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ミニラボのノーリツ鋼機  社長人事をめぐり創業家と対立(下) | 東京レポート
特別取材
2008年5月27日 10:37

デジタル化の波

 西本貫一氏は05年8月に90歳で他界した。亡くなるまで社長を務め、代表権を1人で持ち続けた。上場企業のなかで、90歳は最年長社長、社長歴49年は社長在任の最長記録。入院中も、稟議書に目を通して、陣頭指揮を執っていたという。

 会社と一体化した生き方には創業者の執念を感じさせるが、生涯現役を貫いたことが今回の事態を招いた原因と指摘されている。信じがたい話だか、死んだ後に、会社と遺族をどうするかについて、考えていなかったのではないかというのである。

 創業者が亡くなり、佐谷勉副社長が後任社長に昇格した。佐谷氏は西本氏の遠戚だ。新経営陣が手がけたのは、西本路線の軌道修正であった。写真はデジカメ(デジタルカメラ)時代へと大きく転換し、従来のミニラボ市場が縮小したためだ。

 デジカメで撮った写真は、パソコンでプリントできるようになった。いまではパソコンなしでもプリンタでプリントできるので、DPE店に持ち込まない。ミニラボのユーザーであるDPE店が姿を消していった。03年3月期に786億円あった売上高は、年々減少し、07年同期には588億円にまで落ち込んだ。

 デジカメへの早急な対応を迫られた。西本氏時代にはタブーだった人員整理に踏み切った。800人の希望退職を募り、グループ全体で3,100人いた従業員を4分の1に減らした。

 さらにデジタルミニラボで富士フイルムやセイコーエプソンとの提携を打ち出した。国内でDPE市場が急速に縮小していくことに対する生き残り策であった。

 同社の国内売上は08年3月期に89億円まで激減した。ミニラボ市場の伸びが期待できるロシアや東欧の営業を強化している同社の提携戦略は、落ち込み続ける国内でのデジカメのプリント需要に対応する狙いがあった。

 しかし、これに創業家が激怒した。ノーリツ鋼機はDPE店向け、両社は写真館向けという違いはあったがミニラボでは同業者。かつてのライバル企業と手を組む戦略に創業家側は不満を募らせていた。提携戦略を中心となって進めてきたのが喜田副社長だった。その喜田氏が新社長候補になり、創業家の怒りが爆発したのである。

創業者が心すべきこと

 創業家を代表するのが土屋佳代氏。西本貫一氏の長女で、西本家の資産管理会社、西本興産の社長だ。西本興産はノーリツ鋼機の議決権の42.17%を所有している筆頭株主。土屋佳代氏個人は4.98%の2位の株主。西本氏の美代子未亡人の持ち株比率は1.65%。創業家で48.8%の株式を保有している。社長人事案を否決できる可能性は高い。

 創業家側が、投資ファンドと組んでMBO(経営陣が参加する買収)を行うのではとの観測が流れるなか、経営者側は総会までぎりぎりの説得工作を続けることになる。決着するまで、まだまだひと波乱がありそうだ。

 今回の騒動の原因は、西本貫一氏が永くやりすぎたことに尽きる。生きているうちに、きちんと会社の後継者を決めてバトンタッチしておかねばならなかった。親族との関係では、西本家に後継者となる息子がいないわけだから、創業家の持ち株比率を落としとかねばならなかった。創業家が経営に口を挟むことを防ぐためだ。この2つがスッポリ抜け落ちていたことが、混乱を招いた。

 ノーリツ鋼機のお家騒動から、創業者は心すべき教訓を汲み取ることができる。

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