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国滅びて霞ヶ関あり 不況の引き金引いた官僚派閥(下)
特別取材
2008年8月26日 14:00

「官製不況」を呼び込んだ国交省の東大都市工学科派閥

 現在の建設・不動産不況のきっかけとなった耐震偽装事件の処理と、その後の建築基準法改正の背景には、これまで指摘されていない学閥問題がある。

 「技官王国」と呼ばれる国土交通省は、中央官庁のなかで唯一、技術官僚がトップの事務次官まで出世できる役所である(事務系と交互に就任)。その主流は、ダムや橋梁など大規模公共事業が専門の東京大学土木工学科(現・社会基盤学科)出身者であり、土木系技官が次官まで行けるのに対し、東大建築科出身者の最終ポストは役所の建替えを担当する本省の「官庁営繕部長」止まりとされてきた。

 その間隙を縫って、技官の学閥争いに台頭してきたのが、東大建築科から分離した「都市工学科」出身者だ。建物の設計ではなく、都市計画を専門に学ぶ学科で、第1期生には旧建設省住宅建設課長から政界に転出して小泉内閣の官房副長官を務めた上野公成・元参院議員がいる。群馬出身の上野氏は、落選中の今も国土交通省住宅局に絶大な力を持ち、福田首相が掲げる「200年住宅構想」のブレーンといわれる。

 この東大都市工学科出身者が国土交通省の住宅政策の中枢を担い、「住宅局長」まで出世するようになった。耐震偽装事件の温床になったとされる民間建築確認・検査機関の設立(民間解放)という規制緩和策や住宅品質確保法は、上野氏を頂点とする都市工学科出身官僚が推進したもので、「いずれも民間検査機関やプレハブメーカーへの技官の天下り先拡大という裏の狙いがあった」(同省事務官)と見られている。

 耐震偽装事件の後、国土交通省住宅局はそれまでの規制緩和から一転、建築基準法を改正して「構造計算書の二重チェック」などの現在の検査能力を無視した厳しい規制強化を打ち出し、施行体勢が間に合わずに住宅着工件数の激減による“官製不況”の引き金を引いた。しかし、それでも上野氏の腹心で建築確認機関の民間解放当時の担当者(住宅生産課長)だった和泉洋人氏が住宅局長に就任するなど、都市工学科閥は順調な出世を遂げている。

実務を知らない住宅局長 悪影響予見できず

 和泉局長は昨年8月、“対策は万全”だと、胸を張っていた。
 「お陰様で建築基準法の改正を行ない、一定規模以上の建築物には二重にチェックすることといたしました。また、構造は一番大事ですから、確認検査機関への監査もより厳しくし、罰則も大幅に強化することが決まりました。建築士法の改正をし、構造設計一級建築士や設備設計一級建築士制度を新設し、同じような大きな建物には、このような専門的な建築士が構造をチェックする体制を整え、建築士の継続教育についても導入しました。これらの法律・制度の創設により、偽装問題への制度的対応は完了しました」。
 規制強化が景気にどんな悪影響を生むかをまったく予見できていなかったのだ。

 結果的に、課長時代に規制緩和で耐震偽装事件の遠因をつくった人物を、局長に据えてその対策(規制強化)に当たらせ、今度は建設不況を招いたのだから、この役所の責任は二重に重い。

 それだけではない。東大都市工学科のOBの1人がなぜ、住宅局が政策の失敗を続けるかについて興味深い指摘をする。
 「そもそも東大の都市工学科は、建築科と違って構造力学のカリキュラムが必修科目ではなかった。住宅局の都市工学科出身者は学生時代に構造を本格的に学んでいないから、建物の構造計算の実務がいかに大変か、体験的に分からない。もちろん、役所には構造のスペシャリストがいるから、彼らの意見を聞いて政策をつくっているはずなのだが、課長や局長が実務を知らないことで、規制を緩めればどんなモラルハザードが起きるか、逆に規制を強めれば新規着工にどれほど深刻な影響が出るか、想像できなかったのではないか」。

 今回の建設・不動産不況はまさに役所の机の上でつくられたのだ。

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