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遅すぎた分散受注 露呈した経営体制の甘さ (株)浅野工務店 (下) | 倒産を追う
特別取材
2008年8月25日 08:20

銀行に手のひらを返される

 近年の原油価格高騰や、改正建築基準法の影響で、さらなる耐震強度をもつ建築物の必要性が増し、原価が急速に上昇。それに加え、米国から端を発したサブプライムローン問題も絡み、好調だった賃貸ビル、賃貸マンションの建築工事件数も減少傾向となった。

 軟弱な財務内容であった同社に対して、これらの影響がじわじわと出始め、さらに資金繰りが厳しくなったとされている。運転資金を含めた借入金は1億円以上に増加。毎月、約130万円近い借入金を返済していたと聞かれる。

 裁判所に提出された申請書類には、次のように記載されている(裁判資料による。原文のまま)。
1.ところで、申立人は、平成20年2月に、ディックスクロキを施主とし、申立人と福岡市の株式会社吉川工務店が、ジョイントベンチャーを組み、大分駅前のビジネスモデルの建築工事をディックスクロキからの請負い、請負工事が進行中であった。ところが、この大分市のホテル建築工事は、ディックスクロキの意向で停止し、現在も停止したままになっている。
2.申立人は、本年7月25日が合計約5000万円の手形の支払期日となっている。申立人は、本年7月の初旬に、上記大分の現場の工事請負契約書を福岡銀行に示し、手形決済資金4000万円の融資を受けることが決まっていた。要するに、ディックスクロキの工事による請負代金支払が確実に予定されていることを踏まえて、福岡銀行からの手形決済資金の融資を受け、7月25日に決済する予定であった。
3.上述のように、大分駅前のホテル建築工事が、工事停止となり、申立人の資金繰りにも狂いが生じた。そうすると福岡銀行は7月11日、手のひらを返すように、突然、ディックスクロキの依存度が高い業者には融資はできない、と態度を翻し、上述の融資はできないことになった。

 以上の通りである。また、メイン行である西日本シティ銀行にも、すでに多額の借入金があることから、7月25日分の手形決済金の追加融資は厳しく、資金繰りのメドはまったく立たなくなった。そして、手形決済日となる7月25日に2億7,618万円の負債を抱え倒産したのである。

分散受注を図るも時すでに遅し

 D社を含めた周囲の関係者は、同社の経営状態を知ったうえで、受注先の分散を図り支援や経営の立て直しを促していたと聞かれる。そうしたこともあり、近年はやや販路を拡大しつつあったようだ。

 破綻時は仕掛かり工事として、学習塾建設工事、個人からの受注、関係の深い業者からの受注の3件があった。裁判書類によると、学習塾建設工事は11月末には開校を控えているとされており、今回の法的手続きも早急な対応が必要だったとされている。

 たしかに、多方面からの受注は徐々に増えていたようである。しかし、「仲介業者から詐欺にあって経営に支障をきたしたのでは」との噂もあがっていた。上述した3件のほか、売掛金として那珂川町の有料老人ホームを運営する業者からの売掛金が約1,750万円残っていたため、その旨を先方に伝えたところ、「金額は不明だが、たしかに売掛金として残っているようです。仲介業者ですか?浅野社長とは長い付き合いなので仲介業者の話は聞いたこともありません」と否定された。

 このようにさまざまな話が飛び交うものの、何とか1社に頼らない分散受注をしようとしていたのは窺える。しかし、時すでに遅し。今後の市況を見据え、D社を含めた関係者の意見を聞いて早急に分散受注を行なっていれば、結果は多少変わっていたかもしれない。しかし、それも間に合わず、最終的には破綻となった。遅すぎた分散受注が悔やまれる。

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