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ベスト争奪戦は長期化の様相 株主総会が大きなヤマ場 | 東京レポート
特別取材
2008年1月28日 10:05

 家電量販店7位のベスト電器(福岡市、有薗憲一社長)をめぐるM&A(合併・買収)は、最大手のヤマダ電機(群馬県前橋市、山田昇社長)、2位のエディオン(大阪市、久保允誉社長)、5位のビックカメラ(東京都豊島区、宮嶋宏幸社長)の3社の思惑がからみ、長期化の様相を呈してきた。

 ベストがM&Aの標的になったのは07年8月。ヤマダが約7%の株式を取得したことが判明。ヤマダは敵対的TOB(株式公開買い付け)をしないとして、ベスト株40%以上を取得し、商品仕入れを一本化する提携を提案した。

 ベストはこれに対抗して9月、ビックと提携。ビックはベストの増資を引き受けて9.3%の筆頭株主になり、買収防衛策に協力した。

 約3%の株を取得しベストの攻防戦に参戦したのがエディオン。昨年末、10%未満のベスト株を取得する提携を提案。エディオンとビックは、経営統合は破談になったものの、3%ずつ持ち合いを提携しており、最大のライバルであるヤマダに対し、ベストを挟み、エディオンとビックが対峙する形をとった。

 だが、ベストは1月17日、エディオンの提携提案を拒否。ビックに続いてエディオンと組めば、ヤマダが敵対的TOBを仕掛ける強硬姿勢に転じることを恐れたためだ。ベスト争奪戦は、ヤマダ、ビック、エディオンのすくみ合いが続くことになったのである。


参戦したエディオン

 家電量販店のM&Aが続いている。ヤマダは07年6月に、秋葉原のサトームセンを傘下にもつ、ぷれっそホールディングスを、9月に新橋のキムラヤを買収。エディオンは05年4月近畿のミドリ電化を子会社、07年2月に秋葉原の石丸電気を子会社に。ビックは06年2月秋葉原のソフマップを。ベストは06年12月新宿のさくらやをそれぞれ子会社にした。

 M&Aに早くから取り組んできたのがエディオンである。エディオンは02年3月、デオデオ(広島市)とエイデン(名古屋市)の共同持ち株会社として発足した。当時、デオデオ社長だった久保允誉氏(エディオン社長、57)とエイデン社長の岡嶋昇一氏(エディオン副社長、57)は、日本電気大型店協会(NEBA、現在は解散)の加盟社を糾合して、ヤマダやコジマなどの新興勢力に対抗する構図を描いた。

 70年代後半から90年代前半はNEBA加盟店の黄金時代。ベストが17年間、売上高日本一を続けていたのは、この期間だ。だが、大店法改正による大型店の解禁に、NEBA加盟店は出遅れた。大型店に転じたヤマダなどの新興勢力に敗れた。

 統合に先立ち01年11月、デオデオ、エイデン、関西が拠点のミドリ電化と上新電機の4社連合が発足。翌年の02年2月には、ベストも合流し5社連合になった。だが、一国一城の主たちだ。営業エリアの調整が難航。売上につながるためお互い一歩も譲らない。ベストは、7ヵ月後に連合を離脱。結局、デオデオとエイデンの持ち株会社として、エディオンはスタートした。

 それでもエディオンは、ミドリ電化、石丸電気、暮らしのデザイン、サンキューなどを買収して子会社に組み入れ、売上高ではヤマダに次いで第2位に躍進したのである。


40%ルール

 「40%ルール」。これは、40%以上の出資関係がないと、メーカーから共同仕入を求めてもらえないという商慣行である。価格競争を勝ち抜くには、共同一括仕入れでコストを下げなければならない。この40%ルールのために、M&Aが連発されることになった。ヤマダがベストに40%以上の株取得を提案したのは、このルールに基づいている。

 だが、40%以上の出資には、「飲み込まれる」との抵抗感が強い。ベストがヤマダの提案に拒絶反応を示したのも、エディオンとビックの統合が破談になったのも、40%ルールが原因になった。

 07年2月、エディオンとビックは資本提携を発表した。ヤマダから提携提案を受けたビックは、エディオンと提携を結ぶことで買収防衛策としたのである。

 ビックの創業者は新井隆二会長(62)。ビック株の72.3%を保有するオーナー。群馬県高崎市の薬局の次男坊に生まれた。20歳の時に東京・大塚駅前に薬店を出店。しかし、父親が病気で倒れたため薬店を他人に譲り帰郷。その資金を元手に1968年、高崎DPセンターを開設。72年カメラ販売部門を分離してビックカラー(現ビックカメラ)を設立。78年に東京・池袋に東京店を開設。駅前立地の大型店で快進撃を続けた。

 06年8月、ビックのジャスダック上場で、新井氏は巨額の上場益を手にしたが株価は低迷。ヤマダから挑戦状を叩きつけられたため、エディオンと連合を組むことにした。

 しかし、ネックになったのは40%ルール。ビックの経営陣は「飲み込まれる」と不満を抱き、統合は白紙還元。株式3%の相互持ち合いという緩やかな提携にとどまった。


ベストの選択肢

 ベストの選択肢は、(1)自主独立を守る、(2)ヤマダの傘下に入る、(3)エディオン、ビックと反ヤマダ連合を組む、(4)再生ファンドに身売りする-の4つ。ベストは自主独立を望んでいるが、業績低迷が続く現状では難しい。

 エディオンを核にビック、ベストの反ヤマダ連合が実現すれば、ヤマダの売上高を上回る。だが、反ヤマダ連合は一枚岩ではない。ビックは1月16日、ベストの広島本店(広島市)を「ビックカメラ」に転換すると発表した。広島はエディオンの本拠地の一つ。提携しているビックの広島進出は、エディオンの神経を逆撫でした。

 ビックは、ベスト広島本店のような大型店に出店するのが狙いで、ベストが多数抱えるFC店には関心がない。これ以上、肩入れすることはない。

 ベストと肌合いが近いのはNEBA加盟店仲間のエディオン。エディオンは地方の雄といわれた量販店の集合体だ。ヤマダの山田昇社長(64)のような強力なリーダーシップの持ち主が率いているわけではない。エディオンが参戦したのは、ヤマダによるベスト買収を阻止するのが狙い。緩やかな統合をうたうエディオンが、ヤマダ相手にベスト株のTOB合戦に突き進むとはありえない。

 こうみてくると、敵対的TOBを仕掛ける力をもっているのはヤマダだけだ。ベストの08年2月期の決算は悪化が見込まれる。ヤマダが大株主としてベストに提携を迫る口実になる。株主総会がひとつのヤマ場。敵対的買収に乗り出すのは、それからだろう。

 買い手があるうちが華。買い手がなければ、再生ファンドに身売りするしかない。

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