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特別取材

シリーズ「官は守ってくれない!」 ~行政テロの脅威~
特別取材
2008年5月 8日 13:00

脱・公共工事へ向け、新たな事業展開を開始
(株)サンコービルド 取締役本部長 園村 剛二 氏

国土交通省九州地方整備局による営業停止処分(公共工事の建築工事と補助金が伴う民間建築工事)が開始した4月15日、サンコービルドの社員4名は鹿児島にいた。新たな事業として、賃貸マンションのFC加盟による展開を始めており、営業社員が研修を受けるためである。新しい事業展開について、同社の取締役本部長・園村剛二氏に話を聞いた。

COMPANY INFORMATION
代 表:藤井 義則
所在地:福岡市博多区博多駅前1-31-17
設 立:1972年8月
資本金:9,900万円
業 種:総合建設業
TEL:093-921-2231

新事業の展開

 ―新事業を始められるそうですが、その事業について教えてください。

 園村 今回、ユーミーマンション事業部を立ち上げました。これは鹿児島に本社を置く弓場建設(株)が展開しているもので、そのFCに加盟しました。「ユーミーマンション」は、鉄筋コンクリート造の賃貸マンションで全国唯一の統一ブランドです。北海道から沖縄まで全国各地に加盟店はありますが、福岡県は県北部、県南部地区にあるのみで、県中央部地区には加盟店がありません。

 ―たしかに福岡地区ではあまり馴染みがない印象ですが、具体的にどのようなものなのでしょうか。

 園村 入居者第一主義が基本的な考え方です。それがオーナーさんのメリットにも繋がりますから。入居率は98%以上を維持しており、オーナーさんの評判も良いようです。商品の特徴としては、いろいろなバリエーションがありますが、オリジナルタイプはローコストとハイグレードのバランスが取れた良いマンションです。規模的にはファミリー向けの12戸ほどが一般的ですが、木造やプレハブではなく、鉄筋コンクリート(RC)造であることが最大の特徴でしょう。法定耐用年数を構造別に比較しても、木造住宅アパートが22年、プレハブ住宅アパートが27年であるのに対し、ユーミーマンションは47年です。これはオーナーさんから見れば、建替回数が少なくてすむという大きなメリットになります。

 ―すでにかなりの実績を残しているようですね。

 園村 JAグループ(JA・経済連・県本部・全農)では、組合員の土地活用・資産管理を支援するために、良質な賃貸住宅の建設を推進する農住事業に取り組んでいますが、ユーミーマンションはこうした農住事業にも貢献しています。93年にユーミーマンションのFC本部がJA全農住宅部と基本契約を締結していますので、鉄筋コンクリート造の賃貸住宅として、全国初、唯一の全農取引業者となっています。

FC加入のメリット

 ―ユーミーマンションのFCに加盟すると、どのような仕事の流れになるのでしょう。

 園村 FCに加盟するのですから、当然、入会金や固定のロイヤリティー、販売促進費などが必要になります。工事に関しては、弊社がオーナーさんから直接請けるかたちで、材料に関しては、自社で調達してもFC本部から調達しても良いとなっています。ただ、スケールメリットがあるため、FC本部から調達するほうが安いのではないでしょうか。

 ―FCに加盟することで、御社にはどのようなメリットが生まれますか。

 園村 お客さんにとってメリットのある営業の幅が広がるということがあります。もちろん、自社で賃貸マンションを受注してきた実績はありますが、スケールメリットを考えた場合、FCに加盟したほうが低価格で良い商品を提供できると判断しました。入居面に関するサポートでも、単独では難しい面がありますが、FCにサポートするシステムがあるため、オーナーさんは安心することができます。また、弊社は現在、木造ではなく鉄筋コンクリート造と鉄骨造に軸足を置いていますので、その面でもお互いのニーズが合致しました。

民間の比重はさらに重く

 ―御社はもともと公共工事の比重が少なく、民間工事主体だと思いますが、さらに民間工事の比重が高まっていくということでしょうね。

 園村 ゼネコンは公共工事に頼る時代ではなくなったと考えています。そうした考えから土木工事の分野においても、公共工事中心のスタッフを今後どう活かしていくかと模索しているところです。弊社は建築の比重が高い会社ですが、今後、少しずつでも民間土木に入っていきたいと思っています。

 ―やはり建築基準法改正の影響なども大きいでしょう。

 園村 現場に混乱が生じたことは間違いないでしょう。昨年の6月に改正建築基準法が施行され、実質的に現場がストップするような事態に陥りました。その後も、サブプライムローンの問題や資材価格の高騰などがあったため、建設業界そのものが厳しい逆風に晒されています。ただ、弊社が公共工事に頼らない方針を打ち出したのは、そうした問題が出てきたからというわけではありません。弊社では以前から、民間工事受注へのシフトを進めるとともに、従来の建設事業とは異なる分野を模索してきました。

 ―具体的にはどのような事業分野を進められてきたのですか。

 園村 グループ会社のサンコーケアライフでは、グループホームの運営など介護事業に取り組んできました。現在では6つの有料老人ホームの運営を手掛けています。介護事業は、それまでに手掛けてきた病院や福祉関連施設の建築が活かされていると考えていますし、順調に進めることができています。

 ―介護事業の分野は今後も拡大していく市場だと思います。

 園村 現在、計画中のものもありますし、運営ノウハウの蓄積も進んでいるため、今後さらに伸ばしていきたいと考えています。同時に、有料老人ホームの運営だけでなく、それに付随するような事業も現在検討しているところです。

 ―公共工事に頼らなくても十分やっていけそうですね。

 園村 そうならなければならないと思っています。

 ―今後のご活躍を期待しています。ありがとうございました。

 園村 ありがとうございました。


行政に頼る時代ではなくなった

 サンコービルドは、もともと公共工事に対する依存度の低い企業だが、公共工事への依存度が高い企業にとっては、現在の建設業界の置かれた環境はあまりに厳しい。その要因の一つとして、昨年6月に施行された改正建築基準法の影響があることは周知の通りだ。

 2007年度の建設投資は、対前年度比で▲5.5%の49兆4,300億円となる見通しである。当初予測では52.3兆円と、10年ぶりに増加した前年度に続いて増加となる予測だったが、改正建築基準法施行の影響が出たことで50兆円を割り込む結果となった。政府建設投資、いわゆる公共投資は9年連続のマイナスとなる▲3.7%、改正建築基準法の影響をもっとも受けた民間住宅投資が▲12.6%、民間非住宅建設投資は民間土木投資がプラス4.2%となったことでプラス1.6%となる見通しである。

 2008年度の建設投資は対前年度比2.3%増の50兆5,700億円が予想されている。民間住宅投資は前年度に落ち込んだ住宅建設が回復する見通しであり、改正建築基準法施行によりずれ込んだ分もあるため、プラス9.4%の大きな伸びが予想されている。民間非住宅建設投資は民間土木が3.1%の増加となり、全体ではプラス2.2%の伸びの予想だ。ただし政府建設投資は引き続き前年度比マイナスの▲4.3%の見通しとなっており、依然として公共工事の縮小には歯止めが掛かっていない。

 公共工事が縮小していく中で、改正建築基準法は建設業界に大きなダメージを与えた。施行後は建設現場を混乱に陥れ、建設業者のみならず、設計会社、デベロッパー、サブコン、材料業者などの建設関連企業は、進まない計画のために業績の低下を余儀なくされ、倒産の憂き目に遭う企業も出た。これらは今後、消費者の不利益となって個人に対して跳ね返ってくることになる。

 建設投資は、バブル経済崩壊直後の1992年にピークを迎え84兆円を記録した。その後も、バブル経済崩壊後の景気回復策として公共工事が発注されたことで、96年までは80兆円程度の水準を維持してきたが、その後は右肩下がりとなり、ついに2007年度に50兆円を割り込んだ。景気対策の公共工事発注には賛否両論あるものの、少なくとも建設業界には恩恵を与えるものだった。だが、改正建築基準法は建設業界の足を引っ張る以外の何者でもなく、ひいては日本経済の足を引っ張る格好になっている。

 構造計算書偽装問題が起きたことで、行政として何らかの手立てを講じなければならなかったことは理解できる。だが、その手法はあまりにもお粗末であり稚拙なものだ。許認可業種でもあり、行政主導で方針が作られてきた建設業界だが、もはや行政に頼ることはできない時代になった。自力で生き残っていく術を身につけなければ、その企業に未来はない。サンコービルドの新事業への取り組みは、民間工事での生き残りを模索していくという意思表示であり、行政に対する決別宣言とも言えるのではないか。


大木町官製談合加担の6社は冤罪?

 筑後川水域の肥沃な土壌の恩恵を受け、のどかな田園風景が広がる福岡県三潴郡大木町。第一次産業を主体とし、約1万4,500人の人口を有する福岡県南西部の町である。この町で福岡県建設業界を揺るがす官製談合が発覚したのは、2007年10月12日。福岡県警捜査2課と大川署は大和建設(株)の代表と(株)大藪組の入札担当者を競売入札妨害の疑いで逮捕した。

 この2社は大木町の24カ月間の指名停止を始め、各自治体において長期間の指名停止を受けることになった。また、この指名入札で談合に加担したとして、福岡県の名だたる建設業者6社(梅林建設(株)、(株)松本組、(株)サンコービルド、(株)高松組、(株)栗木工務店、松山建設(株))が各地方自治体から指名停止処分を受けた。なぜ、福岡都市圏から遠く離れた大木町でこれらの企業が指名されたのか。

 これにはまず、同町の元議会議長が工事発注者という立場を利用し、一緒に談合を行なう地元建設業者を探していたことが背景にある。その後、大和建設(株)が名乗りを上げ、それに(株)大藪組が乗ったとされる。そして、事もあろうに、彼らは指名業者選定で知名度もあり、同町の入札参加業者として登録されていた6社をピックアップし、指名業者に選定した。この後、大木中学校改修工事入札の指名が行なわれたのち、大和建設の担当者が6社に対して「地場で落札したいのでよろしくお願いします」と電話で連絡したと聞かれ、各社の担当者は不審と思いつつも承諾したようだ。
 結果的に、6社は官製談合の目論見のなかで勝手に指名業者に選定され、慣習に縛られ落札することもできず、そのうえ各地方自治体からの長期指名停止を受けるなど、割に合わない制裁を受けてしまった。

 また、今回逮捕された元議会議長については、20年以上前から町内外の業者との癒着があったという噂が絶えず、入札の指名業者に意中の業者を入れるように、町幹部に働きかけていたという話もあり、長年にわたって官製談合が行なわれてきたことが次第に明らかになった。

 今回の官製談合は、古い慣習の盲点を突いた悪質な事件であり、参加させられた6社はワキが甘かったとはいえ、被害者とも言えるだろう。


談合事件による大きな余波 大和建設(株)

創業100年の歴史を持つ老舗ゼネコンの大和建設(株)。昨年10月、前社長が大木町議長に賄賂を渡した罪で、贈賄・談合罪により逮捕された。その事件は、各方面を巻き込んでの事態となった。

久留米地区トップクラスのゼネコン

 大和建設(株)は、1898年8月に創業、1956年8月に設立された久留米地区を代表するゼネコン。水処理プラント土木工事を得意とし、久留米大水害で決壊した宮の陣橋、小森野橋の復旧工事をはじめ、久留米市の新庁舎、久留米市立図書館、久留米大学、福岡県青少年科学館など、久留米を代表する物件を手掛けてきた。
 前社長の渡邊一生氏は95年4月に同社代表取締役に就任、同社をけん引してきたが、2007年10月に起きた大木町の談合事件で逮捕され、事態は一変した。

談合事件による飛び火

 福岡県警捜査2課は07年10月、大木町が発注した中学校の大規模改修工事の入札を巡り、同社の渡邊前社長ら7名を逮捕。渡辺前社長が、前大木町町議会議長の内田清喜被告(あっせん収賄罪で起訴)より工事の設計金額を聞き出し、情報をもらった見返りに1,100万円を渡したことによる談合罪に問われた。

 この事件により同社は、大木町より2年間、久留米市より10カ月間の指名停止を受けた。また、所轄の九州地方整備局より6カ月、そして渡邊前社長の刑が確定後に福岡県より15カ月間の指名停止を受けるなど、厳しい処分を受けた。

 現在は、専務取締役だった渡邊次郎氏が社長に昇格、再建に向けて動き出した。しかし、この談合事件で福岡市内のゼネコン4社と大分市内のゼネコン1社が、同局より4月15日から30〜60日の営業停止処分を受けた。これら各社は、元々入札する意志はなく、慣例的とは言え、乗せられたかたち。つまり、同社と大藪組が落札するための当て馬にされた格好となり、6社のゼネコンに火の粉が降りかかったのである。同社のイメージダウンは計り知れない。

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官製談合に関与 (株)大藪組

昨年10月に発覚した大木町官製談合事件に関与したとして大木町を始め各地方自治体で指名停止となった(株)大藪組。談合に係った汚名は払拭できるのか。

筑後地区を中心に総合建設業を手掛ける

 (株)大藪組は1945年12月に設立された土木・建築業者。創業は1890年(明治23年)、筑後地区での長い業歴を持つ。現在では土木・建築業に加え、とび・土工、管、舗装、内装仕上、造園、不動産業と、事業展開は多岐にわたり、地場では名を知られた業者である。また八女、久留米地区にも営業所を開設し、さらには熊本市、八女市にも関連会社を立ち上げている。
 事業の柱のひとつである建築は、公共施設から集合住宅、店舗、病院福祉施設まで幅広く手掛けており、全体の売上高の半分以上を占め、受注意欲も旺盛である。

大木町官製談合に加担、営業本部長が逮捕される

 同社の2007年5月期の売上高は44億8,317万円を計上、過去最高の業績を残した。収益面では経常損益段階で1億396万円を計上し、高い利益率を誇る。また、現金預金も12億円超、月商換算で3.2カ月分を確保。有利子負債は無く、長らく無借金経営を続け、自己資本比率は55.7%と高い水準で、固い経営基盤である。

 同社は公共工事中心の受注体系、07年6月期の売上高における公共工事の割合は23億9,865万円で、全体の約55%を占めている。だが、その公共工事で、官製談合事件が発覚。同社営業本部長が談合に加担して逮捕されるという事態となった。同社は昨年10月から地元の筑後市で12カ月間、福岡県で今年1月から15カ月間、大木町で24カ月間と、いずれも長期間の指名停止を受けることになった。

 固い経営基盤を持つだけに、今回の事件が屋台骨を揺るがす事態にはならないだろうが、営業本部長の逮捕や指名停止措置を含めて、今後の経営に影響するのは必至。地場有数の業者ゆえに、コンプライアンスの見直しが求められる。


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2011年6月24日 07:00
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