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2008年の注目社長(後) | 東京レポート
特別取材
2008年1月 8日 13:47

アキバに殴りこんだヤマダ電機の山田社長

 2008年の家電量販店の台風の目は、ヤマダ電機の山田昇社長(64)である。地方を制覇したヤマダは、念願の首都圏に進出した。首都圏はヨドバシカメラとビックカメラの本拠地。都心を舞台に雌雄を決することになる。
 世界最大の電気街、東京・秋葉原。ヤマダ電機は年が押し詰まった12月14日、秋葉原に初めて参入した。ヤマダの新店は「LABI秋葉原パソコン館」。07年5月に買収した、ぷれっそホールディングス傘下サトームセンの店を転換した。地下1階8階建てで、売り場面積は約900平方メートル。パソコンや周辺機器を販売する。

ビックの本拠地・池袋に進出

 これまで地方の郊外を中心に大型店を出店し、全国家電市場の2割を手中に収めたヤマダが、手をつけなかったのは都心部。全国一の量販店の地位を不動なものにするには、都心ターミナル型立地で、圧倒的なシェアを握っているヨドバシとビックを撃破するほかに、みちはない。
 満を持して都心部に出店攻勢をかけた。狙い撃ちにしたのはビックだった。まず07年7月、東京・池袋に「LABI池袋」を開いた。池袋は大小5店を構えるビックの本拠地。しかも、出店場所はビック本店のすぐ隣だ。ヤマダによるビックへの宣戦布告である。
 ビックの池袋地区での売上高800億円は、全社の2割近くを占める。ビックの圧倒的な優位は揺るがないにしても、ヤマダのゲリラ戦に翻弄されるのは必至だ。抜群の財務力を背景に、採算を度外視した安売りに打って出たり、小刻みに価格を引き下げたりする神経戦は、ヤマダが最も得意とする仕掛けである。
 ヤマダがビックに揺さぶりをかけたのは池袋だけではない。11月に東京・大井町、12月に新橋駅前のキムラヤセレクトを買収して出店、続けて秋葉原店を開店した。ビックの池袋に継ぐ拠点である有楽町駅前店を、ヤマダが大井町と新橋、秋葉原で挟撃する格好だ。
 ビックは反撃に転じた。両社の対決は、かつて家電量販店トップのベスト電器の争奪戦に発展。ヤマダに買収攻勢をかけられたベストにビックが援軍にかけつけ、「反ヤマダ」連合を組んだ。
 発端は、ヤマダが首都圏進出に当たり、ビックを呑み込もうとしたことだった。ビックは統合提案を拒否し、業界2位のエディオンと提携した。最終段階でビックとエディオンの経営統合は白紙に戻ったが、提携は継続。両社の売上高はヤマダとほぼ互角で、独走するヤマダの首位の座を脅かした。以来、両社の対立はエスカレートしていったのである。

ヨドバシの超巨艦店に挑む

 ヤマダが最大の敵とみなしているのが、新宿西口に本拠地を置くヨドバシである。都心や中核都市の駅前に巨艦店を出店する戦略をとったヨドバシは、地域一番店として圧勝。向かうところ敵なしの勢いだ。
 巨艦店の振り出しは、01年11月のマルチメディア梅田(大阪市)の売り場面積2万平方メートル。02年11月に、マルチメディア博多(福岡市)の1万7,500平方メートル、04年3月に、マルチメディア川崎ルフロン(川崎市)の1万4,400平方メートルを開店。05年11月に横浜三越の跡地に出店したマルチメディア横浜(横浜市)は2万1,450万平方メートルだ。
 最大の超巨艦店は05年9月に、家電のメッカ・秋葉原に出店したマルチメディアAkiba。売り場面積は2万3,800平方メートル。マルチメディア博多のほぼ倍の広さだ。国内の家電量販店で唯一、1,000億円の年商を達成していると言われる。
 ヨドバシは圧倒的な集客力で、アキバの電気街地図を塗り変えた。JR秋葉原駅の西口が電器店が密集している電気街だったが、つくばエクスプレスの開業もあって、ヨドバシが巨艦店を構える東口に人の流れが変わったのである。
 アキバの老舗は、ことごとく新興勢力の傘下に呑み込まれていった。ソフマップはビックの子会社に、石丸電気はエディオングループに、サトームセンはヤマダの傘下に入った。アキバにヤマダ、エディオン、ヨドバシ、ビックの大手4社グループが勢揃いした。

ラオックスを買収か

 アキバに橋頭堡に築いたヤマダの次なる仕掛けは何か。LABI秋葉原の売り場面積は約900平方メートルと中規模。ヨドバシの超巨艦店の敵ではない。アキバでヨドバシ包囲網を築き、得意の価格競争を仕掛けるには、さらなる店舗が必要だ。  
 ヤマダがヨドバシに対抗するために目をつけたのが、投資ファンドによって再建された量販店。07年5月、サトームセンなどを傘下にもつ持ち株会社のぷれっそホールディングスを買収したのが、その典型例だ。
 次に標的にするのは、アキバの老舗ラオックス。ラオックスの旗艦店、ザ・コンピュータ館は1990年代に、アキバの一時代を築いた。「ザ・コン」の愛称で親しまれた同店は、1990年4月、創業60周年を記念してパソコン専門店の第1号店としてオープン。ソフトバンクの孫正義社長がラオックスに対して全館コンピュータを扱う専門店の開店を提案、店名も孫社長が出版している雑誌名をそのまま使用したという。
 開店以来、パソコン・マニアの人気を集めた。アキバの名所として業績を伸ばし、1993年度には家電専門店の店舗別売上高で全国1位を獲得。書籍売り場を1階に配置する手法が、その後のパソコン専門店の店作りのモデルになったというエピソードがある。
 しかし、ラオックスは家電量販店業界の大型店競争の荒波に呑みこまれて業績が悪化。投資ファンドのMKSパートナーズが買収。その再建策として、ザ・コンは60億円で売却され、07年9月に閉館した。
 さらにMKSはラオックスを売却。再生ファンドのマイルストーンアウランドマネジメント(MTM)が今年2月、ラオックスが実施する第三者割当増資を引き受けて、過半数の株を取得する。経営権を握ることになるMTMは、早々と、ラオックスを売却して合従連衡をはかると表明した。
 ラオックスは、ザ・コンを売却したとはいえ、秋葉原地区に大小8店を展開。ラオックスを買収すれば、ヨドバシの超巨艦店に、得意の価格競争を仕掛けることは可能だ。
 2008年は、ヤマダにとってアキバ侵攻の絶好のチャンス。アキバを制したものが首都圏を制する。山田社長の勝負の年である。

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