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五輪用水着で敗退したミズノ スピードとの契約解除が裏目に(下) | 東京レポート
特別取材
2008年7月 3日 14:00

MIZUNOブランドの投入

 要因は2つ考えられる。1つは、05年3月期の決算で、ライバルのアシックスに国内スポーツ用品メーカー首位の座を奪われたことだ。05年3月期の連結売上高は、ミズノが1,436億円、アシックスは1,466億円。僅差ながらアシックスが上回ったのだ。
 その3年後の08年3月の連結決算は、ミズノが売上高1,760億円、経常利益74億円に対し、アシックスは売上高2,261億円、経常利益211億円。ウォーキングシューズが好調なアシックスに大きく水をあけられている。
 創業者の孫にあたる水野正人会長(65)、水野明人社長(58)の兄弟は、自分たちの代に2位へ転落したことに焦った。首位奪回が大きな経営課題となってのしかかった。問題は、何を核にして首位を奪い返すかだ。

 ミズノの原点は野球である。創業者の水野利八氏は、高校野球の生みの親として知られる。1913(大正2)年、新しい市場を開拓するために美津濃商会(ミズノの前身)主催の関西学生野球大会を開いた。その2年後、朝日新聞社から開催権を譲ることを求められ、「新聞社が主催してくれれば野球のためになる」と受諾。その大会が、今日まで続く夏の甲子園である。利八氏は、野球用品業者として唯一、野球殿堂入りを果たしている。今日でもミズノは野球用品の代名詞だ。プロ野球球団のユニフォームを手がけ、福岡ソフトバンクホークスのユニフォームはミズノ製。イチロー、松井秀喜などの一流選手と契約を結ぶなど、こと野球用品では他社の追随を許さない。
 アシックスから首位の座を奪回するには、MIZUNOブランドを世界に広めなければならないが、海外では強くない。最も得意とする野球用品でも、米大リーグではミズノの影は薄い。しかも、野球は北京五輪を最後に打ち切られるなど、グローバルなスポーツではない。ブランドを広めるには、世界的スポーツであるサッカー、陸上、競泳の用品で勝負しなければならないのである。

 水野正人氏が、MIZUNOブランドを海外に広める切り札にしたのが競泳用水着だった。13年まで続くはずのスピード社とのライセンス契約を打ち切ることに、社内では反対論が強かったが、正人氏は「MIZUNOブランドを世界に広めるには競泳用水着が欠かせない」と押し切ったという。スピード社のライセンスが国内と中国、台湾に限られているため、ライセンスを解消して、世界市場での勝負に賭けたのだ。
 契約を打ち切ったもう1つの原因は、北京五輪である。大金と権利が発生するのが五輪というスポーツビジネスであることは論を俟たない。スポーツ用品メーカーにとって、五輪は最大のビジネスチャンス。ウェアなどを着用した選手のメダルが何よりの宣伝広告になる。スポーツ用品メーカーが、有力選手と個人契約を結び取り込むのは、そのためだ。
 ミズノはスピード社のライセンス販売を通じ、日本水泳連盟との関係を深めてきた。MIZUNOブランドの初デビューとなった昨年の世界競泳では、ほとんどの日本選手がミズノの水着を着用してもらうことに成功した。その勢いで、ミズノが海外戦略の命運を託す競泳・市販水着の売上高の目標を、北京五輪後に100億円に置いた。北京五輪で個人契約を結んでいる北島康介選手らのメダルを何よりの宣伝広告として、高めの目標を設定したのである。

シナリオが崩れた

 ところが、北京五輪の皮算用は外れた。ミズノ会長の水野正人氏は、07年4月に日本オリンピック委員会(JOC)の副会長に就いた。北京五輪に賭ける意気込みが伝わってくる。
しかし、正人氏は副会長として問題発言をする。今年4月、北京で中国の新聞社から、中国製ギョーザの中毒事件について取材を受けたとき、「日本国民は少し心配しているに過ぎない」と述べた。この中国に媚びる発言に抗議が殺到。慌てて釈明、陳謝したが、週刊誌からは「アホ副会長」と揶揄された。そこにスピード社のLRが解禁になり、多額の開発費を投じたミズノ製水着は、北京五輪という格好の宣伝の舞台に上がれなくなったのだ。

 棚からボタ餅がゴールドウィン。ミズノが、スピード社との40年間の関係を解消した後に、スピード社との販売ライセンス契約を結んだからだ。早くも市販水着の引き合いが殺到して、喜びを隠し切れないという。対して、敗れたミズノでは、周囲の慎重論を抑えて、スピード社との契約解消を押し切った水野正人会長に対する不信がくすぶる。40年の信頼関係を反故にして、ライセンス契約を打ち切り、自社ブランドを投入した決断が裏目に出た。今後、ミズノの経営に大きな影を落とすことになる。

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