（株）曙設備工業所

＜企画提案参加型で顧客開拓＞
　（株）曙設備工業所は1982年２月に設立された設備工事業者。84年３月に建設業許可を取得、86年10月に福岡市早良区飯倉４丁目に社屋を構え、設備工事業者として知名度を高めていった。現在の代表取締役社長である野田弘之氏が代表に就任したのは、92年５月である。96年３月には福岡市早良区田隈２丁目に社屋を移転。2011年３月には満を持して現在地に30周年の記念事業として新社屋を新築するなど、同社の躍進には目を見張るものがある。そして、熊本市東区長嶺西１丁目に熊本支店を開設し、設立当初300万円だった資本金も段階的に増資していき、12年７月には6,000万円とした。

　同社は福岡都市圏に分譲・賃貸マンション、公共施設・教育施設、店舗・医院、老健施設など多岐にわたる設備工事を手がける。そのなかでも、新築のマンションでの設備工事が大きな割合を占め、福岡都市圏では業界内での業績はトップクラスで、頭一つ抜きん出ている。受注先も多数の中堅・地場ゼネコンの名が連なっており、同社の幅広く安定した営業能力の高さがうかがえる。

　福岡地区でも多分に漏れず、設備工事業者がひしめき合い、同社も競争の世界に身を置いているのが現状である。設備業者の多くはゼネコン直下の下請けに身を置くが、そのなかでも同社の受注スタイルは、同業他社とは若干違う。
　同社の場合は、建設業者に対して積極的な営業活動を行なうのではなく、設計事務所を対象に設備設計・施工の企画提案を行なってきたのだ。ここが、同業者との相違点である。設備設計の業務を同社が引き受けることにより、設計事務所の省力化につながり重宝がられてきたのだ。この信用・信頼が形成されることで、設計事務所は得意先のマンション業者・デベロッパーを紹介し、中堅・地場ゼネコンからの受注をしやすくなったというもの。さらに、同社ならではのたしかな施工やアフターフォローが信頼を生み、徐々に顧客を増やし、その紹介が広がって大口案件に結び付いたと言えよう。

＜厚い信頼関係をもとに苦難を乗り切る＞
　信用が高まり曙設備工業所というブランドが固まりつつあった頃、同モデルの諸刃の剣とも言える弱点が表面化。与信管理の不備から、連続して大口の不良債権を抱える事態になった。今では業界の語り草になっているが、まさに同社の最大の危機となっていたのだ。それを乗り越えたのは、野田社長含め社員らの『獅子奮迅』の活躍によって、すべての不良債権を10年12月期には償却したことによる。周囲は野田社長の経営手腕を高く賛美したが、野田社長本人は「社員とその家族、協力してくれる職人の人たちの生活を奪ってはならないとの一心だった」と謙遜する。

　加えて、協力業者の協力も忘れてはならない。この焦げ付きにより苦しい立場に立たされた同社ゆえに、警戒して協力業者が仕事を受けてくれない状況になった。しかし、大変な時期であったにもかかわらず「今まで協力してきたから今回も一蓮托生だ」として、苦しむ野田社長に手を差し伸べた業者もいた。そのとき協力した工事業者は、「あのとき（工事に）協力したことを今でも大切に思っていらっしゃるのでしょう。野田社長から仕事が途切れることはありません」と逆に感謝していた。

　中堅・地場ゼネコンに対しても、厚い信頼をもとに工事を手がける同社。協力業者にも深い信頼関係があるがゆえの出来事だろう。

＜COMPANY INFORMATION＞
代　表：野田　弘之
所在地：福岡市早良区田村4-15-10
設　立：1982年２月
資本金：6,000万円
ＴＥＬ：092-801-7247
ＵＲＬ：http://akebonosetubi.com

※記事へのご意見はこちら