県が作成した協議結果の報告文書を示した。主要な部分はマスキングされているため、内容を読むことができない。
 しかし、取材を進めると、県議会県政改革特別委員会でがんばランド問題が集中審理された際(6月3日)に県が提出した資料だとわかった。すでに県議のブログなどでその内容の一部が公開されている。
 NET-IBでは資料を入手、参加者や内容など全貌が明らかになった。そのスーパーは、総合スーパー「S東美」や食品スーパー「Sマート」、「STAY」を展開する(株)東美(本社:長崎市、佐々木達也社長)。資本金4,000万円、年間売上高は51億7,000万円(2012年2月期)。

<政治的手段が行政に介入>
 2012年4月27日の協議には、東美の佐々木社長、県水産部の荒川敏久部長(当時)、下山満寛政策監(当時)が出席。協議内容に、こう書かれている。
 「自分たちは土地を購入して営業しているのに、土地を貸して同業者に営業させることは、1坪たりとも認められない」、「水産部長、副知事で駄目ならそれ以上の手段を使う・全知全霊をかけて反対する」、「水産部は土地貸付の判断を再考してほしい」。
 佐々木社長が、政治的手段を脅しにつかって県の行政に介入しているのが赤裸々に記されている。副知事以上といえば、中村法道知事か、それとも国会議員。西岡武夫先生(元参議院議長)亡き後、前知事のあの人しかいない。
 ちなみに、佐々木社長の娘と、金子原二郎参院議員の長男が婚姻関係にあるというのは、あまりの奇遇である。

 同業他社からの陳情というレベルの問題ではないことは、協議内容から一目瞭然だ。明らかになってだけで、協議は4回重ねられている。いずれも、がんばランド2期事業が展開する節目のタイミングで開催されている。5月22日には、東美の要求どおり、県水産部から「スーパー不可」が伝達されている。

<情報漏えいが行なわれていた>
 それから約2カ月後。占用許可の申請翌日、12年6月22日の協議(説明)では、下山政策監が佐々木社長に「がんばランドの件について、県の方針が決まったので説明に来ました。時間を取っていただきありがとうございます」と述べている。業者が「陳情の時間を取っていただきありがとう」というのではない。県が行政方針の決定のご報告にあがる。しかも、相手は一民間企業の社長。佐々木社長は、大物国会議員と同じなのか!
 この日の協議で、下山政策監(当時)は、(1)スーパーが入らないようにした、(2)一般食品や生活用品の売り場面積はその約10%程度とし、拡張させない--と述べている。
 さらには「使用許可は県の他の機関が出すので、その前に社長のところに説明に来た次第です」と報告。「使用許可」とは占用許可のことで、がんばランドとの協議は水産部が担当するが、実際に許可を出すのは振興局だ。その決定前に、一民間企業に県の方針をバラしていた決定的証拠だ。守秘義務違反の情報漏えいである。

STAY.jpg がんばランド側では、この時点で、県から「10%程度」という数字を聞いたことはないとしている。逆に、2月県議会では、4割程度を認めたらいいじゃないかと議員に求められ、水産部長は「はっきりした比率を申し上げると、またいろいろあれだと思います」と答弁していた。つまり、当事者にも、議会にも明らかにできない、県と東美との"密約"の数字に過ぎなかったことをうかがわせる。
 2期事業が今年3月にオープンしてから、"密約"に背いた県への佐々木社長の要求はエスカレートし、県の情報漏えいも事細かになっている。
 13年4月19日には、「全体の10%と思っていたし、聞いていた」。同5月10日、「惣菜は●●が●●で作ったものを持ってきている」、「●●は県が入れたのか」(※編注・原文は業者名などが記載されている)。

<県が守ろうとしているものは何なのか>
 長崎県・市は、がんばランドのリニューアルオープンをホームページで大々的に取り上げた。
 「長崎魚市に水揚げされたばかりの魚介類や新鮮な野菜や果物、海の幸を原料にした加工品などを幅広く提供」、「魚売り場も拡大し、装いも新たに、広く新しくなったがんばランドへぜひお越しください!」。行政の期待の大きさがよくわかる。長崎漁港、長崎県水産業の振興、地域振興の期待を担っている施設だ。一般食品などの販売についても、福利厚生施設として、県が認めて2期事業拡張が進められてきた。
 ところが、県の指導によって、今後の営業や300人の雇用が危機に立たされている。長崎県は、水産業を守る立場なのか、東美という一企業の利権を守る立場なのか。
 がんばランドのキャッチコピーは「長崎のうまかもんがいっぱいあるバイ!」である。このままでは、長崎県の行政には「利権・既得権益を守るしくみがいっぱいあるバイ」と言われるようになる日は近い。

(つづく)
【山本 弘之】

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