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東日本大震災 原発対策・復興バブルが始まった(後)~福島県いわき市
特別取材
2011年6月27日 07:00

Jヴィレッジ付近の東芝現地対策本部 いま福島第一原発対策の前線拠点となっているのが、原発から約25キロ南の広野町にあるサッカーのナショナルトレーニングセンター「Jヴィレッジ」だ。そこには東電や自衛隊、警察の関係者がごった返している。ここにいったん集結して原発まで送迎されているのだ。したがって広野町の隣にあり、Jヴィレッジに近いいわき市が「前線」として活況を呈しているのである。

 「もう当面はずっと部屋が埋まっております。被災地からの避難者や復興支援のお客様に多数お泊りいただき、観光目的の予約はお断りさせていただいております」。いわき湯本温泉組合の事務局担当者は、そう言う。
 同組合加盟の「ホテル パームストリングス」は、ほぼ全部屋が原発関係の宿泊客で占められている。新潟県の柏崎刈羽原発で働く東電の社員や、全国最多の原発が立地する福井県で働く下請け作業者ら、応援でやってきた関係者が多数投宿する。西欧人がいるので誰だろうと思えば、仏原発メーカーのアレバの技術者一行だった。同じように旅館「うお昭」は大手ゼネコンから月単位の一棟借りだ。小名浜漁港に近い「パレスホテル」は、日立製作所グループの社員や遠く九州や関西からやってきた原発下請け作業員でごった返す。いったん閉めていたいわきプリンスホテルも4月の営業再開以降は、東電によるほぼ全館借りである。辞めていった従業員の穴をうめるべく、6月に入って「住み込みで月30万円」と求人募集をするほどだ。ほとんどが一見の客、フリーの観光客を受け入れていない。

 旅館・ホテルの活況を受けて、様子見をして店を閉めていた居酒屋、飲食店、フィリピンパブも続々再開している。「県外に逃げた料理人をもう一回呼び寄せているのです」とホテルの日本料理店の従業員が言う。いま市内の求人で最も多いのが、飲食店の料理人やホールスタッフの募集である。
 彼らを運ぶバス会社やタクシー会社も恩恵を蒙り、さらにはレンタカーも調達が難しい状況だ。泉駅前の3件のレンタカー店は全車を貸し出す状態の日が続いているといい、いわき駅前のレンタカー会社も「復興支援やNPO、ボランティアの方々がひっきりなしで車がありません」という。

 とはいえ、海岸線沿いには倒壊家屋が散見され、漁船も多数岸に打ち上げられたまま片付けられていない。漁場として知られ魚が美味なところで知られるが、放射能汚染水の海洋垂れ流しのせいで、近海の漁は操業中止。5月~9月までのシーズン中に1,000万円は稼ぐといわれるウニ、アワビ漁師たちは大打撃を受けている。桃や梨、トマト、キャベツなど農産物にも風評被害が押し寄せる。お中元の贈り物を百貨店に買いに来た人も、「県産の桃や農産物を送って喜ばれるかどうか」と思案顔だった。「バブル」は局所的にしか発生していないのだ。

 いわき市内には街中いたるところに「がんばっぺ いわき!」のステッカーが貼られ、市や商工会御所が街を挙げて災害復興に取り組んでいるため、「放射能汚染を不安視することをいうと非国民扱いされかねない」(市内在住の元新聞記者)という奇妙な空気もある。福島や郡山市内では小学生の1割近くが県外に脱出したといわれる。いわきはそれほどではないが、それでも1クラスあたり1、2人の子どもたちが親戚を頼って県外に疎開しているという。小さな子供を抱えた家庭の不安は大きいのである。市内の大多数の人にとっては恩恵のまったくない「バブル」であった。

(了)

【尾山 大将】

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