学生時代に起業、成功を収めるものの突如、芸人を目指し、たけし軍団入り。「月収５万」挫折を経験し、次はなんと政界へ。異色の経歴を持つ吉田大作志免町議の素顔に迫る。
＜根性が認められ、初仕事 その中身とは＞
手元に残されたのはマネージャーの名刺だけ。その日から、電話攻撃を開始。毎日、毎日事務所に電話をかける。ほとんど無視されるが、しつこくかけ続けると時には出てくれる。「いつまで電話を続ける気だ。どこにいるんだよ？東京に来ないと話にならないぞ」それでまた上京を決める。親戚を頼りに住むところは決まった。いよいよかと思われたときに、北野氏のバイク事故が起きる。「新弟子どころじゃないんだよ、今は。根性は認めるから、ちょっと待て」と事務所。それから待ち続けること半年。いつ呼ばれるかもわからないので、バイトさえできない。ただひたすら電話を待つだけの生活が続いたが、やっと電話が鳴る。突然「東京にいるんだよな。じゃ、明日テレビ局に来い。」
初めてテレビ局に入る。命じられたのはドアを開けること。芸人が部屋に入るたびに、「お疲れ様です」と挨拶し、ドアを開ける。それで１日が過ぎていく。ドア開けのみだったものが、お茶配り、灰皿交換もするようになった。そこで徹底的に鍛えられた。20代を中途半端に過ごしていた自分、就職もしていないやりっぱなしの人生。学生時代に起こした事業で成功し、学生の身で今にすれば超大型の携帯電話を持ち歩き、高級車に乗っていた。生意気そのもの。それが１日中ドア開けという仕事をする。弟子入りして、コテンパンに打ちのめさることになる。
＜殿との３年間、しかし＞
３カ月後、北野氏が復帰する。トイレ以来の顔合わせ。眼帯姿だったが、しびれるほどのオーラを放っていた。「俺がいない間に誰か新入りが入ったのか？」「九州のゴルフ場で弟子入り志願した吉田です」「おおおお。あいつ、お前か」覚えてもらえていた。復帰直後から運転手に抜擢され、それから３年間毎日一緒に過ごすことになる。
運転手には20万円の給料に衣食住は用意されていたが、運転手を卒業して、芸人となると給料が５万円に激減。吉野屋で１杯の牛丼を食べて、線路の上を歩いて帰る。疲れたときは食事を抜いて、電車で帰る生活。仲間と集まっては、金を出し合い、ハンバーガーセットを分けて、しのいだ。耐えに耐えて生活を続けていたものの、限界を迎え、31歳にして挫折。福岡へ戻る決心をする。
学生社長から年収が60万に。それでも「生活は苦しかったけれど、毎日が楽しかった」と吉田氏。芸人として、売れたら払ってくれればいいという床屋。朝から何も食べていないと告げると何も言わず1,000円差し出してくれる知り合い。東京は冷たい街だと言われるが、人情がある、愛のある街がそこにあった。同氏は「芸を身につける前に、人間として徹底的に鍛えられた。これが今の自分につながっている」と当時を振り返る。
＜離婚を機に、政治の道へ＞
東京で培った人脈もあり、福岡に戻ってビデオや古本販売の事業を始める。ビジネスセンスは色あせておらず、事業は軌道に乗り、店舗を拡大。家も車も手にいれ、すべてが順調に見えたが、38歳で離婚を経験。自分の時間が増えた。そのとき、ふと自分のやりたいことを見つめ直した。それが政治だった。志免町の政治学級生募集を知り、飛び込んだ。38歳の再チャレンジ。最年少で経歴がおもしろい。学ぶ姿勢も評価されて、いろいろなボランティア団体から声がかかる。本業はそっちのけで、ボランティアに没頭した。
そして、2010年の町議選前に、周囲から押し上げられるように出馬を決意し、師匠に報告する。「おもしれえじゃねえか。全面的に応援してやるから。俺の写真も名前も好きに使え」それで名刺には北野氏のサインと写真を入れることにした。「俺の弟子が政界へ進んだのは東に続いて、２人目だな」と喜んでいたという。
持ち前の根性、目配り気配りができる真摯な姿勢で選挙戦を戦い抜き、５位で当選。新人ではトップ。志免町ではすっかり有名人となっている。
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