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自民党総裁選「麻生劇場」の裏側は派閥談合そのものだ | 政界インサイドレポート
特別取材
2008年9月16日 10:40

 5人の乱立となった自民党総裁選は大本命の麻生太郎氏が圧勝の勢いだ。ダークホースの小池百合子氏は小泉元首相の支持表明があっても風を呼べず、「小池劇場」は始まりそうにない。こんなドラマも意外性もない展開では、「福田―麻生の政権禅譲密約」の批判はかわせても、自民党が総選挙の逆風をはねのける効果は薄い。それでも、自民党内では早くも「10月解散」に向けてオールスター内閣づくりの人事の駆け引きが始まった。

 森―ナベツネの暗躍

 自民党総裁選ショーを演出したのはこの2人、森喜朗・元首相と渡邉恒雄・読売新聞グループ会長兼主筆と言っていい。
「今回はオレ1人になっても麻生をやるぞ。」
 森氏は表では「総裁選は賑やかにやればいい」と言いながら、腹心だった中川秀直・元幹事長が小池氏擁立に動くと、派内にそう決意を示して執拗な“小池―中川封じ込め”作戦を取った。党内の反麻生勢力が小池支持でまとまるのを防ぐためだった。
「党内には麻生嫌いが意外に多い。福田辞任表明後すぐに中川・小池連合がスパートをかけて改革派の若手と反麻生のベテランがそれに乗れば、森さんが手塩にかけてきた町村派とキングメーカーの座を中川氏に奪われるうえ、自民党を二分する戦いになり、たとえ麻生が勝っても総選挙前に党が分裂状態になる可能性が高い。それを恐れた森さんは中川・小池つぶしのために候補者乱立を仕掛ける一方、町村派の大勢を麻生支持でまとめた。」(森側近議員)
 最初から派閥維持のために麻生氏を勝たせる演出しか念頭になかったようなのだ。

 総裁選告示前、森氏は自ら野田聖子・消費者行政担当相に電話を入れ、出馬を促すという奇妙な行動を取った。それも、小池vs野田の“女の戦い”で盛り上げようというのではなく、古賀誠・自民党選対委員長ら麻生嫌いの勢力が野田擁立に走れば、反麻生勢力を分断できるという読みがあった。
 その野田氏が出馬を固辞すると、次に「反麻生」勢力の受け皿として与謝野馨・経済財政相が浮上する。
 この人物も不思議な候補である。反麻生のベテラン議員に一定の支持があるとはいえ、「消費税増税」を正面から掲げる与謝野氏が自民党で総選挙の「顔」となる次期総理・総裁に選ばれるとは考えにくい。むしろ、総裁選の消費税論争で「当面引き上げはしない」というアリバイをつくり、反麻生勢力を分散させるためのアテ馬候補としか思えない。
 その与謝野氏を口説いたのは読売の渡邉氏とされ、渡邉氏は森氏の盟友・青木幹雄・元参院議員会長に働きかけて参院津島派を与謝野氏の応援団につけた。津島派議員はこう語る。
「麻生氏と与謝野氏の関係はいい。もし、麻生氏が1回目の投票で過半数を取れない場合も、決戦投票では与謝野氏は麻生支持に回る。万が一にも小池に逆転させないための保険候補だよ。」

 その結果、森氏らのシナリオ通りに中川・小池連合は完全に封じ込まれ、町村派の大勢と伊吹派、二階派、さらに麻生嫌いと言われた古賀氏、山崎拓氏らまでが次々に麻生支持に回った。情勢が決した後では、小泉純一郎・元首相の“小池支持表明”も遅すぎた。
候補者乱立の劇場型総裁選の裏側では、森―青木―ナベツネといった政界・マスコミ界のフィクサーたちが糸を引いていることがわかる。
 これでは、政権を途中で投げ出した福田氏を担いだ8派連合が、その反省もなく麻生氏への「看板の架け替え」に走ったと言われても仕方がない。自民党内の権力構造は麻生政権ができても何も変わらない。

 「小泉・小池新党」は幻

 麻生陣営では早くも新内閣の人事が練られている。小池、与謝野、石原伸晃、石破茂の4候補を重要閣僚や党3役で処遇するという“オールスター内閣”構想だ。
 どうせ9月24日に新首相が決まればすぐに解散・総選挙だから、政策の違いなどおかまいなしに選挙応援用の人を呼べる“パンダ大臣”を並べようという発想だが、その裏では、派閥談合の人事の駆け引きもしっかり行なわれている。派閥領袖クラスではいち早く麻生支持を打ち出した伊吹派の伊吹文明・財務相の再任が有力視され、幹事長には町村派の町村信孝・官房長官の横滑り説が出ている。

 本来、途中退陣する福田政権の官房長官は幕引き役に徹するのが筋だが、異例なことに町村氏は記者会見で麻生支持を表明し、「主流派にいなければ干される」と自主投票のはずの派内に麻生選対本部まで立ち上げた。露骨な猟官運動だ。
「いまや最大派閥の町村派は中川・小池vs森・町村に完全に割れた。町村さんは何がなんでも党の要職に就くことで中川グループを完全に干し上げるつもりだ。」
 町村派の中堅議員はそう言うが、自民党が政権を失いかねないときに最大派閥が抗争に明け暮れているようでは先が見えている。ちょうど、宮沢内閣末期に竹下派が小沢一郎グループと反小沢グループに分裂して自民党が下野に追い込まれたのとそっくりな状況である。

 当レポートでは、中川氏が自民党を飛び出し、“第2の小沢”となって政界再編を仕掛ける可能性を早くから指摘してきたが、政界ではようやく総裁選後の「小泉・小池・中川」新党構想がクローズアップされている。
 派内抗争で追い詰められた中川氏が小池氏を連れて“暴発”するのではないかと見られているのだ。それが総裁選後の最大の波乱要因だ。
 勝利を確信した麻生陣営から、他の候補とともに小池氏の「重要閣僚」起用説が流れているのも、党分裂の事態を防ぐために閣内に封じ込めておこうという狙いがある。
 しかし、派内抗争で消耗した中川氏にはもはやその力はないように見える。総裁選で小池氏の得票は地方票を入れても全体の2割、100票にも届きそうにない。そのうえ、中川・小池陣営の議員たちの大半も、“敗軍の将”の中川氏に従って党を割る覚悟はなく、頼みの小泉氏も、功成り名を遂げた今や先頭に立って政界再編に打って出る気概を失っている。
「自民党が総選挙に敗れた時はまた情勢が変わる。それまでは臥薪嘗胆だ。」
 中川・小池陣営からはそんな声まで聞かれる。
 自民党はすでに分裂のエネルギーさえ失い、「麻生丸」と心中するしかない。

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