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特別取材

マカオ、一大リゾート国へ 将来ビジョンに曇りあり
特別取材
2008年5月20日 10:32

多くのメディアがすでに報じているように、今マカオは建設ラッシュである。世界中の資本が入り込み、一大リゾート国が出来上がろうとしている。現在建設中のホテルはどれも5つ星以上のランクで、ホテル内にカジノ、ショッピングモール、スパなどの施設を持つ総合リゾートホテルが計画されている。2010年までには世界屈指のホテルが建ち並び、財政的に一層潤うことが予想されるが、将来を不安視する向きもある。

高級ホテルの建設ラッシュ

 2006年5月、ヴェネチアンマカオ・リゾートホテルの開発チームから、07年4月に5つ星ホテルをオープンするという話を聞き、初めてマカオへ視察に行った。
 果てしなく広がるコタイ地区埋立地。海の向こうには中国本土の長閑な田園風景が広がり、民家の陰すらもない。そこに建つのが「3ベットルームのスイーツが3,000客室のホテル」というだけでも驚くが、両隣にはフォーシーズンズ・ホテルと6,000人を収容できるビジネス・コンベンションセンター擁し、3つの建物の3階部分をつなげて行き来できるようにするという。その大きすぎる企画と長閑な風景のギャップはあまりにも大きく、本当に1年後、そうした巨大ホテルが建つのか半信半疑だった。結局オープンは当初の4月から8月28日に延びてしまったものの、ヴェネチアンマカオ・リゾートホテルはたしかに完成。その大きさは圧巻である。
 マカオの開発関係者たちがこの巨大ホテルの建設プロセスから学んだことは多く、これ以上大きいホテルの建設予定は無いにしても、以後、ホテルのオープンまでには1年半はかかると踏んでオープン準備をするようになった。現在、テナントの陣取り合戦が進行しているのは、ヴェネチアンマカオ・リゾートホテルの向かいに建設中のシャングリラ・ホテル。09年8月オープン予定である。9階建てのこのホテルは、アメリカとアジアの新鋭デザイナーと建築家のチームによって設計され、平均16坪の客室を600室、ビジネスサービスセンター、スパ、ヘルスクラブ、屋外プールのほか、169坪のボールルームも配置。1階にはカジノを置き、2階と3階はショッピングモールになる。このほかにも2010年までには、シェラトンマカオ・ホテル、セイントレジス・ホテル、セイントレジス・バケーションスイーツ、トレーダーズ・ホテルと、世界の名だたるホテルが軒を連ねる予定である。

マカオに勝算あり

 世界中の投資家たちがマカオをリゾート国にしようと目をつけた理由は、アジアのめざましい経済発展だ。マカオを中心に飛行機で5時間以内の地域に、13億人もの人が住んでいる。アジアの富裕層を狙った観光ビジネスにはうってつけの地の利である。とくに近年の中国の発展は、投資家ならずとも周知のとおりで、マカオの仕掛け人たちは、2015年には世界の高級品の29%が中国人によって買われると予測。この一大リゾート国が完成する2010年には、年間30億人以上の海外からの旅行者を見込んでおり、そのうち57.2%を中国本土からの観光客、香港から30.3%、台湾から7.7%とみている。
 特筆すべきは、これまでのマカオ=田舎賭博といったイメージを払拭すべく、超豪華ホテルに付随してビジネス・コンベンションセンターやコンサート会場、スポーツアリーナ、ゴルフ場などの建設にも抜かりないこと。そのすべてが、グローバルな視点とレベルで企画されている。完成前から、コンベンションセンターの向こう3年間のイベント・スケジュールは埋まっており、スポーツアリーナではアメリカNBAのプレマッチが決定している。家族、恋人同士でマカオに訪れ、ビジネスのついでにバケーションも楽しめると言うわけだ。
 このプロジェクトが世界的に公になったとき、ラスベガス・サンド・コープの最高業務責任者(COO)ウイリアム・ウェイドナー氏は「マカオはラスベガスの10倍動員できる可能性を持っている」と発言。そして、07年8月にヴェネチアンマカオ・リゾートホテルがオープンし、その年の暮れには、すでにマカオの総カジノ収入はラスベガスを超えていた。

国富みて、民滅ぶ

 国をあげての巨大プロジェクトには、当然のことながら労働力が必要。しかし人が足りない。マカオ人はどこに行っても引っ張りだこだ。カジノのディーラーなどは平均で月に200,000円もらっている。なかには、腕が良いということで、18歳で月給300,000円という子もいた。マカオの一般的な初任給が大体120,000〜130,000円なので、かなり高い。現在、カジノを含むサービス業の従事者が全体の24%を占めるのもうなずける。4人に1人ということだ。ちなみに、建築業(13.4%)、販売業(12.7%)、飲食業(11.7%)と続く。
 スペシャリストと呼べるレベルではないマカオ人でも、いわゆる「常識的な給料」で雇うのは至難の業だ。マカオの失業率は3%を切っている。言い換えれば、健康で働く意志のあるマカオ人は皆仕事に就けているということだ。フィリピン人や中国人、インドネシア人の求職者はたくさんいる。しかし、就労ビザの申請が必要なうえ、マカオ政府から各法人に出される国籍ごとの雇用人数枠があり、勝手に好きな国籍の労働者を好きなだけ雇用すると言うわけにはいかない。しかも、その人数枠は、法人がどれだけ多くのマカオ人を採用したかで決まる。だから、外国人をより多く採用するためにも、マカオ人を優先的に面接し、多少のことは目をつむってでも採用する方向で考えなければならない。勉強せずに専門学校でディーラーのテクニックを身につける若いマカオ人がいる一方、彼らの2割安、3割安でも良いから雇って欲しいと乞う大卒の外国人求職者たちもいる。山積みされた履歴書から若干名の人材を選ぶときには、胸が痛い。
 賭博税収のおかげで国の財政は潤い、マカオ人が政府へ支払う国民年金積み立ても微々たるもの。それすらも雇用主が負担してくれる。しかし、勉強も競争もせず暮らせてしまう国民が果たして“豊か”と言えるのだろうか。「国豊みて、民滅ぶ」と、この国の行く末を案じる見識者も多い。

資料提供: Las Vegas Sands Corp.

 

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