NET-IB NEWSネットアイ

ビーニュース

脱原発・新エネルギーの関連記事はこちら
純広告用VT
カテゴリで選ぶ
コンテンツで選ぶ
会社情報

特別取材

新旧勢力の交代鮮明に|IB流2007年総括シリーズ
特別取材
2007年12月27日 09:00

危うさはらみ快進撃

 データ・マックス「スーパーレポート2007年版」によると、年商400億円以上の企業で06年度の増収率トップはトライアルカンパニーだった。前期は26.8%も伸ばし、九州の流通企業売上ランキングでは5位に浮上した(家電を除く)。店舗網は関西から関東、東北に拡大、今期は1,600億円を計画している。
 半面で危うさもつきまとう。自己資本比率がわずか2.6%しかなく、出店資金は他人資本に依存している。他人資本においても、銀行借入よりも、支払代金回転率と商品回転率の差を利用した回転差資金に頼っていると見られる。これだと、売上の増加が止まり入出金のバランスが崩れだすと、資金繰りは極めて厳しくなる。
 杜撰な内部管理、チェーンストアの定石を無視した出店戦略など、取引先から見ると不安材料にはこと欠かない。それでも、現在の流通業界における飛びぬけた成長力は魅力に値し、同業者から見ると驚異の存在である。食品スーパーでは当初から平均して2割は売上が落ちると言われる。08年も、その一挙手一投足が注目を集めそうだ。

ドラッグストアも格差鮮明

 トライアルと並ぶ新興勢力の双璧が、ドラッグストアのコスモス薬品。大量出店により、前期増収率は19.5%増とトライアルに次ぐ高い伸び率を示した。価格一辺倒のトライアルに対し、小商圏単位で出店し、消費者にとって自宅近くで手軽に買える利便性が魅力。急成長にもかかわらず、経営体質はバランスが取れており、売上高経常利益率は3.47%とトライアルの1.29%をしのぐ。従業員教育も新興企業には珍しく行き届いているとされる。
 ただ、集客の大きな武器だった食品の売上比率が年々上昇し、50%に迫っている。これに伴い経常利益率は低下傾向にある。09年から改正薬事法が施行されると、コンビニ、SM、DS、ホームセンターなど、広範な業態で大衆医薬が扱えるようになる。トライアルやサンクスジャパンが低価格を売り物に本格参入するようだと、収益源を脅かされる恐れが無いとは言えない。
 ドラッグストアでは、ナチュラルが急成長している。前期の売上高は40%増で、増収率は別表の売上高上位20社中で首位。今期はドラッグイレブンを追い抜きそうだ。ドラッグ業界は、医薬・化粧品を主力にするマツモトキヨシやドラッグイレブンなどの伝統的業態と、食品の扱い比率の高いコスモス薬品、ナチュラルの大型店業態に分かれつつある。

マックスバリュ、SM首位へ

 食品スーパーの新興勢力の代表はマックスバリュ九州。前期は、SMでは首位のハローデイ11.3%増に次ぐ7.8%増を達成、設立6期目の08年2月期で、年商1,000億突破が見込まれるまでになった。九州のSMでは初めて、日用雑貨から実用衣料まで品揃えした、売場面積2,000㎡超の大型食品スーパー(SSM)を導入した。短期間に新会社を軌道に乗せることができたのは、合併前の旧3社の老朽店舗を、新型のSSMに置き換えていく戦略が奏功したからにほかならない。
 来年には、マックスバリュ九州がマルキョウを抜いてSM専業トップに躍り出る可能性は高い。福岡のSMにおいて、サニーとともに先発だったマルキョウの首位からの転落は、業界の新旧勢力交代を象徴するものだ。

後退続くサンリブ

 サンリブも後退している。前期は店舗の純増が1店だったせいもあり、1.6%減と上位企業では数少ない減収組だった。GMSはイオン、イズミ、SMはトライアル、ハローデイ、レッドキャベツ、コスモス薬品などの新興勢力に食われている。GMSは店舗規模が中途半端で、老朽化した店舗が多く、競争力が弱体化している。後退に歯止めが掛からないのは、将来をにらんだ明確な成長戦略を欠くためだ。マルショクとの合併も先送りしたままで、一時構想された株式上場も立ち消えになっているのが実情。
 “負け組”の代表は九州西友。前期の減収率は21%で、かつてダイエーや寿屋などと九州の大型店市場で覇を競った面影は無い。ウォルマート傘下で改装投資も抑えられ、大型店、SMともに競合他社の蹂躙に任せたまま。前期末で約60億円の債務超過状態にあり、西友本体の業績不振に足を引っ張られ、財務上の処理も後回しになっている。10月、西友グループで実施した早期退職に相当数の応募者が出たと見られる。実質的にサニーと統合され、ペーパーカンパニーにすぎなくなっているが、店舗も“死に体”同然と言われる。

上場廃止で出直し改革

 MBO(マネジング・バイ・アウト)による上場廃止という、思い切った決断をしたのが「ダイレックス」を展開するサンクスジャパン。表面上の業績は、前期の営業、経常利益こそ微減益だったものの、増収を維持し順調に見えた。しかし、創業経営者の後を受け継いだ佐賀銀行出身の大嶌秀昭社長は、このままでは生き残れなくなると判断。いったん株式市場の監視の眼から離れ、業績にとらわれないフリーハンドの立場から出直し改革を図ることにした。
 最盛期には売上高営業利益率が3%を超えていたが、競争激化から年々低下し、前期は1.5%(経常利益率は1.65%)に低下していた。新経営陣は、人材育成や管理体制整備など内部体制から抜本的に立て直す必要があると結論。投資ファンドの支援で創業家から株式を買い取り、いったん非上場化する方法を選択した。ダイレックスの店舗は、商圏の重なるドラッグストアの攻勢を受けている。早めの決断を評価する声は多い。

(工藤 勝広)

関連記事

powered by weblio


特別取材一覧
特別取材
2011年6月24日 07:00
純広告VT
純広告VT

純広告用レクタングル


IMPACT用レクタングル


MicroAdT用レクタングル