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特攻隊が命を懸けて守ったもの(後)
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2013年8月14日 07:00

 福岡縣護国神社境内、西の木立内に新しく立った像がある。「福岡県特攻勇士之像」だ。建立にあたったのは、特攻勇士之像建立福岡県委員会。2012年12月8日、福岡県特攻勇士之像奉納建立除幕式・式典、直会を行ない、今後は、毎年5月4日に、福岡縣護国神社春季例大祭にて、慰霊祭を行なうという。

<それでも軍人として死なねばならなかった>
福岡県陸軍基地.JPG いくら特攻隊といえど、弾が飛んでくれば怖くないはずがない。「それでも若者たちは、軍人の使命として死に向けて飛ばねばならなかったのですよ」と菅原氏は言う。皆、結束しないとやっていられなかった。上層部に立つ者も、温情をもって接しないと誰も付いていけない状況であることを、よく自覚していた。「上の者が威張るのが軍隊のイメージなのかもしれませんが、そうでもないのですよ」(菅原氏)
 戦争で死ぬために生きよとは、むごい言葉だ。しかし救いに思うのは、血気はやる若者に対し、命を無駄にするなと戒めた大人たちがいた、ということだ。骨折した身を引きずってでも戦地へ行くと逸らせていた若者を入院させて内地にとどめ、ウラジオストックへ突入すると言い張る隊員たちの気持ちを十分に聞いてやったうえで、絶対に決行を許さなかった大人たち。息子を亡くした聯隊長が、その遺志を継ぐ、と言う菅原氏を引き止めたのも、生きることを大切にしてほしいという気持ちの表れであったと信じたい。 
 まだ自我が確立していない少年期に受けた軍人としての教育は、そう簡単に消し去ることができるものではない。終戦後、価値観は一瞬して反転し、今まで正義と信じていたものが、ことごとく悪として叩きのめされることになった。何を信じていいかわからない状況のなかで、唯一たしかなのは、多くの人々が、戦争のために死に至ったという事実と、2度と彼らのような犠牲者をつくってはならないという誡めだ。
 
<今の世の中に必要なのは正しい教育>
heiwanozou.jpg 死と背中合わせの青春時代を生きた菅原氏にとって、今の日本は本当に弱体化して、様変わりして見えるそうだ。
 「考えられないような世の中になりました。こんなに弱体化するとは思わなかった。しかし、今でも日本は良い国だと思っていますよ。68年も内戦すら起こらなかった国は、他にはありません。平和は大切です。それが1番良い」――だからこそ、昔の若者が、平和な国を守るために命懸けだったことを忘れず、強くあってほしい、と願う。平和を永続させていくのは簡単なことではない。平和を守るためにも、強い自律心を持って欲しいということなのだ。
 ここで、式典で遺族代表者が朗読したという、次のような海軍中将の遺書を記しておく。

 「特攻隊の英霊に臼す。善く戦いたり、深謝す。最後の勝利を信じつつ、肉弾して散華せり。然れ共其の信念は遂に達成し得ざるに至れり。吾死を以て旧部下の英霊と其の遺族に謝せんとす。次に一般壮年に告ぐ。我が師にして、軽挙は利敵行為なるを思い、聖旨に副ひ奉り、自重忍苦するのを誡めともならばならば幸なり。隠忍するとも日本人たるの衿持を失う勿れ。諸子は国の寶なり。平時に處し、猶ほ克く特攻精神を堅持し、日本民族の福祉と世界人類の和平の為、最善を盡せよ。」
(「福岡県特攻勇士之像 奉納建立報告」パンフレットより)

 たしかに「我が命よりも守らねばならない国がある」という精神は、薄れたのかもしれない。代わりに、戦後68年かけて「我が命が存在する、この世界の平和を守る」という精神が、脈々と育まれてきたのではなかったのではないだろうか。
 菅原氏は言う。「子どもたちは、世の中のことなど何もわかっていませんよ。だからきちんと導くために、大人、ことに政治家はしっかりとしてほしい。『今の時代に一番必要なものは何か』ですか?それは、子どもたちを正しく導く教育でしょうね」。
 軍人教育を受けた菅原氏の代わりに、あえて書こう。「正しい教育とは、特攻戦を許すような教育ではない」と。

 特攻隊勇士之像が建った護国神社境内には、以前より神社を象徴するものとして、「平和の像」が建っている。特攻隊之像も平和の像と共に、自分たちが命を懸けて守ろうとした平和な社会が、末永く続くことを願っている。

(了)

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