"ひみつ"とは、不思議な言葉だ。大切な人にひみつを持たれたりすると寂しい思いをするけれど、ひみつがあるからこそ、人として優しく生きられることもある。「アジア太平洋こども会議・イン福岡（以下、APCC）」が25周年記念として制作した福岡市民ボランティアによる自主制作映画「空飛ぶ金魚と世界のひみつ」にも、そんな不思議なひみつがあるのを、見つけた。
＜お互いの本音をぶつけあえる、それが本当のOMOIYARI＞
勇気をもって「すみませんが、話があります」と立ち上がったボランティアの声によって、プロ側と、ボランティア側が互いに改めて気がついたことは、APCC映画が、「自分と違う考え、価値観、文化を持つ外国人との出会い、交流から、新しい発見や学びを得た子どもたちに、その経験を通して、世界に羽ばたく人間に育って欲しい」という願いによって生まれようとしているということだった。それなのに、製作者たちが、互いの「違い」を認め合えずにいていいものか。「互いの違いを認め合ってひとつになろう」と伝えようとしている、自分たちが、歩み寄れずに、人の心を動かせるものだろうか。
徹底的に話し合った。側で見ているものからすると、けんか腰に見えたかもしれない。それぐらい真剣に話し合った。本音を話し合い、受け止めあい、認め合いながら、やがて、話し合いは収束に向かった。
「それからですよ。現場の雰囲気が、まるで変わったのは。皆が活発に笑顔で挨拶を交し合い、強い団結心が感じられるようになりました。あの展開は、すごかったなと今でも思います」と、APCC幹部の面々は、得難く、不思議な体験をしたような表情で微笑みあった。
市民参加型の創作プロジェクトの難しさは、映画を作り上げるというひとつの目的に向かって、どうしても立場上の誤差が生じることだと思う。プロの立場と、ボランティアの立場。どちらが秀でているわけではない。「違っていて当たり前」なのだから。
例えば、これが商品としての映画を創ることが目的であれば、主導権は商業作品を創る専門家であるプロが担うのだろう。しかしAPCC映画は、多くの人々に「OMOIYARI（思いやり）」の心を伝え、地球市民として、平和な社会を作る仲間を広げることが目的だった。興行利益も必要だろうが、大切なのは、あくまでもAPCCビジョンの伝達。そのためにも、創作に関る人々が、立場が違うことで生じる誤解と、それを解決したときに得られるものを、経験することは、とても意味あることだっだのだと思う。ＯＭＩＯＹＡＲＩとは、本気でぶつかり合える関係性のなかから生まれてくるものなのかもしれない、そんなことを、ふと思った。
＜語り合うことで育つ映画の「ひみつ」＞
7月20日、完成作品「空飛ぶ金魚と世界のひみつ」を観た。世界を平和に導く「OMOIYARI」。その大切さに気づくための「世界のひみつ」が、とてもシンプルな言葉で表現されていた。そのシンプルなひみつを知っている金魚の導きによって、３つの物語が幸せな結末に向かう。
先の、制作スタッフが乗り越えた「ひみつ」を思いながら観る映画は、また格別だった。「ひみつ」は大きな声で語られるものではないけれど、それを知ることで優しい気持ちになれるものだ。この世界には、目に見えないけれど大切なことが、たくさんある。
今後、同映画は、８月17日、福岡市での先行上映を皮切りに、８月24日で九州選考上映、９月28日からは全国ロードショーが行なわれる。そして今後は、小中学校での上映会、アジア太平洋各国でのブリッジクラブによる上映会も予定されている。
多くの人々が映画を観て、金魚が教えてくれた「ひみつ」について語り合ってくれますように。人にも自分にも優しくなれる、言葉の意味に気づいてくれますように――それは映画制作に携わり、自分たちの力で「ひみつ」を知った、多くの人々の、共通の願いだ。多くの人々の協力のもと、彼らの願いが広がっていくといい。
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・空飛ぶ金魚と世界のひみつ公式ブログ
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